びょうぶをまなぶ

松林図屏風の背景に広がる風景

「びょうぶとあそぶ」の会場、松林図屏風の後ろにそびえる半円形の巨大スクリーンには、水墨画の風景がコンピュータグラフィックスによって広がっています。この風景は、長谷川等伯の描いた「瀟湘八景図屏風(しょうしょうはっけいずびょうぶ)」が元になっています。

「瀟湘(しょうしょう)」とは、中国の湖南省(こなんしょう)にある景色の美しい土地で、湖に流れこむ瀟水(しょうすい)と湘江(しょうこう)という2つの川が合流するあたりのこと。つまり「瀟湘八景(しょうしょうはっけい)」とは、瀟湘という場所の8つの景色を表します。古く文人が集い詩歌に詠まれ、絵にも描かれました。日本でも室町時代以来、平沙落雁(へいさらくがん)・遠浦帰帆(えんぽきはん)・山市晴嵐(さんしせいらん)・江天暮雪(こうてんぼせつ)・洞庭秋月(どうていしゅうげつ)・瀟湘夜雨(しょうしょうやう)・煙寺晩鐘(えんじばんしょう)・漁村夕照(ぎょそんせきしょう)という景色が、水墨画の画題として数多く描かれました。

「瀟湘八景図屏風」は等伯が50代のころに描かれたものとされ、松林図屏風の制作時期に近い作品です。画面のなかには、所々に八景のモチーフが散りばめられています。

  • 平沙落雁
  • 煙寺晩鐘

風景を描いた屏風は、春夏秋冬の季節をひとつの画面におさめているものが多く、この瀟湘八景図屏風も、画面右側が春の景色、次に夏、左に秋の風物が描かれ、さらに左上の雪山(白い岩肌)へと季節が変化します。

大きく広がる四季の風景から、松林図の世界へと羽ばたくカラスも、等伯がよく描いたモチーフです。カラスの飛び行く先には、水辺の松林があるのです。

松林図は現在、屏風として伝わっています。しかし、画面の端に途切れたモチーフが描かれていて、もともとは、左右にさらに広がる大きな風景の一部だったようです。雪山が描かれているので、松林図は冬の景色かもしれません。今は見ることができない画面には、春や秋の光景も広がっていたかもしれません。今回、等伯自身の描いた水墨画を背景にすることで、松林図の世界をより深く感じられるのではないでしょうか。みなさんが、いつかまた松林図屏風を見たとき、松林のなかで靄に包まれ、そして、松林を抜け眼前に広がる風景がきっと目に浮かぶことでしょう。

  • 瀟湘八景図屏風 長谷川等伯筆
  • 安土桃山時代・16世紀 6曲1双 紙本墨画淡彩 サイズ:各159.0×354.8 cm
  • 東京国立博物館 A-12096
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