ニュースリリース

2016年4月11日
特定非営利活動法人 京都文化協会
キヤノン株式会社

臨済宗妙心寺派 天球院「方丈障壁画」22面の複製品を寄贈
「梅花遊禽図襖(ばいかゆうきんずふすま)」などの寄贈をもって5年に渡るプロジェクトが完成

特定非営利活動法人 京都文化協会(以下 京都文化協会)とキヤノン株式会社(以下 キヤノン)が共同で取り組んでいる「綴(つづり)プロジェクト」(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)では、2012年より天球院「方丈障壁画」のうち金碧画(きんぺきが)56面の高精細複製品を制作してきました。今回の狩野山楽・山雪筆「梅花遊禽図襖」など22面の寄贈をもって5年に渡るプロジェクトが完成します。

「梅の間」の様子

「梅花遊禽図襖」の高精細複製品22面を天球院へ寄贈

天球院の「方丈障壁画」は国の重要文化財に指定されています。オリジナル文化財の歴史的・文化的な価値と、経年劣化や災害などによる損失の可能性を考慮し、「綴プロジェクト」では、2013年に「竹に虎図襖」4面、「籬(まがき)に草花図襖のうち朝顔図襖」4面の寄贈を行い、昨年までに34面の複製品の制作・寄贈を進めてきました。このたび、狩野山楽・山雪筆「梅花遊禽図襖」など22面の寄贈をもって、天球院「方丈障壁画」のうち「朝顔の間」、「虎の間」、「梅の間」を飾る56面が複製品に置き換わり、5年に渡るプロジェクトが完成します。寄贈後、オリジナル文化財は京都国立博物館に寄託され、良好な環境下で保管されることにより、日本の貴重な文化財の未来への継承が可能になります。

全56面からなる天球院の「方丈障壁画」を特別公開

天球院は通常、非公開となっていますが、このたび「朝顔の間」、「虎の間」、「梅の間」を飾る全56面の金碧画が複製品に置き換わった記念として、4月26日から5月10日まで特別公開されます。さらに、今回の公開では、これまで通常立ち入ることのできない3つの部屋の一部まで入室して、鑑賞することができます。金箔(きんぱく)などの装飾までを忠実に再現した高精細複製品を通し、作品のもつ迫力や美しさを間近でご覧いただけます。

【「綴プロジェクト」第9期作品 天球院「方丈障壁画」の特別公開について】

公開期間
2016年4月26日(火)~ 5月10日(火) 10:00~15:30(15:00受付終了)
公開場所
天球院内「朝顔の間」、「虎の間」、「梅の間」

  • 2016年4月13日修正しました。(誤)9:00~17:00(16:45受付終了) →(正)10:00~15:30(15:00受付終了)

*上記以降の特別公開についての詳細は未定です。決定次第、キヤノン綴プロジェクトホームページにてお知らせします。

「綴プロジェクト」では、今後も芸術を通した社会や文化の発展に貢献していきます。

【「綴プロジェクト」とは】

「綴プロジェクト」は、オリジナル文化財の保存と高精細複製品の活用を目的として、京都文化協会が主催し、キヤノンが共催して推進している社会貢献活動です。キヤノンの入力、画像処理、出力に至る先進のデジタル技術と、京都伝統工芸の匠(たくみ)の技との融合により、屏風や襖絵、絵巻物など古くから日本に伝わる貴重な文化財の高精細な複製品を制作して寄贈しています。
2007年からスタートした本プロジェクトでは、海外に渡る以前の所有者などに寄贈する「海外に渡った日本の文化財」と、中学校の教科書に掲載の多い文化財などを対象に、教育現場で生きた教材として活用する「歴史をひもとく文化財」の2つのテーマのもと、毎年文化財を選定しています。今回の作品を含め現在までに全34作品を制作しました。

入力

高精細デジタルデータの取得

文化財の原寸大出力が可能な高画質データの取得には、デジタル一眼レフカメラを使用。専用に開発した旋回台を用いて多分割撮影を行い、合成して高精細デジタルデータに仕上げます。

色合わせ

高精度なカラーマッチング

取得された高精細デジタルデータを、キヤノン独自のカラーマッチングシステムを用い撮影環境の照明と合わせて画像処理し、その場で出力し色合わせを行います。色合わせの労力と文化財への負担を軽減しました。

出力

世界最高レベルのプリンティング技術

日本画の繊細な濃淡、陰影が生み出す立体感の表現を大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF」が可能にしました。使用する和紙や絹本は独自に研究開発され、文化財の出力および金箔加工などに最適化されています。

金箔・金泥・雲母

古来より伝承される伝統工芸の技により再現

日本文化財の最大の特徴となっている「金箔(きんぱく)・金泥(きんでい)・雲母(きら)」は京都西陣の伝統工芸士が熟練の手技を振るいます。
箔の経年変化の再現には、独自の「古色」の技法が用いられます。

表装

京で鍛えられた確かな技術

作品は、京都の表具士により表装がなされます。日本独自の表具類を用い、屏風であれば金具の古色や裏面の切地まで、襖であれば建物への設えまでオリジナル文化財に近い姿で忠実に再現され、完成します。