インタビュー - Interviews -

マリア・ソツコワ選手
インタビュー

GPファイナル2位で「今季一番のビックリ」
五輪へ前進し「独特の雰囲気を味わいたい」

文・野口美恵(スポーツライター)

GPファイナルでは2位と躍進し、12月末のロシア選手権でも2位に入り、一気に五輪出場の夢へと近づいたマリア・ソツコワ選手(ロシア)。激戦のロシア女子のなか、どんな自分をアピールしていきたいのか。スケートへの思いを聞いた。

銀メダルはこれ以上ない勝利
自信もつき楽しさを感じられるように

GPファイナル2位。おめでとうございます

今季一番の嬉しいビックリが、この銀メダルでしょうね。目標の一つにもちろん入っていましたが、実際に実現するとは最後の最後まで実感がありませんでした。演技が終わって、選手ラウンジのテレビ画面でコーチたちと試合を見守っていました。(ショート首位の)ケイトリン・オズモンドの演技が終わって私よりも下位になった時に、コーチが「あなたが2位よ!」と言うので、私は「待って、まだあと2人スケーターが残ってます」と言って、コーチも「ああ、まだ2人もいるのね!」なんて慌てていて。あと何人滑るのか、自分がどの順位にいるのか、落ち着いて考えられないくらい緊張していました。最後のスケーターが演技を終えて、銀メダルが確定した時は、私たちのチームにとってこれ以上ない勝利でしたから、みんなで祝福し合いました。

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実際に、銀メダルをもたらした要因は何だったと思いますか?

この夏に、とても充実した練習をたくさんできたことです。新しいジャンプの組み合わせにも挑戦しましたし、それができるまで忍耐と努力が大事なんだと心に決めて臨んできたことです。

試合での緊張のコントロールが上手になりましたね。

試合はいつも緊張するのですが、自分に自信を感じる試合も出てきました。試合によってはいつもより緊張する時も、逆に緊張が和らいでいる時もあって、まだこの精神的なパターンを把握しきれてはいないのですが、年齢的にも技術的にもこれまでよりは自分に自信を持てるようになりましたし、緊張よりも楽しさを感じられるようになってきました。

今季のプログラムも合っていますね。選んだ理由は?

やはり五輪シーズンということで色々なことを考えて選びました。今季は、私に合う曲、そして五輪シーズンに相応しい曲というのが重要です。私のチーム、つまりブヤノワコーチと、ピーター・チェルニシェフさん、イリーナ・タガエワさんたちみんなで相談して、ショートの『白鳥の湖』と、フリーの『月の光』を選びました。

2季前にブヤノワコーチに変更し、シニアへ
「私に必要なものをくれるチーム」

2016年世界ジュニア選手権で2位になり、そのあとコーチを変えましたね。なぜ今のエレーナ・ブヤノワコーチを選んだのでしょう?

コーチを変えるにあたっては本当に悩み、よく考えて決断しました。今振り返ると正解でした。とてもパワーのあるスケーティングになりましたし、演技全体も成長しました。今のチームは、トレーナーや振付師などプロフェッショナルが集まっていて、みんなが協力し合って私を支えてくれているので、こういったチームでの新しい練習環境が、私の成長と勝利に繋がりました。

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モスクワには、エテリ・トゥトベリーゼコーチのような有名なチームがありますが、なぜブヤノワコーチを選んだのでしょう?

私にとってはブヤノワコーチが最も良いと思ったからです。色々と考えた結果、私の望むスケートと、私の期待する結果をもたらすことができると考えました。今とても充実した練習を送っていて、本当に私に合っているコーチだと思います。

ブヤノワコーチは厳しいですか?

もちろん必要な場面では厳しいです。ブヤノワコーチは、私のやる気が出るタイミングで褒めてくれますし、逆に褒められて開放感に浸ってしまわないように注意するタイミングもわかってくれています。だから怒られたとしても、それは私がもっと上手になるため、もっと努力するためのものであって、私には必要なことなんです。

2014年世界ジュニア選手権を怪我で棄権
「特別なことではなく基礎練習が大切」
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今季は、エフゲニア・メドベデワ選手をはじめ多くのトップ選手が怪我に苦しんでいます。

選手にとっての怪我は、今季特有というわけではないと思います。誰もが、最高のレベルの状態で試合を迎えたいと思っていますから、プログラムを高難度のものにして、試合が近づくほど自分に無理をしがちです。そして、それが身体にダメージをもたらしてしまい、結果として万全の状態で試合に臨めなくなってしまうんです。私の場合はこれまでの経験がありますから、今季いまから試合に向けて特別なことや無理なことをしようとは考えていません。これまでの基礎的な練習、いつもの練習を繰り返すことが、少しずつ実力を伸ばしていくと思うので、今季はこのまま怪我なく過ごせると思います。

ソツコワ選手自身も、13歳のときに大きな怪我を負い、そこから立ち直った選手ですね。

はい、やはり怪我はとても辛いものです。2014年世界ジュニア選手権に出発するまさに3日前に半月板を損傷したんです。それまで万全のコンディションに仕上げていて、優勝を狙って準備をしていたので、大きなショックでした。2か月近くリンクに乗ることができず、リハビリの間に身長が12cmも伸びたことで、氷上練習を再開した時には身体がとても重く感じました。どうやってジャンプしたらいいのかわからなくなり、すべての基礎から、そして1回転ジャンプから作り直しました。ジャンプはリズムが崩れ、次のシーズンは成績が振るわず、「本当にこのままフィギュアスケートを続けたいのか」と自問自答しました。でもやっぱりスケートを好きで続けたいと思い、そして私を支えてくれる人たちがいることを再確認して、私はスケートを続けることができました。

その後、2016年世界ジュニア選手権では、今度はロシアチームの仲間が怪我をする事態もありました。

あの時は、大会期間中に私の目の前でアリサ・フェデチキナとポリーナ・ツルスカヤが怪我をして試合を棄権しました。それで自分も怪我をするんじゃないかと心配になり、試合でパーフェクトの演技をしようと練習してきていた目標に集中できず、結果として銀メダルになりました。あの反省があって、今は周りで何が起ころうと自分だけに集中して、周りの選手や他のことには気を取られないようにしています。

憧れはコストナー選手、「生きる伝説」
「高身長はハードルではなく、努力が大切」
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憧れの選手、お手本とする選手はいますか?

私にとっては、カロリーナ・コストナー選手が世界的なスターであり、生きる伝説です。彼女と同じ氷の上に立つたびに自分の新しい一面を表現する力をもらえるような気がします。彼女のように滑ってみたいと思いますが、一方で私は私自身のオリジナリティも見つけていかなければなりませんね。でもコストナー選手から学ぶことはたくさんあります。

ソツコワ選手は173㎝、コストナー選手は169㎝と、フィギュアスケート選手としては長身なことが共通しています。

高身長であることは、かつてはフィギュアスケーターとしてはハードルとみなされていました。けれど、問題は高身長であることなどではなく、自身の努力が左右するものだと思います。世の中には最初から名声がなくとも成功する人はいますよね。そういった意味でも、コストナー選手の活躍は素晴らしいと思います。

アスリートならば誰もが五輪出場は夢
ソチ五輪を観て「独特の雰囲気を私も感じたい」

平昌五輪についてですが、IOCの決定でロシア代表としては出場することができません。個人としての参加になることについて、どんな感想でしょう?

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五輪代表については、私個人としては考えないようにしています。ロシア代表と言うことができるかどうかは、私たちが今からどうにかできる問題ではないので見守るしかないです。それに代表が誰になるかもわからないので、いつものように練習を継続していくのみです。

ロシアではなく個人だとしても、五輪には出場したいですか?

もちろんです。五輪に出場することは夢ですし、すべてのアスリートにとっての目標で、誰もが五輪という夢に向かって努力しているものです。自分に目標を課して努力しているアスリートであれば、五輪出場は当然目標に掲げることだと思います。

ソチ五輪はどこで観戦していましたか?テレビでしょうか?

ソチには行くことができず、テレビで観ていました。やはりロシアの選手、なかでもアデリナ・ソトニコワを特に応援していました。ソトニコワが勝った瞬間は、私も涙が出るほど嬉しくて、興奮しました。世界中の人の記憶に残る演技だったと思います。五輪は他の大会とは比べることのできない独特の雰囲気があると思います。私も五輪というものを感じてみたい、あの雰囲気のなかで演技をしてみたいと心から思いました。

2017年12月、GPファイナルにて取材

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