ニュースリリース

2016年3月18日
特定非営利活動法人 京都文化協会
キヤノン株式会社

「源氏物語図屏風」の高精細複製品を平等院へ寄贈
米国メトロポリタン美術館から日本への里帰りを実現

特定非営利活動法人 京都文化協会(以下 京都文化協会)とキヤノン株式会社(以下 キヤノン)が共同で取り組んでいる「綴(つづり)プロジェクト」(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)の第9期作品として、米国メトロポリタン美術館所蔵、土佐光吉筆「源氏物語図屏風(びょうぶ)」4曲1双の高精細複製品を3月18日に京都宇治の平等院へ寄贈します。

土佐光吉筆「源氏物語図屏風」

「源氏物語図屏風」の高精細複製品を京都平等院へ寄贈

全54帖(じょう)からなる「源氏物語」の中でも、「関屋(せきや)」、「御幸(みゆき)」、「浮舟(うきぶね)」の場面が描かれる本作は、元々部屋を取り囲む襖(ふすま)絵の一部であったと考えられており、安土桃山時代の著名な画家、土佐光吉が手掛けた貴重な作例の1つとして知られています。
「綴プロジェクト」では、米国にあるメトロポリタン美術館の協力のもと、「源氏物語図屏風」の高精細複製品を制作し、源氏物語の舞台でもある京都宇治の平等院に寄贈することで、日本への里帰りを実現します。

「源氏物語図屏風」を特別公開

「源氏物語図屏風」の高精細複製品は、本日の寄贈より平等院ミュージアム鳳翔館に設置され、4月24日まで特別公開されます。土佐光吉は、スケールの大きな作品や装飾を施した作品を主に手掛けていたとされています。今回の高精細複製品でも、大画面作品と金粉などの装飾までを忠実に再現した実物大ならではの迫力や美しさを間近で鑑賞できます。

【「綴プロジェクト」第9期作品「源氏物語図屏風」の特別公開について】

公開期間
2016年3月18日(金)~ 4月24日(日) 9:00~17:00(16:45受付終了)
公開場所
平等院ミュージアム鳳翔館 1階レファレンスルーム

上記以降の特別公開についての詳細は未定です。決定次第、キヤノン綴プロジェクトホームページにてお知らせします。

また、今回の寄贈に合わせて、「源氏物語図屏風」が日本に里帰りを果たすまでの制作過程や、「源氏物語図屏風」の作品を紹介した映像を用意しています。詳細についてはこちらをご確認ください。

「綴プロジェクト」では、今後も芸術を通した社会や文化の発展に貢献していきます。

※Facsimile of a work in the collection of The Metropolitan Museum of Art:
Scenes from The Tale of Genji: “The Royal Outing,” “Ukifune,” and “The Gatehouse”, Tosa Mitsuyoshi (Japanese, 1539-1613), Momoyama period (1573-1615), mid-16th-early 17th century. Pair of four-panel folding screens; ink, color, and gold leaf on paper, Image (each screen): 65 1/2 in. × 11 ft. 8 in. (166.4 × 355.6 cm), Fletcher Fund, 1955 (55.94.1, .2) Image © The Metropolitan Museum of Art.

【「綴プロジェクト」とは】

「綴プロジェクト」は、オリジナル文化財の保存と高精細複製品の活用を目的として、京都文化協会が主催し、キヤノンが共催して推進している社会貢献活動です。キヤノンの入力、画像処理、出力に至る先進のデジタル技術と、京都伝統工芸の匠(たくみ)の技との融合により、屏風や襖絵、絵巻物など古くから日本に伝わる貴重な文化財の高精細な複製品を制作して寄贈しています。
2007年からスタートした本プロジェクトでは、海外に渡る以前の所有者などに寄贈する「海外に渡った日本の文化財」と、中学校の教科書に掲載の多い文化財などを対象に、教育現場で生きた教材として活用する「歴史をひもとく文化財」の2つのテーマのもと、毎年文化財を選定しています。今回の作品を含め現在までに全33作品を制作しました。

入力

高精細デジタルデータの取得

文化財の原寸大出力が可能な高画質データの取得には、デジタル一眼レフカメラを使用。専用に開発した旋回台を用いて多分割撮影を行い、合成して高精細デジタルデータに仕上げます。

色合わせ

高精度なカラーマッチング

取得された高精細デジタルデータを、キヤノン独自のカラーマッチングシステムを用い撮影環境の照明と合わせて画像処理し、その場で出力し色合わせを行います。色合わせの労力と文化財への負担を軽減しました。

出力

世界最高レベルのプリンティング技術

日本画の繊細な濃淡、陰影が生み出す立体感の表現を大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF」が可能にしました。使用する和紙や絹本は独自に研究開発され、文化財の出力および金箔加工などに最適化されています。

金箔・金泥・雲母

古来より伝承される伝統工芸の技により再現

日本文化財の最大の特徴となっている「金箔(きんぱく)・金泥(きんでい)・雲母(きら)」は京都西陣の伝統工芸士が熟練の手技を振るいます。
箔の経年変化の再現には、独自の「古色」の技法が用いられます。

表装

京で鍛えられた確かな技術

作品は、京都の表具士により表装がなされます。日本独自の表具類を用い、屏風であれば金具の古色や裏面の切地まで、襖であれば建物への設えまでオリジナル文化財に近い姿で忠実に再現され、完成します。