地球規模の気候変動や行き過ぎた開発によって、貴重な森林資源や生物多様性、また、さまざまな動植物の生息域が失われつつあります。キヤノンは、自然環境や生物多様性が将来の持続可能な社会にとって重要な基盤であることを深く認識し、保全に向けた行動を推進しています。
キヤノンは、生物多様性が持続可能な社会にとって欠かせないものであると認識し、グループ共通の「生物多様性方針」を掲げています。
キヤノンは、生物多様性が持続可能な社会にとって欠かせないものであると認識し、グループ共通の「生物多様性方針」を掲げて、さまざまな生物多様性保全活動に取り組んでいます。
基本的な考え方キヤノンは、生物多様性が将来の持続可能な社会にとって重要な基盤であることを深く認識し、生物多様性に資する行動を推進していきます。
行動指針キヤノンは、バリューチェーンにおける生物多様性の保全にも取り組んでいます。オフィス向けに販売している用紙の原材料となる森林資源を持続的に活用できるように、森林資源の保全に配慮した木材製品の調達に関する方針を策定。その方針に従って、「森林認証用紙」や「環境に配慮された供給源の原材料から製造された用紙」を採用しています。
キヤノングループは、木材製品の調達において木材利用を目的として管理された森林資源から供給された材料を使用する。
2.使用する森林資源のトレーサビリティの実施「原料となる木材の収穫から物品の製造過程全体を通じてのトレーサビリティの確保」をお取引先の協力のもと実施する。
3.「トレーサビリティ確保」のエビデンス確認キヤノン製品(またはOEM製品)およびそれらの包装を構成する物品が各国の木材製品規制の対象となる場合などについては、それに使用する調達物品について、お取引先の協力のもとエビデンスを管理する。
キヤノングループの木材製品管理基準はこちらをご覧ください。
キヤノンは、「生物多様性方針」のもと、「ネイチャーポジティブ」をスローガンに定め、世界各地で地域に根差した活動を推進しています。
昨今「生物多様性」が世界共通の課題として認識されており、生物多様性保全だけではなく生物多様性回復に関する取り組みである「ネイチャーポジティブ」という考え方が注目されています。「ネイチャーポジティブ」の推進により経済活動の損失防止だけではなく雇用やビジネスの創出になると考えられています。キヤノンはグループ全体で「ネイチャーポジティブ」のスローガンを掲げ、世界各地域の販売拠点および生産拠点でステークホルダーと協働し、各地域のニーズに沿った活動を展開しています。
キヤノンは「ネイチャーポジティブ」のスローガンのもと、「水」「森」「生物」を主な領域として、緑地整備や生態系の回復など、世界各地で地域に根差した活動を推進しています。
グローバルに展開をしているキヤノンバードブランチプロジェクトをはじめ、さまざまな生態系や生物多様性の保全活動への取り組みを紹介します。
設置した巣箱に飛来する野鳥
整備を施した緑地
生物多様性とは、地球上のさまざまな生物のつながりを指します。その中でも鳥は、植物、虫、小動物などから構成される地域の生態系ピラミッドの上位に位置する生命の循環のシンボルとなっています。キヤノンでは、グループの生物多様性方針に基づいた活動の象徴として、鳥をテーマとしたキヤノンバードブランチプロジェクトの活動を国内外の各拠点で推進しています。
2026年までにはプロジェクト参加拠点を下丸子本社1拠点(2015年)から国内外60拠点に拡大していき、取り組みを強化していきたいと考えています。
キヤノン(株)下丸子本社の敷地にはさまざまな木々が植えられた緑地帯「下丸子の森」があり、日本野鳥の会監修のもと、野鳥の飛来状況を毎月定期的に調査しています。観測できた野鳥は2014年の全23種から2022年時点で38種類に増え、生息種の多様性化を達成できています。各拠点においても、ビオトープやバードバス(野鳥の水浴び場)、巣箱の設置・掃除、バードストライク対策など、野鳥が敷地内で生息しやすい環境を整備しています。また、社員に向けても、営巣された巣箱の公開などを通じて、身近な場所でも野鳥の生命が育まれていることを知る機会を提供しています。また、国立環境研究所が進める「生物季節モニタリング」に12拠点が参加しています。敷地内で観測できる鳥類、植物、爬虫類、昆虫の「初鳴日」「初見日」「開花日」を報告し、学術の面でも貢献をしています。
国外での活動(フランス)米州、欧州、アジアの各海外拠点でも生物多様性保全活動に取り組んでいます。キヤノンリサーチセンターフランスでは、4万5,000m2ある敷地の82%が緑地となっています。2011年から、フランスの野鳥保護団体の助言のもと、緑地整備の方針を策定し、除草剤や殺虫剤の使用を中止するなど、緑地での生物多様性の保全や生息する生物種の拡大に向けた活動を行っています。この取り組みにより、生息する生物種は増加し、最新の調査では34種の鳥類が確認されています。
バードブランチプロジェクトのWebサイトでは、野鳥写真図鑑、野鳥の撮り方、そして野鳥の生態や生物多様性について、幅広い世代に興味を持ってもらえるようなコラムや動画などを配信しています。
キヤノン下丸子本社敷地内の緑地帯「下丸子の森」が、環境省が実施する「自然共生サイト」認定事業において、生物多様性保全区域に認定されました。本事業は2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする世界目標(30by30)の達成に向けて、「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定するものです。
子どもたちの未来に、多様な生き物を育む美しく緑豊かなふるさとを残すことを目的に、環境保全や環境教育を行う「未来につなぐふるさとプロジェクト」を国内のさまざまな地域で展開しています。
敷地内の生きものの生息状況を定期的に調査しています。蝶では栃木県のレッドデータブックに記載されているギンイチモンジセセリとツマグロキチョウを確認しました。また、蝶以外では ノコギリクワガタやカブトムシなども確認しています。
杵築事業所の「かにの森」にはアカテガニが生息。環境を整備するために定期的に「かにの森」を清掃しています。そして毎年梅雨明けくらいから5~10匹ほど姿をあらわします。このアカテガニをモチーフにキャラクターを作り「キヤニー(Canny)」と命名。事業所入構ステッカーとしても使われています。
福島市の「小鳥の森」にある棚田の再生を小鳥の森スタッフと共同で実施。この棚田には全国的に希少なトンボ類や底生生物が生息していましたが、2019年の台風19号により土砂が堆積し、生育環境が失われてしまいました。棚田再生を継続したことにより、昆虫やカエルの生息を確認することができ、着実に生態系が回復しています。
アカウミガメの産卵地として宮崎県の天然記念物に指定されている海岸で多くの社員が積極的に清掃しています。
東⽇本⼤震災からの復興のシンボルとして、未曾有の⼤津波が押し寄せたことを次の世代へ語り継ぎながら、防災林を⼤切に保管していくため、福島県は、植樹活動に取り組むNPO、企業などを募集し、森林づくり活動を推進しています。福島キヤノンは、2018年から南相⾺でこの活動に協⼒しています。毎年、社員とその家族が参加し、クロマツの苗を植樹し海岸防災林を再生しています。
野鳥をはじめとした様々な生物の生息空間として、2021年に「つむぎ池」、2023年に小川を自社製作しました。生物多様性の保全とともに、憩いの場として社員や地域社会との共生に貢献します。
「ホタルが生息できる環境」への再生を目的に、「実穀近隣公園ほたる野会」の皆さんと除草作業やホタルの天敵となるザリガニの駆除などを年間を通して行っています。
赤城事業所に設置されているソーラーパネル周辺を除草するために、羊を飼育しています。薬品等の環境負荷のかかる除草をすることなく緑地整備を実現しています。羊は周辺の保育園や幼稚園から児童が見学に来るなど、地域との交流の舞台にもなっています。
国立環境研究所が気象庁および環境省と連携して実施する「生物季節モニタリング」に参加し、キヤノングループの敷地内で確認できる野鳥、昆虫、植物などの「初鳴き日」「開花日」といった生物季節現象を報告しています。
茨城県つくば市のキヤノン化成では絶滅危惧Ⅱ類のキンラン、神奈川県の綾瀬事業所ではクゲヌマランなどが生息しており、敷地内で見守っています。
キヤノンカナダが推進する「Branch Out」プログラムは、一般社員からマネジメント層まで、あらゆる階層の社員がさまざまな地域コミュニティを緑化し、サステナブルな環境の構築を支援しています。
世界的に有名な米国のイエローストーン国立公園の公式パートナーとして非営利団体Yellowstone Foreverに製品と資金を提供し、絶滅危機に瀕した野生動物の保護のための調査活動を支援しています。とくに、教育・研究プログラム「Eyes on Yellowstone」では、キヤノンの映像機器を使用して生態観察を行い、自然環境や絶滅危惧種の保護に努めています。デジタル化された映像ライブラリーは、同団体のWebサイトで配信され、世界中の数百万人に及ぶ人々の教材として地球環境に関する知識や保護の重要性を認識するために役立てられています。
キヤノンU.S.A.は、ニューヨークマリンレスキューセンター(NYMRC)の海洋哺乳類とウミガメの保護・放流プログラムを支援しています。NYMRCは寒さで衰弱したウミガメを保護し、毎年夏に元気に回復したウミガメを海に放流しており、その放流の瞬間を、社員とその家族、友人たちと見守ることが、恒例行事となっています。ウミガメには衛星発信機をつけており、どこにいるのかトラックできます。
マイアミ大学ローゼンスティール海洋大気科学研究所によるサンゴ礁保全プロジェクトに参画し、サンゴ礁の再生とサステナビリティ達成に対する意識向上に取り組んでいます。学生や市民科学者は、自然に生息するサンゴの繁殖や、研究室で育てたサンゴの移植を行うほか、海水温の上昇に耐えられるサンゴの交配などの研究を行っています。2019年のプロジェクト開始以来、参加している学生達がキヤノンのカメラを使い、大きく成長する“キヤノンサンゴ” などの活動の記録を続けています。
© University of Miami / Evan K. D‘Alessandro, Ph.D.
キヤノンU.S.A.をはじめ、米国に拠点を置くキヤノングループ会社は、社員とその家族、友人とともに、キヤノンのオフィス近隣の公園や海岸の清掃活動を行うことで、環境保全に努めています。
広大な緑地のあるキヤノンバージニアは、ミツバチの巣箱を設置しています。ミツバチは絶滅の危機に瀕しており、自然の生息地を失っています。この巣箱は生息地を提供するだけでなく、ミツバチによる地域の在来植物の受粉を促しています。また、従業員にこの活動を知ってもらうため、ミツバチの重要性やそれがもたらす恩恵について話し合うイベントを開催しています。さらに、巣箱から蜂蜜を採取し従業員に販売提供することも出来ました。
パートナーであるボスキア社を通じて、森林再生プロジェクト「Bosque Canon」(キヤノンの森)を実施しました。スペイン北部の美しいトリンビア海岸に松の木や白樺など計2,080本の木を植樹し、事業活動で排出された1,000トンの二酸化炭素を耐用年数(30年)でオフセット(相殺)するものです。この適合性が認められ、スペイン環境省の公式認定証である「COMPENSO」を、スペインの印刷業界メーカ-として初めて取得しました。
ヨーロッパでは、10年以上前から昆虫が減少しています。生息地の消失、農業地域での殺虫剤の使用、営巣スペースの不足、気候変動が減少の一因となっています。昆虫の減少は、虫を餌とする鳥類が減ることにつながります。キヤノンギーセンでは昆虫ホテルやデッドヘッジ(低木や木から切り落とした長めの枝を再利用して作られた垣根)、昆虫用の桶を敷地内に設置することで、昆虫保全に取り組んでいます。
45,000m2の敷地にあり、広大な緑地(敷地の80%)で構成されています。2011年以来、バードライフ・インターナショナルのフランス代表とパートナーシップを結び、敷地内の生物多様性を保護・強化し、鳥類の種類を増やすことに取り組んでいます。昆虫の生息場所を確保できるよう草の刈り方を変えたり、除草剤や殺虫剤の使用を中止し、温室果樹園を作り、池を掘ってチョウやトンボ、コオロギを迎え入れ、草木も植えるなど緑地を整備しています。この取り組みにより、2020年の調査では34種の鳥類が確認され、2011年と比較して31%増加しました。
タイでは、チャオプラヤ川を中心に大小さまざまな運河が張り巡らされており、雨季になるとホテイアオイ(水草)が河川、運河を埋め尽くしてしまうほど繁茂してしまいます。増加したホテイアオイは、運河の水の流れを遅くし水質の悪化と生態系の破壊を引き起こすだけでなく、洪水を助長するケースもあります。キヤノンハイテクタイランドは、社員ボランティア、地方自治体の職員、地域の方々と協業で、雨季に入る前にホテイアオイの除去と、運河周辺の清掃活動を毎年行っています。除去したホテイアオイは、バイオ肥料の製造に再利用されます。
タイは、サンゴ礁の死滅につながるプラスチックごみの海洋排出量がとても多い国の一つです。サンゴは植物や水生動物の生息地、食料源、苗床として重要な存在です。一方で、ゴミがサンゴ礁を覆ってしまうことで光合成を阻んでしまったり、ゴミ自体による汚染も懸念されています。キヤノンハイテクタイランドは、プラスチックごみの削減を通して、海洋生態系の回復、サンゴ礁の再生、ウミガメの保護などを行うサンゴ礁保全活動を継続して行っています。
社員ボランティアスタッフ54名が、バンコク首都圏庁の「100万本の木」プロジェクトに協力し、バンコク中心部のベンチャキティ森林公園で106本の植樹を行いました。2022年にバンコク知事によって開始された「100万本の木」プロジェクトは、4年間でバンコクに少なくとも100万本の木を植えることを目標としています。大気中の埃を濾過し、より多くの緑と日陰のあるエリアをバンコク市内に作るための「緑の壁」造りを、バンコク市民だけでなく官民の組織も参加しています。
アースデーに合わせて行われたスランゴール州環境局のマングローブ植樹と河川清掃活動のプログラムに参加し、マングローブ植樹を実施しました。この活動は国家的目標として2021年から2025年までの5年間に1億本の植樹を目指すマレーシア緑化プログラムの一環として行われ、生物多様性の改善と森林保存の重要性についての国民の意識を高めることを目的としています。キヤノンオプトマレーシアは、500本のマングローブの木を寄贈し、スランゴール森林局やNGOなどと共同で1,000本のマングローブを植え、1トンのごみを回収しました。
海岸清掃活動を通じて沿岸の汚染問題に取り組み、海洋生態系を保全するための長期的で持続可能なイニシアティブ「Clean Coasts for Tomorrow」を開始しました。ムンバイオフィスの社員と、ムンバイ郊外にあるCIPLが支援している村の子どもたちとともに、ムンバイの有名な観光地であるアクサ・ビーチで清掃活動を行いました。CIPLは、沿岸資源と海洋生態系を保護することの重要性を、特に若者に訴えています。
海軍当局等と協力しプラスチック汚染の影響を受けた海洋生態系の回復、保全をめざし海洋・海岸環境保全・美化の取組みを実施。ナンラム・ビーチで開催した回では、社員ボランティア124名が参加し、2kmにわたる海岸清掃で約100kgの海洋漂着ゴミを回収し、観光客らへの海岸美化の呼びかけや、コーラルリーフ70本の植樹などを行いました。
熱帯雨林の保護・植林・保全に取り組んでいる非営利団体「Rainforest Rescue(レインフォレスト・レスキュー)」のシルバーパートナーとして、クイーンズランド州モスマンにあるデインツリー国立公園の森林への植林を定期的に支援しています。
© Jasmine Carey
地域社会、教育、環境などよりよき未来を目指す団体を支援する「キヤノン助成金プログラム」を17年間にわたり実施しています。2023年度の環境部門の受賞者は、オーストラリア・タスマニア州ホバートの水路に生息する絶対危惧種のカモノハシを保護・保全している「Hobart Rivulet Platypus」と、ニュージーランド・タウランガ港地域のホオジロザメの赤ちゃんと幼魚に衛星タグを配備するプロジェクトを実施している「Sustainable Oceans Society」です。キヤノンは両団体に助成金とカメラ機材を提供しました。
原生植生と野生生物の自然再生を目指す生態系再生プロジェクト「Hinewai Reserve(ヒネワイ保護区)」を支援してます。このプロジェクトでは、原生林を含む農地を購入し、外来性の高い植物を除去して原生植物を繁茂させています。キヤノンニュージーランドは、農地全体の20%に相当する154クレジットを購入することで、支援しています。在来植物と在来植物を支える土壌は、農地よりもはるかに多くの二酸化炭素を吸収します。生物多様性を回復させることは、生命を支える生態系サービスの共益も回復することができます(例:地元町村の飲料水をきれいにし、土壌浸食を減らし、在来昆虫や鳥の生息地を創出する)。
© M. Klajban
2022年12月の生物多様性条約第15回締約国会議(CBD・COP15)において、愛知目標に代わる新たな世界目標として、昆明・モントリオール生物多様性枠組が採択され、今後これを踏まえ、国内においては、環境省を中心に、次期生物多様性国家戦略の策定に向けた議論が行われ決定される予定です。
キヤノンバードブランチプロジェクト バードコラム 鳥が教えてくれること Vol.7
「COP10から10年 新たなる目標は」 2022年11月更新
キヤノン本社の「下丸子の森」は約1,000本の樹木が生い茂り、都市部における重要な生息地となっています。
環境省は2022年にカナダモントリオールで開催されたCOP15(生物多様性条約第15回締約国会議)で採択された世界目標「30by30」※1における日本の取り組みとして、生物多様性保全が図られている区域を「自然共生サイト」※2として認定する実証事業を進めています。今回、「下丸子の森」が「自然共生サイト」に認定されました。キヤノンは環境省と有志の企業や自治体などによって発足した「生物多様性のための30by30アライアンス※3」にも参画しており、生物多様性保全を進めていきます。
※1 生物多様性のため2030年までに各国の陸と海のそれぞれ30%以上の面積を保全する世界目標
※2
環境省により、企業、団体、自治体等によって生物多様性の保全が図られている区域を認定する仕組み
※3 30by30目標達成のための各種施策を実効的に進めていくための有志連合