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トップメッセージ

Fujio Mitarai

よき企業市民として、よりよい社会の実現に貢献します。

2016年の振り返り

2016年は英国の国民投票におけるEU離脱派の勝利、米国大統領選挙におけるトランプ候補の勝利に象徴されるように、世界経済の停滞の中で進行していたグローバリゼーションの負の部分が顕在化し、新たな変革を求める声が挙がった年でした。経済面では、日本のほか、米国、欧州、中国と世界経済の中核となる経済圏が停滞し、低成長・低インフレの状態が続き、為替は大きく乱高下して通年ではドルとユーロともに大幅な円高となりました。
このような厳しい経営環境は当社の業績にも大きく影響し、結果としてキヤノンは減収減益となったものの、業績の落ち込みには為替変動が影響している部分が大きく、市場においては、キヤノン製品の評価や競争力は維持されています。さらに社内においては、開発、調達、生産技術、そして製造現場が一体となって知恵を出し、工夫し、コストダウンを達成することで、従来からの利益構造を維持し、健全な財務体質を保持し続けています。

新たな価値創造に向け、戦略的大転換への準備

キヤノンは昨年、新たな5カ年計画となる「グローバル優良企業グループ構想フェーズV」をスタートさせ、「戦略的大転換を果たし、新たなる成長に挑戦する」ことを基本方針としました。2016年は、カメラ、複合機、プリンターなどの現行事業に加え、これらの事業領域と親和性の高い「商業印刷」「ネットワークカメラ」「産業機器」「ヘルスケア」という今後の成長を牽引する新規事業の4つの柱が出そろったという点で画期的な年になりました。商業印刷ではオセ社を、ネットワークカメラではマイルストーンシステムズ社とアクシス社をグループに迎え入れた成果が着実に出てきています。産業機器では新しい技術を用いた半導体露光装置や有機ELディスプレイ製造装置の開発を推進しています。そして、ヘルスケアの分野では昨年、東芝メディカルシステムズ社をグループに加え、新たな一歩を踏み出すことができました。
近年の世界情勢を見ますと、テロ、紛争、災害の多発により、安心・安全に暮らしたいという社会的ニーズが高まっています。また、世界的な人口増加と高齢化により、ヘルスケアの領域はますます重要な分野となっています。キヤノンの新規事業のうち、「ネットワークカメラ」と「ヘルスケア」はこの「安心・安全」のニーズに応えていくものであり、市場の拡大が予想され、キヤノンのさらなる成長への貢献が期待できます。同時に、社会の課題解決やよりよい社会の実現に、これまで以上に貢献できる事業であるといえます。

企業理念 「共生」と社会からの期待

昨今、企業に対する社会からの期待や責任は多岐にわたり、企業が果たす役割の重要度はますます高まっています。キヤノンは、1988年に企業理念として「共生」を掲げ、 お客さまやビジネスパートナーに対してはもちろん、国や地域、自然や地球環境に対してもよい関係をつくり、社会的な責任をまっとうすることを宣言しました。この理念は2015年、国連にて採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の考え方とも合致しています。社会を構成する一員として、企業に対しても大きな期待が寄せられている中、キヤノンは技術力を生かした新たな価値創造・社会課題の解決と環境保護・保全活動で社会に貢献していきます。

地球環境の保護・保全

環境問題に対してキヤノンは早い時期から取り組みを進めてきました。製品を効率的に生産するにあたり、大きな生産設備を持ち、多様な資源を利用しているため、地球環境との「共生」なくして事業は成り立たないと考えたからです。
例えば、環境に配慮した部品や材料を調達する「グリーン調達」を1997年に始めて以降、工場排水の循環利用や使用済みトナーカートリッジの回収など、製品ライフサイクル全体で環境に配慮しています。また、生物多様性への取り組みにも力を入れています。「キヤノン生物多様性方針」に基づき、製品・技術の活用、事業所の取り組み、生物多様性を育む社会づくりを推進しています。事業所での取り組みでは、「鳥」をテーマにした生態系保全活動や工場の緑地化などを行っています。
現在は、総合指標として、「ライフサイクルCO2の効率を毎年3%改善する」という目標を掲げ、毎年達成を続けています。これからも、キヤノンの環境ビジョンである「豊かな生活と地球環境が両立する社会」の実現に向けて、活動を進めていきます。

人と社会への配慮

企業評価の指標としてESG(環境、社会、企業統治)が大きく取り上げられていますが、特にキヤノンが強化しているBtoB取引や政府・官公庁向けの取引においては、人と社会に配慮した事業活動を行っているかどうか、お客さまから確認を求められる機会が増えています。お客さまやお取引先の信頼を獲得するための基本として、品質管理はもちろん、コンプライアンス、ガバナンス、リスク管理を強化し、企業の持続可能性を高めていくことが大切であると考えています。キヤノンでは、従業員に対し、基本的人権の尊重、差別の禁止、労働安全衛生の確保、労働時間の管理、従業員と経営者との対話に加え、ワーク・ライフ・バランスを考慮した「働き方改革」や女性従業員の活躍を中心としたダイバーシティの促進に取り組んでいます。さらに、サプライチェーンにおいても、お取引先の協力を得ながら、児童労働や強制労働の禁止の確認、紛争地域の人権問題への加担回避などに努めています。また、社会貢献活動として、芸術・文化・スポーツ支援、財団活動、人道・災害支援、教育・学術支援などさまざまな側面から取り組みを継続しています。

変化に対応できる人材の育成

国際社会もキヤノンも大転換の渦中にありますが、このような大きな変革に立ち向かっていくため、社員一人ひとりが「三自の精神」(自発・自治・自覚)や「進取の気性」といったキヤノンスピリッツを十分に発揮できる環境を整備すべく、要員構造の抜本的改革にも取り組んでいます。
例えば、生産の自動化の進展に伴って、それまで生産ラインで働いていた社員に新たな教育を行い、職域を広げることで、新しい生産装置の設計などの付加価値の高い業務に携わる機会を創出しています。また、開発、生産、販売など企業活動のさまざまな局面で求められるITに精通した人材の確保については、新しい分野に挑戦したいという社員を社内で募り、職種転換を進めています。
キヤノンはおかげさまで今年創立80周年を迎えます。「グローバル優良企業グループ構想フェーズⅤ」の最終年度である2020年には、キヤノンをもう一段高い次元の会社へと成長させたいと考えています。キヤノンの特徴である「高度な技術力」「グローバルな事業展開」「専門性のある多様な人材」を有効に活用し、「共生」やSDGsの理念がめざすよりよい社会の実現に向けて、世界中の人々から親しまれ尊敬される真のグローバルエクセレントカンパニーをめざしていきます。そして、ステークホルダーの皆さまとともに、この先100年、200年と繁栄し続ける企業となれるよう努めていきます。
今後も、より一層のご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

キヤノン株式会社
代表取締役会長 CEO

Fujio Mitarai