2015優秀賞
本作は冒険家大洲奏の経験がモチーフとなっています。全盛期の大洲の業績についてはよく知られていますが、滑落事故によって一線を退いた後も、世界中の秘境の写真や資料を収集して研究を続け、各地から取り寄せた土を使って作陶を試みていたことはあまり知られていません。本作を通して、他者の経験の内に未知を見出し、移動なき冒険を続けた大洲の旅の軌跡を辿ってみたい、願わくはそれを今日の我々の冒険として提出してみたいと考えました。
[大洲 奏]
20世紀前半に活躍した冒険家・登山家。世界各地で採取した植物や鉱物を製薬会社等に送ることで資金を得て活動を続けるなど、近代的な冒険のスタイルを築いた草分け的存在として知られる。
滑落事故で体の自由を一部失い、引退を余儀なくされてしまうが、その後も世界中の秘境の資料を蒐集して研究を続け、数冊の冒険記を著した。また晩年には、世界各地から取り寄せた土を用いた作陶にも取り組んでおり、その器の表面はかつて大洲自身が登った岩肌の触感を再現するように荒く削られている。
応募作品形態:A3/インクジェットプリント/44点、A4/インクジェットプリントの束による立体/1点、ほか資料
アイコンでありインデックスであるという写真の二重性を、デジタルとアナログに割り振っていて、写真の「本当らしさ」が架空の世界と奇妙な折り合いを付けています。ちょっと飛躍がありすぎる細部(焼物など)もあるので、本人も手探りなのかもしれませんが、その手探りを応援したいと思いました。「フェイク」と「リアル」という古びた二分法の彼方で、「現実」の「写し」を「追体験」するという、写真をめぐる現在の経験を巧みに表現しています。
1979年 | 広島県生まれ |
2000年 | 多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻(版画)修了 |
2009年 | 個展「Climb on the contour line」新風館・京都 |
2010年 | 個展「Explore on the contour line」 Hasu no Hana・東京 |
個人での発表のほか、ユニット<構想計画所>としての活動も多く、 近作に「無人=Atopia」(gallery COEXIST-TOKYO・東京・2015年)、 「Save as」(Impact – International Printmaking Conference・イギリス・2013年)等がある。 |
2015優秀賞