野鳥写真図鑑

キビタキ

スズメ目ヒタキ科 全長約13.5cm

絞り:F5.6|シャッタースピード:1/200秒|ISO:400|露出補正:+0.3|焦点距離:700mm|一眼レフカメラ(フルサイズ)|撮影地:愛知県

4月から広葉樹林に飛来する夏鳥。北海道以外では山地に多いが、春と秋の渡りの時期には低地の庭や公園にいることもある。東南アジア方面で冬を越すが、春夏に繁殖するのはほぼ日本だけ。

さえずり
地鳴き

※鳴き声が再生されます。

オスはナルシスト?

春と秋には身近にも

英名は「Narcissus Flycatcher」。フライキャッチャーは飛んでいる虫を捕らえるヒタキの仲間、ナルシスはスイセンを意味します。ナルキッソスという美青年が水に映った自分の姿に恋をし、溺死してスイセンの花になったというギリシャ神話がナルシストの由来ですが、キビタキの場合はナルシストというよりも、オスのあざやかな黄色からスイセンの花がイメージされたのでしょう。

スズメより小さく、美しいオスでも森の中では案外目立ちません。しかし、初夏までの繁殖期にはオスがよくさえずるので、そのピッコロのような歌声を頼りに探すことができます。

観察するのにおすすめの時期は、身近な緑地にいることもある渡りの季節です。ただし、秋はさえずらないので鳴き声を頼りに探すことが難しいうえ、メスそっくりの若鳥も多いので、日ごろから近所で身近な野鳥を気にしていないと見つけにくいかもしれません。

キビタキ メスや若い鳥はスイセン色のオスとはまったく違い、模様もほとんどない。さえずることもないが、時折「ピオ」とか「クリリッ」という声で鳴く。

派手なオスと地味なメスの理由

声よし、姿よしのオスは天に二物を与えられた羨む存在なのでしょうか? 命の多くは他の命の食物になるという原則を考えてみましょう。生きのびられないことのほうが多いからこそ、命はたくさんの子孫を残そうとします。

産むことが役割のメスは、そこにエネルギーを投資すべきで、目立つ必要はありません。誘ったり、なわばりを守ったりするなどの目立つ役割はオスが担うべきで、相手を選ぶ決定権はメスにあります。オスの美しい姿やさえずりはなわばり防衛に必要なだけでなく、メスがオスを選ぶ要素にもなっているのです。

春が来るたびにオスがさえずるのは、メスに選ばれてペアになることができても、その関係は子育てとともに終わるからです。多くの鳥は一夫一妻で繁殖しますが、野鳥の世界は生存率が低いので、夫婦や親子の関係はその年の繁殖期だけなのです。

キビタキ 夏鳥の多くは9~10月にかけて東南アジアなどに渡っていく。キビタキなどのヒタキ類は、しばしば身近な緑地にも立ち寄るが、地味なメスや若鳥に気づく人は少ない。
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