インタビュー - Interviews -

ハビエル・フェルナンデス選手
インタビュー

文・野口美恵(スポーツライター)

今季はヨーロッパ選手権優勝、世界選手権銅メダルと、スペイン初のメダルを次々と獲得し、歴史に名を刻んだハビエル・フェルナンデス。
大躍進のシーズンを振り返った。

母国の歴史に名を刻むISU(国際スケート連盟)メダル 「練習が結果に繋がると身に染みて分かった」
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銅メダルおめでとうございます。ショートプログラム7位からの逆転でしたね。

ヨーロッパ選手権で優勝しただけでも素晴らしいシーズンでしたが、立て続けに夢が叶って本当に嬉しいです。いくらヨーロッパで優勝したとはいえ、世界選手権の表彰台は難しいかなって思っていました。実際のところは5位以内が現実的な目標だったんです。

スペイン初の世界選手権メダルです。

母国の歴史に名を刻むというのは、アスリートにとってこれ以上の誇り高いことはないです。でももっと活躍するスペイン選手が出てきて欲しいです。スペインは色々なスポーツで活躍している人がいて、フィギュアスケートだけがまだ有名人がいなかったので。最近はテレビで試合も放送するようになったので選手も増えました。スペイン選手が頑張り続けて、フィギュアスケート大国の1つに名を連ねるようにしたいです。

ショートではトリプルアクセルが1回転半になってしまいました。

1つのミスが痛かったですね。でも点差はそこまで大きくなかったから、まだフリーで挽回できると思って気持ちを保ちました。アクセルは今年はよく練習したし、自信もあったので、技術的なミスではないです。

フリーは素晴らしい演技でした。

結果は良かったのですが結構ミスがあったと思います。技術的には3つの4回転が入っているのでハードで、そのプレッシャーを考えれば、2本成功したのは良くやった方だと思います。練習では4回転3本とも降りていますが、さすがにシーズン最後の試合で疲れも出て、ミスに繋がりました。

フリーの演技後、最終グループの演技をどんな気持ちで見ましたか?

ショートで7位でしたしメダルは無理だと思いました。でもプログラム全体は良く滑れたし、あの時点で首位。廊下のテレビで試合を見ていて、自分の順位が下がらなかったのでだんだん興奮していきました。最後はパトリック(パトリック・チャン選手)も一緒に見ていて、最終的に3位と決まった時は、何をどうして良いのか分かりませんでした。跳び上がって喜ぼうか、泣こうか、パトリックに抱きつこうか、さてどうしようって感じでした。

ヨーロッパ選手権のあとはどんな練習をしましたか?

トロントに戻ってからはかなりハードに練習し、曲かけ練習は常にパーフェクトで絶好調が続きました。でも逆にだんだん疲れが溜まっていって、世界選手権に向けては疲労が一番の心配の種でした。ユヅル(羽生結弦選手)も怪我で練習量を減らしていたし、2人して練習量の調整をして、最後はあんまり滑ってなかったです(笑)。ヨーロッパ選手権で力を出し切ってしまったので、来季は力の配分を良く考えたいです。

今年はメダルラッシュでしたね。

GPシリーズのスケートカナダ、ヨーロッパ選手権、世界選手権とたくさんのメダルを獲ることができて、練習をちゃんとすると良い結果が出るってことが、身にしみて分かりました。今シーズンほど最高のシーズンはなかったです。

来季のプログラムは思案中「何かの役を演じるのは楽しい」
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シーズンオフの計画は?

まずはフロリダでバケーション(笑)。そのあとショーがあり、スペインで家族と過ごし、またトロントに戻って練習再開です。まずはプログラム作りから。

プログラムは何かアイデアがありますか?

まだまだノーアイデアですが、でも今年のチャップリンは自分で選んだし、とても気に入っているプログラムです。コメディというよりは、チャップリン自身の可愛らしい雰囲気を出そうと思って演じました。去年は完全なクラシックだったけれど、やっぱりこういった役を演じる方が似合っている気がします。

振付は2曲ともデイビット・ウィルソンですね。

デイビットは本当に面白い人。色々なアイデアに常に溢れているし、僕の滑りをよく理解してくれて役作りしてくれるので滑りやすいです。去年のショートの『I love Paris』とか今年の『チャップリンメドレー』などは、今までにない柔らかい滑りをするプログラムでしたが、こういった新しい要素を僕に与えてくれる振付師です。(2011年まで師事した)ニコライ・モロゾフも役を演じるプログラムを作ってくれたけど、強い滑りをするタイプ。今は色々な持ち味を探すことで、自分が成長していると思います。

来季、ショートで4回転を2本入れる予定はありますか?

もちろんショートでもっと得点を稼ごうという作戦になったら、2本入れることも考えないといけない。挑戦する価値はあるし、ショートだけが試合なら可能だと思います。でもショートとフリーで合計5本の4回転というのは、かなりのプレッシャー。精神的にも体力的にも、ものすごいエネルギーが必要になります。4回転が単に跳べるということではなく、2つの演技をこなすだけのエネルギーの問題があるんです。

でも4回転の成功率はかなり高いですね。

簡単そうに見えますか? そうでしょうね。ジャンプだけならリラックスして跳べるし、ジャンプなしのプログラムだけでもリラックスして演技できる。でもすべてが合わさって試合となると、また違うんです。

個性を尊重してくれるチーム・ブライアン クリケットクラブの環境で成長
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2年前の夏、トロントに移った時はブライアン・オーサーに何を求めていましたか?

自分に合った練習をさせてくれる場所、自分を大事なスケーターとして認めてくれる場所、というのが当時必要でした。ブライアンのいるクリケットクラブでは、多くのコーチがついて、常に誰かが僕を見てくれている。たくさんのスケーターと一緒に、たくさんのコーチが見てくれる中で練習できる環境が素晴らしいと思いました。

ブライアンの指導で良いところは?

僕を僕として育ててくれるところです。例えば、ユヅルと僕は違う選手。同じようなタイプの選手に育てようなんて考えていない。4回転の跳び方だって、僕とユヅルは違うし、ブライアンもキム・ヨナもみんな違う。僕の力を伸ばせるスタイルを探してくれることが素晴らしいことです。

ブライアンのもとで一番成長したところは?

様々なことが変わりました。技術的には、なめらかに滑ること、美しく表現すること、というのはここ2年で初めて学んでいることです。スケーティング技術の練習量は今までにないほど練習しています。

昨季も頭角を現したと思いましたが、昨季の世界選手権は9位だったんですよね。

2年前トロントに移った時は、まさか自分がこんなに高いレベルに来るなんて思いもしませんでした。ブライアンは、僕が金メダルを望むならそれは現実的な夢になるし、望まないならそのままのレベルだと言いました。だから自分の夢は自分で決めなさい、と。僕は世界選手権で10位前後の選手で、スペインではそれでも凄いことだったし、何となくそこが自分の居場所になっていた。でもブライアンと練習し、昨季のGPシリーズで凄い成績を出してから、何かが違うぞって思い始めた。今度はいい成績を出したことでプレッシャーを感じて、昨季は結局ダメなシーズンの終わり方をしてしまったんです。

羽生がチームに加わり、意識変化「トップを狙う強い気持ちを得た」
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昨季以上に、今季さらに力を出せた要因は?

今季は今までよりも早くオフのトレーニングを始めたのも良かったと思います。ユヅルが来たことでハードな練習も楽しくなったし、もう帰りたいなっていう日でもユヅルが頑張っているので帰らない。練習量も増えたし、お互いが負けないぞって思って練習しているので集中力も高くなりました。

羽生選手が去年からチームメイトに加わることへの抵抗はありませんでしたか?

ユヅルがトロントにくると聞いたときは嬉しかったです。彼はすごい選手だし、とにかく練習する。一緒にいることで刺激になるし、僕も練習を頑張っている。ブライアン以外のコーチもいて、皆がしっかりケアしてくれるのでコーチの問題も一切ありません。同じ氷に乗っているだけで、お互いのレベルは確実に上がったと感じています。

羽生選手から学ぶものもありますか?

これまで自分には、メダルを獲れる選手なんだっていう強い気持ちが欠けていました。今年は技術的なことよりも、ユヅルが目の前にいて、僕達は五輪のメダルを目指しているっていうことを常に現実的に意識できるようになった。僕は10番組じゃなくて、トップグループにいるんだって、やっと思うことができた。そういった意味で、ユヅルは大切な仲間だし、刺激になっているし、今のチーム環境が素晴らしいと思っています。

2年前は、五輪のメダルについてはまだ口に出来ないと言っていました。いよいよメダル宣言できる気持ちになりましたか?

来季はみんながベストを尽くし、これまで以上の力を発揮するでしょう。だから再び表彰台に乗るためには今年以上の努力をしないといけないと思います。今年のようにポロポロとミスしていては、メダルは難しい。コーチとしっかり話し合って、ソチ五輪に向けてどんなステップの目標を設定し、どんな練習計画を立てるのか、しっかり考えないといけません。でもそうやって、具体的にメダルの計画を考えようと思っていること自体が、嬉しいことです。五輪でメダルをとることが僕の夢だと、今年は胸を張って言うことが出来るのですから。

2013年世界選手権後にカナダ・ロンドンにて取材

ハビエル・フェルナンデス選手の
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