びょうぶをまなぶ

絵を見る楽しみ

東京博物館で教育プログラムを行う際、長谷川等伯の「松林図屏風(しょうりんずびょうぶ)」を小中学生の子どもたちと一緒に見ると、実にさまざまな意見が出てきます。

まず、何も情報を伝えずに、絵を見て気がついたことを聞いてみると、「きれい」「描いてあるところと何も描かれてないところ(の差)が激しい」「霧みたいな、もやみたいな。(木が一度白く途切れて)また根元が見える」など、とても素直な感想から、描き方に注目したコメントまで、さまざまな発言があります。

「これは涼しいところだと思う。暗くて夕方みたいだから」と聞いた時には、なるほど確かに、すーっとこちらも肌寒くなってくるような気持ちがしました。

そして、この絵の時間帯はいつくらいだと思う?と聞くと、「明け方。静かな感じがするし、霧が出ているから」「夜明け。明るくも暗くもないから」「日が暮れて霧が出て、だんだん暗くなっている」など、実にさまざまな、説得力のある意見が出てくるのです。

この絵から、どんな音が聞こえてくる?という質問には、「木が風でゆれてる音」「鳥の声」(鳥は描かれていないのに、不思議とそれも聞こえる気がします)などの意見に加えて、こんな意見も出てきました。「自分の息する音」自分の息の音が聞こえそうなほど、集中した静かな時間を感じとってくれたのでしょう。

絵を見る楽しみには、「絵を見ている自分と対話する楽しさ」と、「同じ絵をちがった見方で見ている他者と対話する楽しさ」の両方があります。「松林図屏風」はとくに、これはどんなところか、なにが起こっているのか、どんな音が聞こえるか、季節はいつなのか、周りにはどんな風景が広がっているのか、時間帯は?など、さまざまな角度からの自由な想像をゆるしてくれる、懐の深い作品だと思います。

ぜひ、想像力の翼を広げることをためらわずに、絵の中に飛び込んでみてください。

pagetop