東京2020オリンピック・
パラリンピック&55競技

見どころ紹介

スペシャルインタビュー
八木かなえ

ウエイトリフティング競技でオリンピック2大会連続出場を果たし、国内では5連覇中と無類の強さを誇る八木かなえ選手。古くから“力の象徴”として競われてきた魅力を「知れば知るほど技術が求められる」と語る。器械体操からの転向、競技への向き合い方、そして東京2020への思いを聞いた。

単純にカッコいいと思いました

―ウエイトリフティングとの出会い、始めるきっかけについて教えてください。

5歳から中学校まで器械体操をやっていたのですが、近所の高校ではウエイトリフティングの部活動が盛んで身近でした。中学生の時のオープンハイスクールで、部活動を見学して単純にカッコいいなと思いました。5歳から器械体操をやっていましたが、単純に自分の体重以上のバーベルを持ち上げているのが凄いなと感じ、自分もやってみたいなと思ったのが最初の出会いです。高校から競技を始める人も多く、皆スタートラインが一緒で、高校からでも全国大会を目指せるというところにも魅力を感じ、高校合格してからすぐに練習に参加させてもらいました。

―競技について教えてください。

体重別の階級で、バーベルを上げた重さを競います。床から一気に頭上に差し上げる「スナッチ」と、一度肩の上に乗せてから、頭上に上げる「クリーン&ジャーク」の2つがあり、それぞれ3回の試技が与えられていて、成功した一番重い重量のトータルで順位を競います。 また試技には1分間の制限時間があり、審判の「降ろせ」の合図が出るまで静止していなければなりません。
競技を始めた頃はやればやるほど記録が伸びていったのですが、ある程度のところにくると、パワーだけでは上がらなくなって、ちょっとしたバーベルの軌道のズレや体のバランスなど、技術が要求されることを知りました。またバーベルを正しく上げるには、上半身だけでなく、下半身のバネが求められるので、器械体操の脚力を使う種目での経験が役立ったと思います。

注目されるのは正直プレッシャーでした

―2年目で早くも世界レベルの国際大会に出場を果たすなど、メディアの注目を集めました。

目の前の1つ1つの大会に必死すぎて、国際大会がどれだけすごい大会かも分からなかったです。地区大会や世界大会だろうが、試合にはいつも同じ気持ちで臨んでいたので、特別に意識することはありませんでした。でも世界の選手は次元が違いすぎて、ライバルとしても見られていない自分がいて、勝ちたいという思いよりも、自分の満足できる試合ができればいいという思いでした。
高校生の頃からメディアの方々に取り上げて頂いたのですが、私自身としてはオリンピック候補と言われるのが、正直プレッシャーでした。全然そのレベルに達していないのは分かっていましたし、そんなに期待されてもなというのが正直な所でした。でも自分が好きな競技ですし、始めた頃は今ほど注目もされていなかったので、メディアに取り上げて頂く事で、結果的に競技の認知度アップに繋がったらという思いでした。

競技人生の財産となった初のオリンピック出場

―初めてのオリンピック出場がロンドン2012でした。

次大会のリオ2016出場を目標にしていたので、私としては運良く代表権を手にすることができて嬉しかったですし、色んな事を吸収したいという思いで出場しました。やはりオリンピックは特別ですね。他競技のトップアスリートがいることは勿論、会場や選手村の雰囲気も独特で、いつもどおりに調整してきたはずなのに、どこか現実離れしていてフワフワした感覚がありました。
私はその空気に飲まれてしまい楽しむ余裕こそありませんでしたが、ロンドン2012を体験したことで、その後の競技人生の大きな財産になったと思います。

写真:©2012 - IOC/AP/アフロ - All rights reserved London 2012

―リオ2016では女子53kg級で6位に順位を上げました。

ロンドン2012では集中しきれていなかったので、自分自身に集中することを心がけました。
過去の調子の良かった試合の調整方法をおさらいしまして、試合前からしっかりとモチベーションを作ることができました。あとは食事面ですかね。リオ2016では日本チーム専用の食堂を用意してもらったので、そこを良く利用していました。普段どおりの食事を取れたのは良かったですね。
試合前はすぐエネルギーになるおにぎりなどを食べていました。

写真:©2016 - IOC/AP/アフロ - All rights reserved Rio 2016

―試合前にはどの様にして集中を高めていますか?

私は特別なことはしません。試合前にやるべきことを淡々とやるだけです。バーベルを握ったらその時点で集中できるので、あまり早くからではなく、徐々に高めていきます。
なるべく他の選手の試技は見ないように、一点を見つめる感じですね。どんな重量でも「絶対に挙がる」と自分に言い聞かせています。

―2018年11月の国際大会から新階級の55kgに上げています。2kgの増量は?

体重を増やすだけならば簡単ですが、その2kgを筋肉に変えるのがかなり大変です。
食事面だけでなく、トレーニングもかなりタフでした。
昨年9月の世界選手権(タイ)では13位でしたが、ここ最近では良い記録(トータル195kg)が出せて、今まで触れていなかった重量にもチャレンジできたので、収穫の多い大会でした。現状でのスナッチベストは86kg(練習では87)、ジャークが112kgのトータル198kgです。この重量になると1kgを刻むのが難しくなってきます。

―現在、国内では5連覇中と敵なしです。

後輩たちが強くなってきていて、うかうかしていられないなと。だから全日本でも少しでも気を抜くことができません。でも後輩が力をつけているからこそ、自分も負けられないぞというモチベーションにもなっています。現段階では東京2020への出場をかけた選考となる国際大会がメインですけども、国内大会も出るからには負けられないという気持ちで臨んでいます。国内大会は記録よりも優勝にこだわります。

あまり意識しすぎないように目の前の事に集中したい

―3度目のオリンピックとなる東京2020に向けては

出たいという思いはどのオリンピックよりも強いですが、同時に一番難しい大会でもあります。
代表権争いはトータル200kgが1つのラインとなってくると思います。どっちもベストを出さないといけない数字です。
でもあまり東京2020の事は意識しすぎずに、出来る事を1つずつやっていけば、おのずと道は見えてくるのかなと思っています。

―八木選手にとってオリンピックとは?

日ごろ支えて下さり、応援して下さる方々に一番恩返しが出来る舞台です。
その為に、練習を重ねて、国内大会や国際大会で結果を重ねてやっとたどり着く場所。厳しい競争を勝ち抜いたごく一部の選手しかそこには立てませんが、やはりアスリートであれば、誰もが目指す特別な場所だと思います。

バーベルに向き合う姿勢を見て欲しい

―東京2020で注目してもらいたいところはありますか?

選手は与えられた1分間の試技に全てをかけているので、そのバーベルに向かう姿勢でしょうか。
細かいルールが分からなくても、バーベルが上がるかどうかの緊張感や、各選手がそれぞれの思いでバーベルに向き合っているので、そういう部分を見ていると面白いと思います。たった1kgの差で結果が決まるシビアな競技なので、そういう駆け引きにも注目してもらいたいです。

―ファンの方へメッセージをお願いします。

温かい応援にいつも感謝しています。学生の方から憧れと言ってくださるのが嬉しく、もっと頑張らなければと、励みにしています。
あと2つ東京2020への出場をかけた選考大会はあって、今は4月のアジア選手権で195kg以上を出すことを目標に練習を重ねています。皆様の期待に応えるべく精一杯頑張りますので、これからも応援を宜しくお願いいたします。

インタビュアー:小笠原大介