人材戦略

より競争原理の働く人事体制の構築

グローバル優良企業グループ構想フェーズVIにおける人材戦略

キヤノンは、創業以来の企業DNAである「人間尊重」のもと、従業員一人ひとりがいきいきと仕事に取り組み、キヤノンで働くことに誇りや幸せを実感できる企業風土の醸成を図っています。「実力主義」に基づく公平・公正な処遇を徹底するとともに、安心して働ける職場環境づくりを進めることで、多様な人材が「進取の気性」を発揮し、新たな価値を持続的に生み出していくことをめざしています。

「グローバル優良企業グループ構想フェーズⅥ」は、主要戦略の一つに、「より競争原理の働く人事体制の構築」を掲げています。この戦略に基づき、新たな人事制度の構築と組織文化の変革を通じて従業員のエンゲージメントを高め、働き方改革の推進とともに、さらなる生産性の向上を図っていきます。

また、キヤノンは人材の成長こそ事業の強化を支える原動力と考え、積極的な人材育成を推進しています。特に、事業ポートフォリオの転換とこれに続く事業の強化のため、イノベーションを創出する人材の戦略的な獲得・育成を進め、これらの活動を支える人材の育成を推進しています。

2018年には、研修施設「CIST(Canon Institute ofSoftware Technology)」を設立し、デジタル関連教育を拡充し、成長性の高い事業領域に人的リソースを移すために、研修と社内公募を合体させた「研修型キャリアマッチング制度」を実施するなど、幅広い人材のリスキリング(職業の能力の再開発・再教育)と社内転職を推進しています。従業員一人ひとりがキャリアを築き、活躍できる機会を創出することで「適材適所」を実現し、人的資本の最大活用を図っていきます。

また、キヤノンは共生の理念のもと、文化・習慣・言語・民族などの多様性を尊重しています。ダイバーシティ&インクルージョンの推進を重要な経営課題の一つとして位置づけ、さまざまな個性や価値観をもつ従業員一人ひとりが活躍の機会を限定されることなく、存分に力を発揮できるよう、制度や環境の整備を進めています。

適材適所の人材配置

キヤノンは、戦略的な要員配置と従業員への積極的なキャリア形成支援を行うことで適材適所を実現し、一人ひとりが活躍できる組織体制をめざしています。

採用活動においては、専門知識や本人の志向をもとに、配属先を入社前に確約するジョブマッチング型の採用を拡大し、各事業が求める人材を最適な部署へ配置しています。また、入社後3年が経過した従業員に対しては、人事部門が仕事や職場との適応状況を確認する面談を行い、配属後も従業員一人ひとりが安心して能力を発揮できる環境を整えています。そのほか、事業ポートフォリオの転換に伴い、グループ内で要員の再配置を行うことで、既存事業から新規事業への要員シフトを進めています。

また、事業の変化にあわせて従業員も自らの変身に挑戦できる「研修型キャリアマッチング制度」を実施しています。この制度では、3カ月から6カ月の研修により、実務に必要な知識を習得した上で新しい部署への社内転職を行います。専門知識を身につける学び直しの機会を提供し、従業員が未経験の仕事にもチャレンジできる仕組みを構築することで、人生100年時代における自律的なキャリア形成を支援しています。

研修型キャリアマッチング制度

新しい事業ポートフォリオに沿った人材育成: ソフトウエア教育

キヤノンでは、グローバル優良企業グループ構想フェーズVIのめざす新しい事業ポートフォリオへの転換とこれに引き続く事業の強化を支える人材を育成するため、AIやIoTなどに関するDX教育に注力しています。CISTを設立し、これからのキヤノンの事業戦略に必要なデジタル分野の知識を受講者のレベルに応じて基礎からトップクラスまで、体系的に身につけることのできる体制を整えています。

また、社内での育成だけではなく、国立情報学研究所主催のソフトウエア技術者育成を目的とした「トップエスイーコース」「アドバンストップエスイーコース」に6人、早稲田大学主催のAI・IoT・ビッグデータ技術分野のビジネススクールである「スマートエスイーコース」に3人の技術者を派遣しています。

社内外での教育を通じて最先端の知識や技術を学ぶことで、事業の転換と強化を支えるエキスパートの育成を図っています。

DX研修受講者の声

私は現在イメージソリューション事業本部で、ネットワークカメラのソリューション開発に携わっています。モデル開発業務の中で、ディープラーニング技術を活用する必要があり、事業の知識や経験がある社内講師ならではの知見が習得できるのではないかと考え、研修を受講しました。基礎研修では実際にプログラムを作成することで、ディープラーニングモデルの内部の動きがよく理解できました。また、応用研修では講師の方がモデルの構造や組み方の手法などについて実例を挙げて説明してくれたため、利用方法を具体的にイメージすることができました。ディープラーニングの初学者から中級者向けの研修のため、プログラミング基礎知識がないと理解しづらいところもありますが、事前にWebラーニング講座で必要な基礎知識を身につけることもできました。この研修の知識を生かして、より高度なモデル開発ができるエンジニアをめざしています。

働き方改革の推進

キヤノンは、仕事と生活の両立を尊重し、労働時間の短縮に取り組んでいます。2020年からは新たにテレワーク制度を導入し、時間や場所に制約を受けない柔軟な働き方を推進しています。2021年の一人当たり年間総実労働時間は平均1,745時間であり、所定労働時間の1,800時間を大きく下回っています。

また、自宅でも受講できる自己啓発プログラムの提供や終業後の各種セミナーの開催など、従業員が主体的にスキルを磨くことのできる環境を準備することにより、ワーク・ライフ・バランスと生産性向上の好循環をめざしています。