東京2020オリンピック・
パラリンピック&55競技

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スペシャルインタビュー
落合知也

東京2020の新種目として注目度が上がっている3x3 バスケットボール。そのパイオニアである落合知也選手は、5人制バスケで高校、大学と強豪校に進学。その後一度はバスケを離れてモデルとして活動した後、3x3 バスケットボールの道に進むという、異色の経歴の持ち主でもある。そんな落合選手に、自身の経歴や3x3 バスケットボールに魅了されたきっかけ、東京2020オリンピックへの思いなどを聞いた。

初めての試合で100点以上の差をつけられて大敗

―落合選手は学生時代から5人制バスケットボールの選手として活躍されていましたが、バスケットボールを始めたきっかけを教えてください。

 僕はもともと野球が大好きで、小学校3年生の時に野球部に仮入部していたんです。そんなある時に、学校で下駄箱をのぞいたら、手紙が入っていて。ラブレターかと思って期待して開けてみたら、クラスの男の子からの「この日にミニバスケットボールの練習があるので、ぜひ来てください」っていう誘いの手紙で、とてもがっかりしたのを覚えています(笑)。僕は当時から身長が高かったので、それで声をかけたんだと思います。その子は当時、さほど仲の良い子ではなかったので、手紙で誘ってくれたのでしょうね。

 そういう誘い方が印象に残っていたのもあって、実際にミニバスケの練習に行ってみたら、すごく楽しくて。監督から次の週に試合があるから来て欲しいと言われて、行ってみたら、まだルールも知らないのにいきなりスタメンのレギュラーに入っていました(笑)。当時、僕のいたチームは弱くて、相手チームはけっこう強いチームだったんです。結果は、100点以上も差をつけられての大敗でした。僕はその試合で、まぐれで1本だけシュートを入れる事ができたのですが、それがすごく嬉しかったのと、一方で大敗してすごく悔しかったことから、「もっと上手くなりたい」と思い、バスケを始めることにしました。

―小学校でバスケを始めて、高校は茨城県の強豪高校、大学も関東一部リーグの強豪大学に進学されました。大学ではインカレ準優勝という実績も残していますが、その後、バスケを離れる決断をされています。その理由は何だったのでしょうか。

 大学までほとんど推薦で進学して、チームにも恵まれて、自分だけの力ではないのですが、順調に進んでいるなという手応えはありました。そんな中で大学卒業後、バスケを離れる決断をしたのは、自分の中でバスケ熱が冷めてしまった部分があったためです。部活を続ける中で、自分のやりたいことを見失ってしまい、どこかやらされているような感覚になっていました。大学4年生の時には実業団やプロチームから声をかけて頂いたのですが、「この冷めた状態で入っても活躍できないんじゃないか」という気持ちがあり、一度バスケから離れることを決めました。

―大学卒業後はモデルとして活動を始め、その後、3x3 バスケットボール(以下、3x3)の道へと進んでいますが、その経緯はどのようなものだったのでしょうか。

 姉がモデルとして活動していたので、僕も芸能界に憧れを抱くようになって、挑戦したいという気持ちがわきました。とはいえ、始めた当時はそれだけでは食べていけなかったので、アルバイト生活でした。そんな中で、1つ年上の先輩から「バスケを本格的にやらないなら、ストリートボール(=ストリートバスケ)をやってみないか」と声をかけていただいて、「UNDERDOG」というストリートボールのチームに所属することになりました。当時はアルバイトや仕事のない時に体を動かす程度にやろうかな、というくらいで、そこまで高いモチベーションで始めたわけではありませんでした。

「甘く見ていた」3x3が与えた衝撃

―実際に3x3を始めてみて、競技の印象はいかがでしたか。

 実は正直、最初は少し甘く見ていたところがあったんです。自分は大学までバスケ漬けだっただけに、ストリートの選手は名前も知らない選手ばかりだし、たぶん部活もそこまで突き詰めていないだろうし……と上から目線で見ていました。それが実際に入ってみたら全く違っていて。みんなアルバイトや仕事に就きながら、その合間を縫って夜や早朝に集まってワークアウトや練習をしていて。そうした環境の中でも、プロのバスケ選手にも勝るほどの高い意識や、バスケに対する熱い思いを持った選手ばかりでした。

 例えば、ストリートボールはイベントに出て観客の前で試合をすることがあるのですが、ほとんどの場合、ギャラは交通費程度しか出ないんです。そんな、決して恵まれた環境でなくても、選手は観客の前では当然のようにプロフェッショナルとして振る舞うんです。そこに立つまでの努力や準備も目の当たりにしているので、すごく刺激を受けましたし、新しい世界に出会えたような気がしました。ストリートボールを通じて、バスケを始めた頃のような、バスケが楽しいという感覚を得ることができました。

―改めて、3x3と5人制バスケの違いや魅力について教えてください。

 3x3のチームは4人、コートに立つのは3人で、試合の中で適宜、選手交代をしていきます。ハーフコートでリングが1つ、そこに2チームが攻め込むので、必然的にスピーディーな攻防が繰り広げられます。また、5人制は10分×4の40分制ですが、3x3は10分×1。さらに5人制はボールを持ってから24秒以内にシュートしなければならないんですが、3x3ではそれが12秒。なので、サインを出したりする間もなく攻め込まなければならないんです。また5人制では点を決めた後、一度ボールを外に出してから試合を再開しますが、3x3では得点後もボールを受け取ったらそのまま試合が始まるので、攻守の切り替えもスピーディーです。

 加えて時間にかかわらず、どちらかが21点を取ると「ノックアウト」となり、試合終了となります。国内リーグの7割くらいがノックアウトで試合が決しているという統計もあるので、10分以内に勝負が決することが多い印象です。こうした独特なルールがあるので、とにかく目が離せない。展開の速さが大きな魅力ですね。得点も5人制とは違っていて、5人制の3ポイントラインが2ポイントラインで、その外側から入れると2点、内側からなら1点が入ります。21点間近になった試合終盤、2点を狙うのか、1点を狙うのかといった駆け引きも、3x3ならではの楽しめるポイントだと思います。

写真:森田直樹/アフロスポーツ

―5人制とは異なる部分が多い分、選手に求められる能力も、5人制と3x3では違ってきますか。

 5人制では、「点取り屋」がいたり、「司令塔」がいたり、「ゴール下の番人」がいたりと、それぞれに役割があって、それにともなった戦略があるんですが、3x3は色んな事ができるオールラウンダーが求められます。司令塔もできて、点も取れて、ゴール下も守れる、そういう選手が世界のトレンドにもなってきています。試合中は作戦を指示する監督もいないので、選手交代やタイムアウトのタイミングなども含めて、あらゆる判断を自分たちでしなければいけません。そのため、頭は冷静なまま、心は熱くなれるというのも必要な資質だと思います。

―ご自身の3x3の選手としての強みはどんなところにあると思いますか。

 外のシュートが得意であることや、サイズが大きいというところもあるんですが、気持ちを全面に出すところが自分の強みかなと思います。海外の大きくて上手い選手と対峙してもそれに負けない気持ちの強さを出してこられたことが、自分がここまでやってこられた要因だと思っています。5人制の時は体を張った泥臭いプレーが多くて、自分で点を決めることはあまりなかったんですが、3x3でどう観客を盛り上げるか、チームを勝ちに導くかを考えた時に、もっと点をとらなきゃいけないというのは改めて感じました。点を決めて、観客が沸いてくれることの快感も覚えたので、得点力に関しては5人制の時と比べてかなり養われましたね。

写真:長田洋平/アフロスポーツ

虫をよけながらの試合、デコボコなコート…タフな海外遠征

―スピーディーな展開だと、5人制以上に選手間の意思の疎通や連携が重要になってくるように思えます。そういったチームワークは、どのように養われるのでしょうか。

 もちろん練習で培われる部分もありますが、僕自身は海外遠征などで苦楽をともにすることで生まれる部分も大きいのかなと思っています。去年、プロサーキットと言われる海外の世界一決定戦に参戦して、9月から10月まで毎週、色んな国で試合をしてきたんですが、海外遠征はすごくタフで。フライトが遅れたり、食事や場所が整っていなかったりと、とにかく色んな事が起こるんですが、そういったオフコートでの時間を共にして、アクシデントを乗り越えていくことも、4人の絆を深めていくのに大切だなと感じています。チーム4人でのコミュニケーションを普段から心がけないと良いチームは作れないというのは、今までの経験上感じていますね。

―これまでの海外遠征で、特に大変だと感じたのはどんなことですか。

 以前、アジアの山奥で試合をしたことがあったんですが、そこはストリートボールの大会で訪れる以外は、激流を下るラフティングをする人しか来ないような場所でした。なので、観客がラフティングの順番待ちをしている人だけなんです(笑)。夜も真っ暗なので試合の時にはライトをつけるんですが、そのライトにすごい数の虫が寄ってきてしまって。大きな虫をよけながら試合をしなければいけない状態でした。ホテルも空調が効かないし、食事もすごく辛い料理ばかり。僕らは平気だったんですが、ヨーロッパの選手は苦戦していましたね。

 遠征ではそういったことが多いですし、試合環境も様々です。デコボコしたコートや、坂道に作られた傾いたコートもありますし、カタールではビーチサイドのコートで、シュートが曲がってしまうほど強い海風の中で試合をすることもありました。でも、それに対して世界各国から集まる選手は全く文句も言わず、すごくタフに戦い続けるんです。自分も経験を積む中で、そういうものなんだ、と学ぶ事が出来ました。東京2020では会場の環境は整っていると思うんですが、そういうタフさを身につけていかないと、世界と戦っていくのは難しいなと感じています。

写真:長田洋平/アフロスポーツ

東京2020は「特別な場所」

―東京2020で日本のライバルとなるのは、どこでしょうか。

 今、ダントツに強いのはセルビアで、ロシアもいい選手を多く抱えています。セルビアはみんなサイズが大きくて、シュートも上手い。世界のトレンドでもあるオールラウンダーの能力を全員が兼ね備えている、パーフェクトなチームという印象です。ヨーロッパにはそういった身長2メートル級のオールラウンダーが多くいて、NBAで活躍する選手も増えてきていて存在感を強めていますね。

―落合選手にとってオリンピックとはどんな舞台ですか。

 ごく一部のトップアスリートしか出場できない場所なので、その舞台に立つだけでも誇りに思えるような場所だと思います。そのチャンスが今、目の前にあって、なおかつ自国開催なんて、そんなこと滅多にないことだと思うので。絶対にその場所に立ちたい、特別な場所ですね。

インタビュアー:横田泉