東京2020オリンピック・
パラリンピック&55競技

見どころ紹介

テコンドー
オリンピック競技

オリンピック競技の格闘技の中でも、華麗な足技が見どころの競技、テコンドー。強豪国というと発祥の地、韓国というイメージがあるが、最近では韓国を脅かす強豪国が続々と登場し、熱い闘いを繰り広げているという。そんなテコンドーを巡る現状や競技の見どころ、注目の日本人選手などについて、全日本テコンドー協会理事でパラテコンドー委員長の高木伸幸氏に聞いた。

東京2020で開催されるテコンドーのルールについて教えてください。

テコンドーは韓国発祥のスポーツで、キョルギ(組手)とプムセ(型)とがあるのですが、東京2020ではキョルギが競技として採用されています。キョルギは8角形のコートの中で行われる対戦競技で、相手に直接攻撃を当てる「フルコンタクト」。パンチや蹴りなどを相手に当てることでポイントが得られ、そのポイント数で競います。選手は頭と胴に電子防具を着けており、一定以上の強さで電子防具に打撃を入れる事でポイントとなります。与えられるポイントは1~5点で、技が難しくなればなるほど得点が高くなるルール。例えば胴へのパンチでは1点ですが、胴への蹴りは2点、上段蹴りなら3点、180度以上回転しての中段蹴りは4点、180度以上回転しての上段蹴りは5点といった具合です。なので、パンチや中段蹴りで点数を積み重ねてきた相手に対し、大技を決めて逆転する、なんていうドラマチックな展開もあります。1Rが2分、3R制で、3Rで勝敗が決まらなければ、ポイント先取で勝利とする延長戦「ゴールデンラウンド」が行われます。KOもまれにありますが、一大会に1~2回くらいでしょうか。

全日本テコンドー協会

東京2020ではどのような形で試合が行われるのでしょうか。

テコンドーは通常の大会では男女各8階級で行われるのですが、オリンピックでは男女各4階級になります。男子は58kg級、68kg級、80kg級、80kg超級。女子は49kg級、57kg級、67kg級、67kg超級です。

テコンドーの強豪国はどこですか?やはり発祥の地である韓国でしょうか。

韓国はやはり昔から強いのですが、最近は韓国に迫る国、脅かす国も出てきました。例えばイランではテコンドーが国技になっているんですが、国内にプロがいて、オリンピックのテコンドーでメダルをとったりすると、国から生涯安定した暮らしを保証されたり、年金をもらえたりするんです。アジアでは中国、台湾、タイ、ヨーロッパではイギリス、フランス、ロシア、イタリア、クロアチア、トルコも強いですね。

これだけ多くの国が強くなりつつあるというのは、他の競技ではなかなか見られない特性だと思います。どういった背景があると思いますか?

テコンドーの特性として、スポーツの後進国であっても比較的強化しやすく、上を狙いやすい競技である、という点があると思います。個人競技ですし、ある程度の広さの場所と胴着、防具があればどこでもできるので、強化するために整える環境や器具が他競技に比べて少なくて済むというところも大きいです。また根底には、オリンピック競技にすべく普及に力を入れてきたIF(世界テコンドー連盟)の努力があります。IFはテコンドーをオリンピックの正式競技にすべく、また正式競技になってからも外されないように、海外に優秀なコーチを派遣して、世界のテコンドーの普及に力を入れてきました。その頃からはだいぶ年月が経ちましたが、当時の普及の努力が奏功して、現状があるのだと思います。

日本人の注目選手について教えてください。

男子58kg級では、鈴木セルヒオ選手です。テコンドーはリーチの長さがものを言うので、軽量級は特にすらりとした選手が多いのですが、鈴木選手もすらりとした背の高い選手です。爽やかなルックスで、普段はすごく大人しい性格なのですが、テコンドーではガラッと雰囲気が変わってとてもアグレッシブな戦いを見せてくれます。

全日本テコンドー協会

鈴木選手は前回のリオ2016出場まであと一歩、というところだったそうですね。

鈴木選手はリオ2016のアジア予選で、あと1回勝てばリオ2016に出場、というところまで行きました。その時の対戦相手は、鈴木選手よりも頭一つ分くらい大きい中国の選手で、鈴木選手は2点差で負けており、そのまま試合が終わりそうな雰囲気でした。しかし鈴木選手は、最後の最後に猛攻を見せて。テコンドーでは相手に攻められて消極的になってしまい、場外に出てしまうと反則となり相手に得点が入ってしまうので、相手選手も反則をとられないように応戦しなければなりません。この時の鈴木選手は相手が下がらざるを得ないくらいの猛攻を見せて、最後で同点に追いついたのです。同点になった瞬間、会場はすごい盛り上がりでした。会場の声援の後押しも受けて本人は延長戦での勝ちを確信していたんですが、そこで隙が出たのか、延長戦で惜しくも負けてしまいました。ただその相手選手は、リオ2016で金メダルをとった選手なんです。あそこで勝てていたら、というのは鈴木選手もきっと考えたと思いますし、その分、次の東京2020にかける想いは強いと思います。

女子選手の注目選手はいますか?

49kg級の山田美諭選手ですね。鈴木選手と山田選手はアジア大会で銅メダルを獲得しているんですが、アジア大会はオリンピックの次くらいに重視している大会なので、今回の成績は東京2020に向けて大きな弾みになったと思います。特に山田選手はその後の反響が大きかったですね。彼女もすらりとしていて手足が長い選手で、お父さんが空手とテコンドーを教えていた関係で、山田選手も早い時期からテコンドーに親しんでいました。彼女はリオ2016の当時、日本代表の最有力候補と言われていたんですが、日本代表選考会で靱帯を負傷してしまい、出場できなかったという悔しい経験をしています。実力は日本の中では敵なしというくらいの選手なので、悔しい経験をしている分、東京2020に向けての想いはより強くなっていると思います。

それからもう一人、日本のトップ選手として注目なのが、57kg級の濱田真由選手。世界選手権でも優勝経験のある選手です。今はケガのために競技を休んでいるんですが、体調が万全になれば、やはり日本のこの階級では頭一つ抜けているなという印象です。

全日本テコンドー協会

東京2020はテコンドーを生で観戦する機会の一つとなりますが、生ならではの見どころはどんなところにありますか?

やはり生観戦とテレビで見るでは迫力が違いますね。海外の重量級の選手らは、近くで見ると闘志、オーラがすごくで、本当に怖いくらいの威圧感を感じます。重量級は一つひとつの蹴りにも迫力があるので、生観戦は格闘技が好きな人も楽しめるのではないでしょうか。基本的に蹴り技の応酬なので、どの蹴りだと何ポイント入る、といった基本的なルールを押さえておくと、より面白く感じられると思います。

東京2020までに、日本でテコンドーを生観戦できる機会はありますか?

2019年9月に、千葉県のポートアリーナでワールドグランプリシリーズという大会が開催されます。大きな世界大会の一つで、日本でテコンドーの世界大会が開催されることは少ないので、貴重な機会だと思います。この大会の見どころの一つが、試合前に行われるデモンストレーションです。かなり派手なことをするので、実はこれを目当てに来る人も少なくありません。例えば、立った人の肩の上に人が乗って、さらにその上に人が乗る、3段タワーを作って、その1番上に乗った人が持っている板を、下から投げ上げられた人が蹴りで割る、なんていうアクロバティックなデモンストレーションもあります。かなり会場も沸くので、一度見ておいて損はないかなと思います。もちろん観戦も近くで見るとその分、迫力が増すので、この機会に多くの人に見てもらえればと思います。

協力:一般社団法人全日本テコンドー協会 理事
パラテコンドー委員長 高木 伸幸様
インタビュアー:横田泉