近年、気候変動が原因とみられる異常気象によって、自然災害が世界中で増加しています。なかでも、台風やハリケーン、集中豪雨、干ばつ、熱波などは、人々の生活に甚大な被害を及ぼします。キヤノンは、こうした気候変動の主な原因とみられるCO2の排出削減に向け、製品の省エネルギー化をはじめ、オフィスや工場での省エネ、物流の効率化など、製品のライフサイクル(一生)全体で取り組んでいます。
キヤノンは、お客さまが製品を使用することで発生するCO2を減らすために、省エネルギーな製品の設計を心掛けています。
例えば、オフィス向けの複合機やレーザープリンターなどの製品には、独自の省エネルギー技術を採用しています。なかでも、オンデマンド定着技術やIH(Induction Heating)定着技術は、製品稼働時の消費電力削減に貢献しています。さらに、より低い温度で定着できる低融点トナーを新製品に搭載するなど、省エネルギー製品の拡大に向けた技術革新を続けています。
オフィス機器の省エネルギー技術により、2008年から2018年までの累積で43,283GWhの省エネルギー効果を実現しています。これは、20,762千tのCO2削減に相当します。
※対象製品:電子写真方式のオフィス向け複合機とレーザープリンター(プロダクションプリンターは除外)
※詳細な算定条件についてはサステナビリティレポートをご参照ください
imageRUNNER ADVANCE C5550F Ⅲ シリーズ
Satera MF521dw
オフィス向け複合機「imageRUNNER ADVANCE Gen3 3rd Edition」では、スリープモードから自動復帰する人感センサーを搭載し、スリープ復帰にかかる待ち時間を短縮するなど、業務の効率化に貢献しています。
一方、「imageRUNNER ADVANCE C5550F Ⅲ」は、オンデマンド定着技術や新開発のメインコントローラー、溶融特性の最適化を図った新開発のトナーなど、省エネルギー設計を推進。従来機種の「imageRUNNER ADVANCE C5250F」と比較して、使用時のCO2排出量をおよそ47%削減し、製品機能の向上とCO2削減を両立しています。
また、A4モノクロレーザー複合機「Satera MF521dw」では、スリープモードからの復帰時間が4秒以下と従来機種「Satera MF511dw」に比べて約50%短縮。業務の効率化に寄与するとともに、TEC値※についても約17%の低減を図っています。
※TEC値:概念的1週間にプリンターを使用した場合の消費電力量を想定した環境基準値。
超音波診断装置Xario g-series「Xario 200G」(左)「Xario 100G」(右)
キヤノンメディカルシステムズの新しい超音波診断装置「Xario g-series」は、キヤノン独自の高画質に加え、わずか2秒の高速自動起動や最大連続8時間使用を可能とするバッテリー、ワイヤレスタイプのECG電極やフットスイッチの新採用などにより機動性を高めました。さらに、「Xario 200G」(2018年4月発売)では従来製品に比べて消費電力を29%削減。医療現場の質の向上を図るとともに、環境にも貢献しています。
キヤノンは、自社の事業拠点が稼働することによって発生するCO2の削減にも徹底的に取り組んでいます。使用する電力のきめ細かい管理や省エネルギー診断などをグループ横断で行うことで、エネルギーをより効率良く使えるようにしています。
2018年の事業拠点における温室効果ガス排出量は、国内外の事業拠点における徹底した省エネ活動により、1,126千t-CO2となり、前年より12千t-CO2の削減となりました。
※2017年からキヤノンメディカルシステムズの実績を追加しています。
※詳細な算定条件についてはサステナビリティレポートをご参照ください。
キヤノンでは、2014年に「エネルギーコスト削減WG」を立ち上げ、全社横断的な体制のもとで使用エネルギー削減活動を推進してきました。5ゲン主義(現場・現物・現実・原理・原則)をキーワードに、各拠点の生産装置が必要とする条件を徹底的に見直し、過剰な圧縮空気や生産冷却水、空調などを最適化することにより、使用するエネルギーの削減を図っています。また、有効な取り組みについては、国内外の生産拠点への水平展開を推進しています。さらに、本社の専門部署の担当者が国内外の生産拠点ならびにサプライヤーを訪問して、省エネルギー診断を実施。診断によって設備の稼働状況や条件設定を把握したうえで、設備機器の運転効率の改善、現場教育を実践しています。これらの取り組みの結果、活動開始から4年間で、グループ全体で95,650KL(原油換算)のエネルギー削減を達成しています。
キヤノンは2020年末時点で、国内拠点で300MWh以上、海外拠点では85,000MWh以上の再生可能エネルギーの活用をめざしています。現在は地域ごとの普及状況やその経済性などを考慮し、特に欧州を中心に、再生可能エネルギーの活用を進めています。
地域に適した取り組みの推進により、2018年の再生可能エネルギーの使用量は、90,087MWhとなり、2017年と比較して、約1,100MWh増加しました。
欧州では、使用エネルギー全体に占める再生可能エネルギーの割合は約30%となっています。また、使用エネルギーの約35%を電力が占め、このうち、再生可能エネルギー由来の電力が占める割合は約82%に達しています。
キヤノンは物流によって排出されるCO2の削減に向けて、より環境負荷の低い輸送モードを活用するモーダルシフト、製品・梱包の小型化による積載効率の向上、生産拠点からの直送や輸送ルートの変更、物流センターの集約などによる輸送距離の短縮に取り組んでいます。
モーダルシフトの取り組みは、産業機器の分野にも及びます。例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)露光装置の部品に関しては、振動や熱による影響といった課題を乗り越え、従来のトラック輸送から鉄道輸送に切り替えました。これにより、物流に伴って発生するCO2を大幅に削減しています。
従来は片荷で輸送されていた海上コンテナを往復で利用する「コンテナラウンドユース」を積極的に行うことで、物流のさらなる効率化を図っています。キヤノングループ内でコンテナを往復利用するほか、他の事業者が輸入したコンテナをキヤノンが輸出に利用するなど、船会社、コンテナ輸送業者とも連携しながら取り組みを拡大しています。また、ベトナムをはじめ海外拠点においても取り組みが進展しています。
気候変動による影響を可能な限り小さくするためには、CO2をはじめとする温室効果ガスを削減する「緩和策」が重要ですが、緩和を実施しても温暖化の影響が回避できない場合に備える「適応策」についても同時に対策を進める必要があります。
ネットワークカメラをはじめとするキヤノン製品は、異常気象などによる各地での災害リスクの低減に貢献しています。
台湾では、毎年強力な台風や豪雨による洪水によって、農作物への被害などが発生していることから、「Hydrological Conditions Instant Video Surveillance System」が導入されました。これは、南西海岸線エリアに設置した監視カメラが洪水警戒レベルを観測すると、自動で緊急アラームを発信するシステムです。
このシステムのために、アクシス社のネットワークカメラ「AXIS 214 PTZ Network Cameras」と「AXIS Camera Station video management software」が台湾内で計150カ所に設置され、水位の変化を360°方位かつ24時間体制で監視することに役立っています。