東京2020オリンピック・
パラリンピック&55競技

見どころ紹介

近代五種
オリンピック競技

東京2020オリンピックでは、東京スタジアムと隣接する武蔵野の森総合スポーツプラザ(東京都調布市)で行われる近代五種。競技の見所や魅力などを、日本近代五種協会の野上等専務理事と、リオデジャネイロ2016オリンピックで13位になった警視庁の朝長なつ美選手と黒臼昭二監督、ロンドン2012オリンピックに出場した自衛隊体育学校の山中詩乃選手と村上佳宏監督に話してもらった。

近代オリンピックの提唱者であるクーベルタン男爵によって生み出された競技でもある近代五種。「キングオブスポーツ」とも称されるこの競技は、かつては射撃と水泳、フェンシング、馬術、クロスカントリーが1日1種目ずつ行われていたといいますが、現在ではどういう試合形式になっているのですか?

野上 現在では水泳(200メートル自由形)とフェンシング(エペによる1分間一本勝負の総当たり戦)、馬術(貸与馬による障害飛越競技)はそのままですが、北京2008オリンピックのあとからは射撃とランニングを組み合わせたコンバインド種目になり、レーザー銃を使用するようになった現在ではレーザーランと言われる種目になっています。レーザーランは、まず50秒の制限時間内にレーザーピストルで的に5回命中させた後に、800メートルのランに移行。これを4回繰り返します。

会場の都合もあって1日でやるのは難しい場合もありますが、東京2020大会の場合は1日で実施するように努力しています。

競技ルールは日本近代五種協会公式サイトをご覧ください。
http://pentathlon.jp/about_5/

レーザー銃が使用されるようになってからは射撃場でなくても競技が出来るようになり、小中学生から水泳とレーザーランの近代3種などに親しめるようになっていると聞きますが、選手のふたりがこの競技を始めたきっかけは何だったのですか。

朝長 私は近代五種の存在も知らなかったのですが、警察学校の記録会が終わったあとに黒臼監督に声をかけられて。元々水泳と陸上をやっていましたが「中途半端に終わってしまったな」という思いもあったし、オリンピックを狙えると聞いて母親をオリンピックに連れて行くのも親孝行になるかなと思って始めました。
山中 私は高校時代に陸上の長距離をやっていて「やり切った」というのもあったので、自衛隊に入って、所属の部隊の陸上部で楽しみながら走ろうと思っていました。自衛隊体育学校から勧誘されて初めて近代五種という競技を知り、まだ競技人口も少なくてオリンピック出場の可能性もあると思って始めました。

(c)自衛隊体育学校 広報班

どういう基準でスカウトをするのですか。

黒臼 この競技は小さい頃からやっている人はなかなかいません。フェンシングや射撃、馬術はあとから技術を付けられる種目なので、まずは警察学校で水泳や陸上の能力の高さを見ます。警察官は体力も必要なので、記録の良い選手を勧誘しています。
村上 体力種目となると水泳と陸上ですが、自衛隊体育学校の選手は水泳出身が8割で陸上は2割となっています。その中で器用さや適応力などを重視し、今いる選手の母校の先生や、インターハイなどを見に行って情報を得ています。

左:朝長なつ美選手(警視庁) 右:黒臼昭二監督(警視庁)

選手の立場からすると、フェンシングや射撃、馬術をいきなり始めるのは大変ですね。

朝長 私は20歳を越えてから始めました。小さい頃に比べたら体も思うように動かないので習得するのが大変で、最初の1週間は内臓まで疲労してまともに食事が出来ないくらいでした。それに、水泳と陸上をやっていましたが、5種目をこなすとなると体も変わってくるので泳ぎや走りのタイムは落ちてくる。そのバランスを取るのが大変でした。

一番苦労したのはどの種目ですか。

朝長 馬術ですね。練習時間も限られているし、生き物との競技なので自分の思うようにならない。それに毎日馬が違うので何があるか読めないところもあります。
山中 私も馬術が大変で、1~2年ほどは何度も落馬して馬を走らせ、先輩たちの練習の邪魔をしていました。最初のうちは毎日泣いていたけど、元々負けず嫌いなので「恐怖心を乗り越えてこの馬を乗りこなしてみたい」とも思うようになって。今では他の選手を見て「私ならこう乗りこなそう」などと考えるようになりました。

(c)自衛隊体育学校 広報班

競技を経験してわかってきた近代五種の魅力は何ですか。

朝長 水泳とレーザーランは自分との戦いで、フェンシングは人との戦い。馬術は生き物と一緒にやるというそれぞれの魅力があります。練習はきついけど、試合もそれに増してきついので、全種目が終わった時の達成感も大きな魅力です。
山中 近代五種には最後まで何が起こるかわからない面白さがあると思います。やっていると本当にきついけど、「まだいけるんじゃないか」という最後まで諦めない気持ちを捨てなければ絶対に上位に上がっていけるし結果も付いてきます。

左:山中詩乃選手(自衛隊体育学校) 右:村上佳宏監督(自衛隊体育学校)

東京2020オリンピックへ向けての課題は何ですか。

朝長 リオデジャネイロ2016オリンピックの時は、金メダルは遠いと感じましたが、自分が到達できないところではないと感じました。やることも明確になって今年のワールドカップ第1戦では6位になれたけど、無理をしたことで限界が来てしまって今は休んでいる状態です。だから今はとにかく焦らず体作りに取り組むこと。それと、世界のトップ選手はフェンシングが強いので、常に高い勝率を上げられるように地力をつけていきたいと思います。
山中 いまは水泳の強化で最低ラインを上げることに取り組んでいますが、ロンドン2012大会の金メダリストは、フェンシングは私と同レベルでしたが、レーザーランが強くて14位スタートで優勝したので。水泳を少しでもあげることと、フェンシングの勝率をもっと高くするのが課題です。

東京2020の見所を教えてください。

朝長 東京2020の会場は2カ所ですがフェンシングは隣の会場なので、大きな大会ではなかなか出来ない、ひとつのところで競技を一日たっぷりと楽しんでもらえる大会になると思います。その中で金メダルを目指して戦う自分の姿を見てもらいたいのはもちろんですが、ハラハラドキドキした戦いを楽しんでもらえると思います。
山中 近代五種をやっているといっても「何それ?」という人がほとんどなので、東京2020までにはより多くの人に知っていただき、近代五種を応援してくれる人を増やしたいですね。その中で私は最後の最後まで諦めない姿を見せたいです。最終種目のレーザーランで「ウォーッ、すごい!」というところを是非見せたいですね。

(c)自衛隊体育学校 広報班

協力:日本近代五種協会 専務理事 野上等様
朝長なつ美選手(警視庁)、黒臼昭二監督(警視庁)
山中詩乃選手(自衛隊体育学校)、村上佳宏監督(自衛隊体育学校)

インタビュアー:折山 淑美