近年、気候変動が原因とみられる異常気象によって、自然災害が世界中で増加しています。なかでも、台風やハリケーン、集中豪雨、干ばつ、熱波などは、人々の生活に甚大な被害を及ぼします。キヤノンは、こうした気候変動の主な原因とみられるCO2の排出削減に向け、製品の省エネルギー化をはじめ、オフィスや工場での省エネ、物流の効率化など、製品のライフサイクル(一生)全体で取り組んでいます。
キヤノンは、お客さまが製品を使用することで発生するCO2を減らすために、省エネルギーな製品の設計を心掛けています。
例えば、オフィス向けの複合機やレーザープリンターなどの製品には、独自の省エネルギー技術を採用しています。なかでも、オンデマンド定着技術やIH(Induction Heating)定着技術は、製品稼働時の消費電力削減に貢献しています。さらに、より低い温度で定着できる低融点トナーを新製品に搭載するなど、省エネルギー製品の拡大に向けた技術革新を続けています。
オフィス機器の省エネルギー技術は、2008年から2019年までの累計で49,858GWhの省エネルギー効果を生み出しています。これにより、23,593千t-CO2の削減貢献が期待されます。
※対象製品:電子写真方式のオフィス向け複合機とレーザープリンター(プロダクションプリンターは除外)
※詳細な算定条件についてはサステナビリティレポートをご参照ください
imageRUNNER ADVANCE C5500F Ⅲ シリーズ
Satera LBP162/161
オフィス向け複合機「imageRUNNER ADVANCE Gen3 3rd Edition」では、スリープモードから自動復帰する人感センサーを搭載し、スリープ復帰にかかる待ち時間を短縮するなど、業務の効率化に貢献しています。
一方、「imageRUNNER ADVANCE C5550F Ⅲ」は、オンデマンド定着技術や新開発のメインコントローラー、溶融特性の最適化を図った新開発のトナーなど、省エネルギー設計を推進。従来機種の「imageRUNNER ADVANCE C5250F」と比較して、使用時のCO2排出量をおよそ47%削減し、製品機能の向上とCO2削減を両立しています。
また、A4モノクロレーザープリンター「LBP162/161」では、幅371mmのコンパクトサイズで、最小消費電力0.6Wを達成。オフィスの省スペース化に寄与するとともに、ビジネスプリンターのさらなる省電力化を実現しています。
※TEC値:概念的1週間にプリンターを使用した場合の消費電力量を想定した環境基準値。
MRIシステム Vantage Orian
キヤノンメディカルシステムズの 新しいMRIシステム「Vantage Orian」は、同等クラスで最小の設置スペースを実現した大口径の1.5T(テスラ)フラッグシップモデルです。導入場所の選定が容易となるだけでなく、設置に要する時間と工事費用も削減できます。また、検査の合間に装置が自動でスタンバイ状態になることで、待機電力を削減。マグネット冷却システムの最適運転も合わせ、操作者が意識することなくランニングコストの削減を可能にしました。従来機種と比較して年間消費電力を最大34%、ライフサイクルCO2排出量を181t削減するなど、医療現場の質の向上を図るとともに、環境にも大きく貢献しています。
キヤノンは、自社の事業拠点が稼働することによって発生するCO2の削減にも徹底的に取り組んでいます。使用する電力のきめ細かい管理や省エネルギー診断などをグループ横断で行うことで、エネルギーをより効率良く使えるようにしています。
2019年の事業拠点における温室効果ガス排出量は、国内外の事業拠点における徹底した省エネ活動により、1,041千t-CO2となり、前年より50千t-CO2の削減となりました。
※2017年からキヤノンメディカルシステムズの実績を追加しています。
※詳細な算定条件についてはサステナビリティレポートをご参照ください。
キヤノンでは、2014年に「エネルギーコスト削減WG」を立ち上げ、全社横断的な体制のもとで使用エネルギー削減活動を推進してきました。5ゲン主義(現場・現物・現実・原理・原則)をキーワードに、各拠点の生産装置が必要とする条件を徹底的に見直し、過剰な圧縮空気や生産冷却水、空調などを最適化することにより、使用するエネルギーの削減を図っています。また、有効な取り組みについては、国内外の生産拠点への水平展開を推進しています。さらに、本社の専門部署の担当者が国内外の生産拠点ならびにサプライヤーを訪問して、省エネルギー診断を実施。診断によって設備の稼働状況や条件設定を把握したうえで、設備機器の運転効率の改善、現場教育を実践しています。これらの取り組みの結果、活動開始以降、グループ全体で125,390kL(原油換算)のエネルギー削減を達成しています。
キヤノンは、東京ガス株式会社ほか3社※と連携し、大幅な省エネを実現する清原工業団地スマエネ事業を開始。栃木県宇都宮市にある清原工業団地内において、需要状況の異なる複数事業所間で電力と熱(蒸気・温水)を共同利用する内陸型工業団地における日本初の「工場間一体省エネルギー事業」を通じて、単独事業所では実現が難しい、約20%の省エネ・CO2排出量の削減を目指すとともに、レジリエンスの向上を図っています。
※ カルビー株式会社、久光製薬株式会社、東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社
キヤノンは2020年末時点で、国内拠点で300MWh以上、海外拠点では85,000MWh以上の再生可能エネルギーの活用をめざしています。現在は地域ごとの普及状況や経済合理性などを考慮し、特に欧州を中心に、再生可能エネルギーの活用を進めています。
欧州では、使用エネルギーの約33%を占める電力において、約80%が再生可能エネルギー由来となっています。
オランダのキヤノンプロダクションプリンティングでは、地下水の温度差を空調のエネルギー源に利用する「地下水熱利用空調システム」を導入し、地下水の温度差を使って夏季は冷房、冬季は暖房用のエネルギーに活利用しています。
キヤノンは物流によって排出されるCO2の削減に向けて、より環境負荷の低い輸送モードを活用するモーダルシフト、製品・梱包の小型化による積載効率の向上、生産拠点からの直送や輸送ルートの変更、物流センターの集約などによる輸送距離の短縮に取り組んでいます。
従来は片荷で輸送されていた海上コンテナを往復で利用する「コンテナラウンドユース」を積極的に行うことで、物流のさらなる効率化を図っています。キヤノングループ内でコンテナを往復利用するほか、他の事業者が輸入したコンテナをキヤノンが輸出に利用するなど、船会社、コンテナ輸送業者とも連携しながら取り組みを拡大しています。また、ベトナムをはじめ海外拠点においても取り組みが進展しています。
キヤノンUSAは、米国環境保護庁(EPA)が主催するSmartWay Transport Partnership活動※において、輸送中の環境負荷を大幅に低減したことをはじめ、活動に参加する輸送業者の増加に寄与したことなどが評価され、Shipper Category(荷主部門)で「2019 SmartWay® Excellence Award」を受賞しました。
※ 燃費効率の良い車両の導入促進により米国内輸送中の環境負荷の低減を促進する活動。全米の輸送業者・物流業者・荷主約3,700社が参加。
気候変動による影響を可能な限り小さくするためには、CO2をはじめとする温室効果ガスを削減する「緩和策」が重要ですが、緩和を実施しても温暖化の影響が回避できない場合に備える「適応策」についても同時に対策を進める必要があります。
ネットワークカメラをはじめとするキヤノン製品は、異常気象などによる各地での災害リスクの低減に貢献しています。
台湾では、毎年強力な台風や豪雨による洪水によって、農作物への被害などが発生していることから、「Hydrological Conditions Instant Video Surveillance System」が導入されました。これは、南西海岸線エリアに設置した監視カメラが洪水警戒レベルを観測すると、自動で緊急アラームを発信するシステムです。
このシステムのために、アクシス社のネットワークカメラ「AXIS 214 PTZ Network Cameras」と「AXIS Camera Station video management software」が台湾内で計150カ所に設置され、水位の変化を360°方位かつ24時間体制で監視することに役立っています。