FRONT RUNNER Environmental Documentary

Vol.2 掲載日:2019年7月30日

日々進化するトナーカートリッジリサイクルプログラム

資源の使い捨てをやめ、有効に利用したい。
プラスチックリサイクルという世の中の課題に対し、キヤノンはトナーカートリッジの自動リサイクル装置の導入など、先進的な取り組みを行っています。ここでは、トナーカートリッジのリサイクルを支え、さらなる進化を目指す4人を紹介します。

01

理想のプラスチックリサイクルを追求

資源循環という世界的なニーズに応えていきます。

キヤノンは、他社に先駆けてトナーカートリッジリサイクルプログラムを開始しました。このプログラムを統括している企画部門の千葉建彦に、プログラムの成り立ちを含めた全体像と今後の展望を聞きました。

世界に広がるトナーカートリッジリサイクルプログラム

「キヤノンは、自ら回収しリサイクルするトナーカートリッジリサイクルプログラムを展開しています。」と話す千葉。
キヤノンでは、1990年にアメリカ、ドイツ、日本の3カ国で世界に先駆けてトナーカートリッジの回収を始めました。現在では世界23カ国に回収の範囲は広がっています。
「各地域で使われたトナーカートリッジを、できるだけ同じ地域でリサイクルするのが最も良いと思っています。それは、環境負荷と輸送コストを同時に削減できますから。」と千葉が話す通り、キヤノンは日本、アメリカ、フランス、中国の4カ所にリサイクル拠点を構え、各消費地でリサイクルを完結できる体制を整えています。

キヤノンが目指す資源循環の詳細はこちら

トナーカートリッジのリサイクル拠点

トナーカートリッジのリサイクル拠点

理想のリサイクルを目指して

一般的に、プラスチックをリサイクルすると、その過程で純度が落ちてしまい、材料としての機能や品質が下がっていきます。そのため、同じ製品に使用することはできず、最後には廃棄されてしまいます(カスケード利用)。
そんななか、キヤノンは、プラスチック材料の機能・品質を下げずに、何度も繰り返し同じ製品に使用するクローズドループリサイクルを実現しています。千葉はこれについて、「一般的にはカスケード利用が主流ですが、私たちは、クローズドループリサイクルこそがプラスチックにとって理想のリサイクルであると考えています。なぜなら、資源として活用できる期間を大きく延ばすことができるからです。」と語ります。
リサイクルが難しいプラスチックですが、製品の設計からリサイクルに配慮し、さらに、リサイクル工場における自社技術を積み重ねることで、理想のリサイクルを追求しているのです。

一般的なプラスチックリサイクル

一般的なプラスチックリサイクル

クローズドループリサイクル

クローズドループリサイクル

資源循環で世界が直面する課題に挑戦

現在のリサイクルプログラムは、キヤノンが長きにわたり革新的なリサイクル技術や新たな回収方法などを追求してきた積み重ねにより成り立っています。
リサイクルの意義について、千葉は以下のように語ります。
「近年、使い捨てプラスチック問題を背景に、資源循環へのニーズが世界的に高まっています。そのなかで、キヤノンの先進的リサイクル技術を活かし、社会の課題に挑戦していくことが私たちの役割であると感じています。」

キヤノン
周辺機器環境企画部
主席 千葉 建彦

キヤノン
周辺機器環境企画部
主席 千葉 建彦

02

お客さまと進めるカートリッジ回収

さまざまな回収方法を用意し、1本でも多く回収します。

キヤノンは、1本でも多くトナーカートリッジを回収するために、お客さまのニーズに合わせてさまざまな回収方法を生み出しました。日本でのトナーカートリッジ回収を支える、キヤノンマーケティングジャパンの斉藤雅也に、運営面での工夫を聞きました。

お客さまに合わせた回収を

「私たちは、お客さまがご利用になったトナーカートリッジを回収し、キヤノンの国内リサイクル工場まで届ける役割を担っています。」と話すのは日本での回収オペレーションを統括しているキヤノンマーケティングジャパンの斉藤です。
キヤノンは、使用済みトナーカートリッジを資源として回収しています。
回収を始めた当初、日本では集合回収箱による回収のみ。これは、お客さまのもとに回収箱を送って設置してもらい、使用済みカートリッジでいっぱいになったらお客さまから返送してもらうというものです。しかし、一部のオフィスや店舗などのお客さまからは、回収箱の置き場所に困るといった意見も。
「お客さまがより便利にご利用いただけるよう、1本からでも回収できるような方法も導入しました。」と話す斉藤。今では、後述する納品時同時回収や、ベルマーク財団との連携など、お客さまのニーズに合わせたさまざまな回収方法を実施しています。
「回収プログラムを開始した当初は、一般的に使用済みトナーカートリッジはゴミという認識があり、回収率が低いことが大きな課題でした。しかし、回収プログラムを案内し続けることで、お客さまの意識も高まり、回収本数を順調に増やすことができました。」

回収方法の詳細はこちら

さまざまなトナーカートリッジ回収方法

さまざまなトナーカートリッジ回収方法

効率的な回収のために

回収量が増えてくると、次の課題は、いかに効率よく回収できるかということでした。その一つの答えが、納品時同時回収。これは新品のトナーカートリッジを納品する際に、使用済みトナーカートリッジを引き取り、その配達便を利用して回収するものです。
「納品時に回収することで、配達員が訪問する回数が減るため、物流で発生するCO2を削減できます。さらには、新品のトナーカートリッジが入っていた箱に使用済みのものを入れて運ぶことができるため、新たに回収箱を用意する必要がなく、資材の削減にもつながります。」と斉藤。
物流での無駄をできる限り排除していくことで、回収にかかる環境負荷を削減しています。

従来の配送・回収サービス

従来の配送・回収サービス

納品時同時回収

納品時同時回収

回収活動とともに社会貢献もしていきます

現在では、ただ効率的に回収するだけでなく、ふるさとプロジェクトベルマーク運動といった社会貢献活動との連携も進めています。これは、回収したカートリッジの本数に応じて寄付を行うというもので、多くの人がリサイクルプログラムに参加するきっかけになることを期待しています。
「私たちは、お客さまから回収したトナーカートリッジをリサイクル工場に届ける役割を通じて、このプログラムを支えていきたいと思っています。是非ともこの活動の趣旨にご賛同いただき、今後ともご協力いただければ幸いです。」

キヤノンマーケティングジャパン
プリンティング企画本部
チーフ 斉藤 雅也

キヤノンマーケティングジャパン
プリンティング企画本部
チーフ 斉藤 雅也

03

集めた資源を最大限利用するために

リサイクル技術を高め、より多くの資源をリサイクルします。

トナーカートリッジのクローズドループリサイクルを行うには、非常に高純度の材料を取り出す必要があります。キヤノンがどのように材料を分離し、リサイクルしているか、材料再生技術を担当する上北征祐から話を聞きました。

自動化されたトナーカートリッジリサイクルシステム「CARS-T」

トナーカートリッジには、プラスチック、鉄、アルミなどさまざまな材料が使われており、またプラスチックだけでも数種類が使われています。キヤノンでは、外装に使用されているHIPSというプラスチックを分離・回収するための技術や装置を開発しました。
回収したHIPSは再び新しいトナーカートリッジに利用され、それ以外の分離した材料についても、他用途や熱源として再利用されることで、埋め立てゼロを実現しています。
「回収されたトナーカートリッジは、箱から取り出したのち、機械で破砕されますが、その後、それぞれの材料の特性の違いを利用して分別していきます。」と上北。例えば、磁力を利用して鉄を、渦電流を利用してアルミを分離し、帯電特性の違いを利用してゴムを分離する。
このような複数の技術や工程を組み合わせることで、それぞれの素材に分離することができます。

さまざまな材料が使われている

さまざまな材料が使われている

実際に、こうした技術を結集してつくられたのが、CARS-T(Canon Automated Recycling System for Toner cartridge)という自動リサイクル装置です。この装置は、トナーカートリッジの破砕から、HIPSの分別までを自動で行うことができます。このような自動化により処理量が大幅に増えるとともに、従来よりも効率的なリサイクルを実現しています。

CARS-Tの各処理工程の詳細はこちら(動画)

CARS-T

CARS-T

リサイクルシステムにはまだ改善の余地がある!

「プラスチックのリサイクル工程は、まだまだ改善の余地があると考えています。」と、分離後の残渣を見ながら話しだす上北。
「例えばトナーカートリッジを破砕した後、磁力で鉄を分別しますが、一部HIPSが鉄とくっついたまま一緒に選別されてしまっています。」
理論的には各工程できれいに分離できるはずですが、破砕した後のものの形状や、搬送系での流れ方などによって、除去する方に入ってしまうHIPSもまだ多くあるとのこと。
「分別の精度をさらに上げることで、HIPSの収率を向上し、資源を最大限活用していきたいと考えています。」と上北が話す通り、今キヤノンのリサイクルシステムの進化は続きます。

分離した材料を確認する上北

分離した材料を確認する上北

より効率的なリサイクルを目指して開発部門とも連携

効率的なリサイクルのためには、分別技術の向上だけではなく、設計段階からリサイクルに配慮することも大切です。
「製品に使われている材料の種類が少なく、また、解体がしやすければ、それだけリサイクルは効率的になります。」と話す上北。新製品の開発部門とリサイクル現場で頻繁に話し合いの場を持ち、リサイクルの課題を開発部門にフィードバックしているとのこと。このような連携が実を結び、実際に使用材料の統一など、リサイクルへの配慮が設計標準に盛り込まれています。
リサイクルシステム、新製品開発の両面からアプローチすることで、プラスチックリサイクルの精度を維持し、クローズドループリサイクルを実現できていることが分かりました。

キヤノン
カートリッジ量産技術統括センター
課長代理 上北 征祐

キヤノン
カートリッジ量産技術統括センター
課長代理 上北 征祐

04

クリーン&サイレントな工場を目指して

新たなコンセプトでリサイクル工場のイメージを覆します。

国内で回収されたトナーカートリッジは、茨城県にあるキヤノンエコテクノパークでリサイクルされています。この工場は2018年にリニューアルされましたが、その際、理想の工場とは何かを改めて議論し、「クリーン&サイレント」というコンセプトが作られました。このコンセプトのもと、理想の工場を追求し続けるキヤノンエコロジーインダストリー製造部の堀江浩に聞きました。

※キヤノンエコロジーインダストリー株式会社は、キヤノンエコテクノパークでリサイクル事業を行っています。

最先端のリサイクル工場 キヤノンエコテクノパーク

「ここは、使用済みキヤノン製品のリサイクルとリユースを行っている日本で唯一の拠点です。」
キヤノンエコテクノパークは、使用済み製品からより多くの資源を取り出し、循環利用し続けることで、資源生産性の最大化を追求する工場です。
2018年には、リサイクル工程の見学ルートを整備し、リサイクルの原理や仕組みなどを学べるショールームもオープンしました。このエコテクノパークには、地元の小学生をはじめとした多くの方々が見学に訪れています。

キヤノンエコテクノパーク

キヤノンエコテクノパーク

理想の工場を目指して

「トナーカートリッジのリサイクル工場は、トナーが少しくらい飛散していても仕方がない、破砕時に音が出るのは当たり前だ、と考えられていました。しかしそれを受け入れては理想の工場は実現しない、とクリーン&サイレントを追求し続けました。」と堀江。
一番トナーが飛散するのは開梱してから破砕工程に投入するまでとのこと。トナーカートリッジを箱から取り出した際、表面にトナーが付着していることが多くありますが、新たにトナー集塵機を設計・導入することで、それらを除去することができました。また、囲いをしたり、振動を抑えた搬送路を組むなど、カートリッジ内部からトナーが飛散するのを防ぐ工夫も随所に加えていきました。このような地道な改善を積み重ねた結果、リサイクル工場でありながら、オフィス並みにクリーンな作業環境を実現できました。
また、特に大きな騒音の原因となっていた破砕機とエアーノズルについては、新たに防音室を設けたり、CARS-Tなどの自動機を導入することによって、人が作業する空間における騒音を可能な限りなくすことができています。

囲いを設置したトナーカートリッジの搬送路

囲いを設置したトナーカートリッジの搬送路

さらなる高みを目指した挑戦

「私たちは日々大量のトナーカートリッジを処理しています。継続的にリサイクルを行うためには、工場での作業環境改善だけでなく、効率を上げることも重要です。」と堀江は言います。
現在、CARS-Tに投入するまでの前工程には、人手で行っている部分もありますが、今後はこれらについても自動化を進め、リサイクル工程全体の効率化を図っていく予定です。

キヤノンエコロジーインダストリー
第二製造部
部長 堀江 浩

キヤノンエコロジーインダストリー
第二製造部
部長 堀江 浩

製品の開発から生産、回収、さらに再生までリサイクルの輪をつなぐクローズドループリサイクル。それぞれのプレイヤーが地道な努力を積み重ねることで、この高度なリサイクルは実現しています。
キヤノンは、これからも限りある資源の有効活用を進め、資源循環型社会の構築に貢献していきます。