東京2020オリンピック・
パラリンピック&55競技

見どころ紹介

フェンシング
オリンピック競技

まず始めに、フェンシングの魅力とはどんなところでしょうか?

フェンシングは1対1の決闘から始まっている格闘技の1つです。繰り広げられる戦いは非常にスピードがあり、どちらが得点したのか、どんな攻防が繰り広げられたのかなど、細かなルールが最初はわかりづらいかもしれませんが、基本的にはすべてルールにのっとって「相手よりも速く突けば勝ち」という単純なものです。

フェンシングには3つの種目があり、それぞれに特徴があります。
・すべての面が有効面であり最も決闘に近い要素を含む「エペ」
・馬の上で斬り合うことからスタートした、フェンシングの中で唯一斬ることのできる「サーブル」
・攻撃に関する優先権があり、頭脳戦が繰り広げられる、ゲーム性が高い「フルーレ」

それぞれの違いや楽しみ方を知ることで、より深く楽しんでいただくことができる競技と言えるのではないでしょうか。また、剣道や柔道が「武士道」を重んじるように、フェンシングには「騎士道」という精神的基盤があります。格闘技とはいえ、ルールにのっとり、相手を重んじる。そういった精神性を重んじる面においても、日本人の方に楽しんでいただける競技ではないかと思います。

「エペ」「サーブル」「フルーレ」の3種目があるとのことですが、具体的にはそれぞれどのような違い、見どころがあるのでしょうか?

歴史的な背景から、日本人にとって最も馴染み深いのはフルーレでしょう。北京2008オリンピックで太田雄貴選手が銀メダルを獲得し、ロンドン2012オリンピックは男子団体で銀メダルを獲得したのがフルーレです。先に攻撃動作に入った選手に攻撃の優先権が与えられ、相手の剣をよけると優先権が移り、すべての面を突けばいいのではなく、有効面も限られています。同時に突いてお互いがポイントを得ることはありませんので審判の判定によって勝敗が決まります。日本では最も競技人口も多く、戦術の駆け引きも魅力の種目です。

次にサーブル。フルーレと同様に攻撃の優先権が与えられますが、馬と馬の上ですれ違う時に斬る決闘をベースとした種目ですので、馬は斬ることができない、つまり上半身だけが有効面になります。スピードや迫力という点では、おそらく最も見どころのある種目と言えるのではないでしょうか。

そしてエペはフェンシングの種目では最もベーシックなものであり、体のどこを突いても得点になり、同時に突けば両者が得点を得る。エペは決闘に最も近い種目です。世界で最も競技人口が多く、初めてフェンシングを見るという方にとっても、非常にわかりやすいのがエペです。

(c)公益社団法人 日本フェンシング協会

オリンピックでメダルを獲得したのは「フルーレ」ですが、近年は「エペ」「サーブル」でも好成績を残しています。日本では種目別にどのような強化が行われているのでしょうか?

そもそも08年まで、フェンシングはオリンピックで日本がメダルを獲得したことがない数少ない競技でした。そこで私たちは、まずメダルを獲ることに重きを置き、男子フルーレを強化し、メダルを獲得することができました。今はそこから進み、フルーレ以外の種目で有望な選手を育てるというのも大きなテーマです。これは一朝一夕でできることではありませんので、フルーレだけでなくエペ、サーブルも海外で実績のあるコーチを招聘し、強化拠点をつくり、若年層から選手強化に励んできた結果、フルーレ以外の種目も花開き始めきました。

特に若い選手の成長は目覚ましく、2017年の世界選手権では、史上初めて世界選手権で2人の日本人選手が同時に表彰台に立つ快挙を成し遂げましたが、その時点で19歳と20歳の選手でした。そしてエペ、サーブルも数多くの国際大会で結果を残しています。フルーレのみならず、多くの種目で世代交代が進んでおり、新しい世代への強化が花開いているということも、これまでの取り組みがある程度明確に実を結び始めている結果と考えています。

(c)公益社団法人 日本フェンシング協会

東京2020オリンピックでは多くの方々がフェンシングを観戦する機会が増えるはずです。その中で、ここに注目すればもっとフェンシングを楽しめるというポイントがあれば教えてください。

フェンシングには個人戦と団体戦があり、同じ種目とはいえ全く別の魅力を備えています。個々の力が強いはずの外国勢が団体戦では自分勝手なプレーで負けてしまうことも多いのですが、日本は団体戦では抜群の力を発揮します。東京2020オリンピックでは、オリンピック史上初めて、男女6種目、すべての団体競技が行われますので、そこですべての種目でのメダル獲得を目標に強化していますし、その可能性は十分にあると思っています。

また、競技の見せ方という面では2017年の8月に太田雄貴が日本フェンシング協会会長に就任したことも大きな変化の1つです。彼自身もトップアスリートとしての視点だけでなく、東京2020オリンピック・パラリンピック誘致にも積極的に関わり、さまざまな目線から新しい発想を持ってフェンシングを盛り上げるために行動しています。実際に全日本選手権においてもすべての種目の決勝戦を一日にまとめてライトアップした会場で実施するなど、新たな試みもスタートしています。「強化」と「普及」という二次元の発想を持って、1人でも多くの方々に足を運んでいただき、生のフェンシングを見ていただきたい。東京2020オリンピックでは多くの子供たちに「あそこに立ちたい」「あのピストに上りたい」と思わせるような魅力的な場所にすることが、我々にとって最大の目標です。不思議なのですが、直接見ると競技の楽しさをすぐに感じることができます。まずは会場に足を運び、剣と剣が交わる音や格闘技としての迫力を体感してほしいですね。

(c)公益社団法人 日本フェンシング協会

協力:日本フェンシング協会 専務理事 宮脇信介様
インタビュアー:田中夕子