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事業を通じた新たな価値創造、社会課題の解決メディカル事業の拡大

キヤノンの技術を新たな診断技術の開発やヘルスケアITなどに生かして、医療の向上に貢献します。

世界的な人口増加に伴い、高齢者の人口も増加し、2050年には65歳以上の人口が現在の2倍を超える14億人に達するといわれています。高齢化先進国として世界の注目が集まる日本では、2050年には人口の約4割が65歳以上になると予想されています。高齢になっても健康上の問題で日常生活が制限されることなく、活力のある生活を送りたいという人々の意識は高まり、健康増進、疾病予防から、高度な個別化医療まで幅の広いヘルスケアサービスへのニーズは増し、2030年にヘルスケア産業の世界市場は500兆円を超えると予測されています。

今後加速する高齢化社会においては5年から10年に及ぶ平均寿命と健康寿命の差を縮めていくことが大きな課題です。年齢を重ねても健康に暮らすためには疾病の予防と早期発見、早期対処が鍵となります。疾病の予防や早期発見は、高齢化社会における医療費の増大に歯止めをかけることにもつながり、持続可能な社会をめざすために対応しなければならない課題の一つです。

一方、質の高い医療サービスの提供には、医師による的確な診断が欠かせません。そのために、医療現場における膨大な情報や蓄積された患者さんの医療情報を有効活用していくことが求められています。医療従事者の負担軽減もまた、持続可能な社会をめざす上での大きな課題となっています。

キヤノンは、医師でもあった創業者、御手洗毅の「医療で社会に貢献したい」という強い思いから、創業間もない1940年に肺結核の発見を目的とした国産初のX線間接撮影カメラを開発して以来、眼科機器やデジタルラジオグラフィなど画像診断技術を活用した機器の提供を通じて疾病の早期発見や治療に貢献してきました。現在は、中長期経営計画「グローバル優良企業グループ構想フェーズⅤ」における新規事業の柱の一つとしてメディカル事業を強化。2016年12月、X線CT(コンピューター断層撮影)において国内1位、世界3位のシェアを誇るキヤノンメディカルシステムズ(旧東芝メディカルシステムズ)がグループに加わりました。キヤノンメディカルは、尊い命を守る医療に貢献したいとの思いを込めた「Made for Life」という経営スローガンのもと、CTやMRI、超音波診断装置など、患者さんの負担軽減と高精細画像を両立させる技術開発を行ってきました。これに、キヤノンが培ってきた画像処理技術やAI(人工知能)を使った診断支援などの技術を融合させ、患者さんや医療従事者に寄り添ったソリューションを提供していきます。

一方、米国ボストンにあるキヤノンのヘルスケアオプティクスリサーチラボラトリーにおいては、ハーバード大学医学部の関連医療機関であるマサチューセッツ総合病院、ブリガムアンドウィメンズ病院と、医療ロボティクスや心臓血管内視鏡などを共同で研究しています。

今後も、国内外の先端医療機関と提携しながら、キヤノンメディカルを核に、「画像診断システム」に力を入れる一方で、ICTを駆使した最先端の診断支援システムやネットワークソリューションを提供する「ヘルスケアIT」、患者さんから採取した血液などの検体を高精度かつ迅速に分析する「体外診断システム」にも力を入れていきます。

世界の平均寿命と健康寿命

国名 平均寿命(歳) 健康寿命(歳) 不健康な期間(年)
日本 83.7 74.9 8.8
スペイン 82.8 72.4 10.4
イタリア 82.7 72.8 9.9
フランス 82.4 72.6 9.8
ノルウェー 81.8 72.0 9.8
イギリス 81.3 71.4 9.9
ドイツ 81.0 71.3 9.7
アメリカ 79.3 69.1 10.2
キューバ 79.1 69.2 9.9
中国 76.1 68.5 7.6
  • 平均寿命・健康寿命出典:世界保健機関(WHO)「世界保健統計2016」

患者さんの負担軽減と高度な診断を両立させる画像診断システム

キヤノンメディカルのCT診断装置は、診断能力、検査効率の高さ、検査負担の軽減、ライフタイムコストの削減などが評価されています。2007年に動きのある立体画像の撮影が可能なX線CT装置として世界で初めて製品化された「Aquilion ONE」では、臓器の動きや血流などの動きを見ることを可能にしました。同シリーズの最新装置では、撮影時間の短縮、被ばく量の低減や造影剤の低減を実現し、患者さんの負担をさらに軽減。高齢者や乳幼児の検査、さらに一刻を争う救急救命にも大いに貢献することが期待されています。「Aquilion ONE」は2017年に日本政府が創設した「日本医療研究開発大賞」において、厚生労働大臣賞を受賞しました。また、2017年にはより微細な人体構造を鮮明に描出したいという診療のニーズに対応できる高精細CT「Aquilion Precision」の販売を開始しました。

MRI装置においては、「音がうるさい」「装置内にいると圧迫感がある」という患者さんの声に応え、独自の静音化技術Pianissimoを搭載するとともに開放感のある検査空間を実現しています。このほか、高精細画像を提供する超音波診断システム、女性チームによって開発され検査時の痛みを軽減したマンモグラフィなど、患者さんに寄り添う製品群で、疾病の早期発見などに貢献しています。

被ばく量に考慮したCT診断装置

効率的で質の高い診察を提供するヘルスケアITソリューション

キヤノンメディカルは診療画像をはじめ、医療現場におけるさまざまな情報を収集し、統合・解析・加工して提供するヘルスケアITソリューション事業を推進しています。患者さんに関わるあらゆる情報を関連づけて保管・配信・シェアする統合プラットフォーム、医療現場で集まった情報をAIなどを活用して解析・加工することで医師を支援するシステムなどを通じて、医療情報の有用性を高めます。2018年1月には、医療情報の収集・統合・解析・可視化によって医療業務の効率化を実現する医療情報ソリューション「Abiertoシリーズ」の販売を開始しました。お客さまに臨床的価値、作業効率的価値、経営的価値の3つのバリューを提供するとともに、病院間や地域医療の連携を強化し、医療の向上に貢献していきます。

迅速で人にやさしい体外診断システム

キヤノンメディカルは、高感度検出技術により、発症初期の微量なウイルスも迅速に検出する体外診断システムも展開しています。インフルエンザウイルスキットは、より早く、簡単で正確な検査による診断が求められる現場において、鼻かみ液でも検出可能で、小さな子どもも安心して検査ができます。早期検査により早期治療が可能となるため、重症化、感染拡大の防止にもつながります。

血液などを検査する検体検査システムにおいても、豊富な製品ラインアップを持ち、さまざまな検査に対応。加えて、エボラ出血熱やジカ熱などの熱帯感染症が世界的に大きな脅威となっている中、早期発見に貢献するDNA検査システムの開発も行っています。今後も、検査の高速化や検体の微量化などにより、被験者の負担軽減と医療の効率化の両立を推進していきます。