歴史館年代から見る

2005年-2010年

2005-2010

ハイビジョン化の時代

時代は、ハイビジョン化へ。そして、銀塩カメラのリプレイスから、デジタルカメラ独自の進化へ。2005年からの6年間は、200年の歴史をもつ銀塩カメラでは想像もできなかったことを、デジタルカメラが次々と成し遂げた時代であった。その中にあって、キヤノンはCMOSセンサーのアドバンテージで、常に業界をリードし続ける。

デジタル一眼レフカメラはフルサイズ時代へ

キヤノンのCMOSセンサー製造技術の成熟により衝撃的な低価格を実現した「EOS 5D」

2003年(平成15年)のハイビジョン(地上デジタル)放送開始によって、映像機器のハイビジョン化の流れは一気に加速。それに合わせて、カメラのセンサーにもより高度な性能が求められ、一般ユーザーの間でも35mmフルサイズデジタル一眼レフカメラへの要望が高まっていた。しかし当時、35mmフルサイズ一眼レフは、100万円を超える高嶺の花。その常識を打ち破り、2005年(平成17年)10月、「EOS 5D」が衝撃的なデビューを飾る。価格は、これまでより一桁下の30万円台。一般ユーザーにも手が届くレベルとなった。この画期的な低価格実現の裏には、キヤノンが培ってきたステッパー(縮小投影型露光装置)*1によるCMOSセンサー製造技術の成熟があった。そして、ここから、デジタル一眼レフカメラにおけるフルサイズ時代が幕を開け、やがて他社もCMOSセンサーに追随していくこととなる。

ライブビュー機能を備えたフラッグシップモデル「EOS-1D Mark III」

2007年(平成19年)。ユーザーの幅広い要望に応えて、”見るだけ”(ライブビュー)の動画機能を備えた2機種が登場する。5月にプロ用デジタル一眼レフカメラのフラッグシップモデルとして「EOS-1D Mark III」(APS-Hサイズ)が発売されたのに続き、 11月には約2,110万画素・35mmフルサイズCMOSセンサー搭載の「EOS-1Ds Mark III」がデビュー。動画撮影機能を備えたデジタル一眼レフカメラの登場を予感させるものとなる。

*1 ステッパー(縮小投影型露光装置):半導体製造装置の一種。1枚のシリコンウエハー上に数百の半導体チップを逐次移動(ステップ)しながら露光する。

世界初のフルHD動画撮影機能

デジタル一眼レフカメラとして世界で初めてフルHD動画撮影機能を搭載した「EOS 5D Mark II」は世界三大カメラ賞三冠を達成した

キヤノン独自の1,000万画素CMOSセンサーを搭載した「PowerShot SX1 IS」

そして迎えた2008年(平成20年)。キヤノンの一眼レフカメラが累積生産5,000万台を達成したこの年、デジタル一眼レフカメラの歴史に新たな1ページを刻む新製品が誕生する。11月、キヤノン独自の高速信号読み出し回路を搭載した35mmフルサイズCMOSセンサーが開発され、デジタル一眼レフカメラとして世界で初めてフルHD動画撮影機能を搭載した「EOS 5D Mark II」がデビュー。
その画期的な技術は高く評価され、「TIPA ベストエキスパートデジタル一眼レフカメラ2009」「カメラグランプリ2009大賞」「EISA ヨーロピアン・アドバンスト・カメラ2009-2010」受賞と、世界三大カメラ賞三冠達成の栄誉に輝く。

さらに、動画と静止画の融合による新しい映像表現を可能にするカメラとして、放送局も着目。2009年(平成21年)10月にスタートしたテレビ朝日の番組「世界の街道をゆく」に採用された。また、同年9月には、コンパクトデジタルカメラ用に開発したキヤノン独自の1,000万画素CMOSセンサー搭載の「PowerShot SX1 IS」も登場している。

世界初(APS-Cサイズにおいて)となる約1,800万画素のCMOSセンサー

画素サイズを極小化しながら高感度・低ノイズを実現し注目を浴びた「EOS 7D」

APS-Hサイズで世界最高※の約1億2,000万画素CMOSセンサー

※2010年8月20日時点で

キヤノンの一眼レフカメラ発売50周年となる2009年(平成21年)。その年10月に、キヤノンのエリアセンサー技術を結集した新モデルが登場する。アドバンストアマチュアをメインターゲットに、画素サイズを4.3×4.3μmまで極小化しながら、高感度・低ノイズを実現した「EOS 7D」である。
世界初となる約1,800万画素のCMOSセンサー(APS-Cサイズ)を搭載し、高性能映像エンジンを2個装備したデュアル DIGIC 4も採用。さらに、常用ISO感度100~6400、拡張設定12800を可能にした最先端のデジタル一眼レフカメラとして注目を集めた。

キヤノンのCMOSセンサーの進化は、とどまることを知らない。2010年(平成22年)8月には、APS-Hサイズで約1億2,000万画素(13,280×9,184画素)のCMOSセンサーを発表。
これは、単純に比較することはできないものの人間の眼の視細胞数と同程度であり、2010年8月20日時点で世界最高となるものである。



DIGIC 4

デジタルビデオカメラを進化させた「キヤノン HD CMOS」

一方、デジタルビデオカメラに目を転じると、ここでもやはりデジタルハイビジョン放送が製品進化の決定的な推進力となった。2003年(平成15年)9月、シャープ、ソニー、日本ビクター、キヤノンの4社によって、ハイビジョン用ビデオカメラ向けにHDV規格が策定され、2005年(平成17年)11月には、プロユースとして、ミニDVテープに高精細なハイビジョン映像をHDV規格で記録・再生することを可能にした「XL H1」が登場した。
そして迎えた2006年(平成18年)9月。アマチュア向けに満を持して投入されたのが、新開発の動画用CMOSセンサー「キヤノン HD CMOS」搭載、当時として世界最小・最軽量のデジタルハイビジョン撮影対応HDVビデオカメラ「iVIS HV10」である。デジタルハイビジョン放送の美しさをビデオカメラで実現するには、ハイビジョン対応の画素数をいかに速く読み出すかがポイント。従来のCCDの前に立ちはだかったこの壁を、キヤノンはデジタル一眼レフカメラで実績のあるCMOSセンサーでクリアしたのだ。

続いて2007年(平成19年)8月には、キヤノンとして初めて、記録媒体に40GBの内蔵ハードディスクを採用した「iVIS HG10」が登場。高精細なハイビジョン映像を最長15時間*2記録することを可能にした。また、2009年(平成21年)2月には、「キヤノン フルHD CMOS」「DIGIC DV III」を搭載した「iVIS HF S10」「iVIS HF20」もデビュー。デジタルビデオカメラの分野においても、デジタルハイビジョン化の流れの先頭を走り続けている。

*2 LPモード(約5Mbps)で撮影した場合。

高精細なデジタルハイビジョン撮影が可能なHDV規格対応のHDビデオカメラ「XL H1」

「キヤノン HD CMOS」を採用した世界最小・最軽量※のHDVビデオカメラ「iVIS HV10」

※ HDV規格対応のビデオカメラとして。2006年7月26日時点。

内蔵ハードディスク(HDD)にハイビジョン映像を長時間記録できるHDビデオカメラ「iVIS HG10」

CMOSセンサー、レンズ、映像エンジンのすべてに最新技術を投入することで、民生機で最高レベルの水平解像度を実現した「iVIS HF S10」

「キヤノン フルHD CMOS」や「DIGIC DV III」を搭載した「iVIS HF 20」

レンズ技術の革新

ところで、この時期、レンズ技術においても目覚ましい革新が行われていた。2008年(平成20年)4月にEFレンズの累積生産本数が4,000万本に達したのに続き、9月には、光の反射を抑制する特殊コーティングSWC (Subwavelength Structure Coating)を開発。従来のコーティングでは抑制できなかった、特に入射角が大きな光に対しても優れた反射防止効果を実現した。このSWCを採用した「TS-E17mm F4L」は、欧州の権威ある賞「TIPAベスト・フォトグラフィック・アンド・イメージング・プロダクツ2009」においてプロフェッショナルレンズの部門賞に輝いている。さらに、2009年(平成21年)10月には、「角度ブレ」と「シフトブレ」の2種類のブレを正確に検知し補正する「ハイブリッドIS」を初めて採用した「EF100mm F2.8L マクロ IS USM」が登場。手持ちで高精度な等倍撮影を可能にした。そして、2009年(平成21年)12月、EFレンズの累計生産本数は遂に5,000万本を記録した。

『角度ブレ』の概念図

『シフトブレ』の概念図

シフトぶれ、角度ぶれ両方に対応する「ハイブリッドIS」を搭載した「EF100mm F2.8L マクロ IS USM」

このほか、画像処理プロセッサー「DIGIC」も、この時期に大きく進化した。その最先端である「DIGIC 4」は、新たなノイズリダクションテクノロジーやシーンキャッチテクノロジーなどの新機能を搭載し、フェイスキャッチテクノロジー、モーションキャッチテクノロジーの性能向上などを実現。「IXY DIGITAL 510 IS」「PowerShot D10」などを皮切りに、現在もIXY DIGITALシリーズ、PowerShotシリーズ、EOSシリーズに共通して採用されている。

振り返ると、デジタルカメラの歴史はまだ20年足らず。その中にあって、キヤノンの2005年~2010年は、感度・画素数・動画機能などすべての面で飛躍的な進歩を遂げた時代であった。そして、そのキーテクノロジーとして、キヤノンが他社に先駆けて開発していたCMOSセンサーの存在があった。キヤノンは、このCMOSセンサーの優位性を活かしながら、その周辺テクノロジーにもさらに磨きをかけ、想像を超える新たなデジタルイメージングの世界を切り拓こうとしている。

高速処理と高画質を実現する映像エンジン「DIGIC 4」

4倍ズームレンズや1,210万画素CCD、アスペクト比16:9のワイド画面に対応する2.8型「クリアライブ液晶II」モニターを搭載した「IXY DIGITAL 510 IS」

優れた防水性・防塵性・耐寒性・耐衝撃性を備え、雪山や海辺などのアウトドアレジャーに最適な「PowerShot D10」