PHOTOGRAPHER INTERVIEW

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INTERVIEW02 長岡洋幸

歴史的勝利の瞬間を収めた決定的な1枚

長岡洋幸氏のベストショット
1/200sec F4.0 ISO1250 ©JRFU,2015
撮影機材

EOS-1D X, EF24-105mm F4L IS USM

「南アフリカ代表に勝った直後の写真です。勝利の瞬間、僕は全く感動できなかった。日本代表のオフィシャルフォトグラファーとして、今、その場で何を撮影しなければならないのか、その緊張でとても感動している場合ではなかった」

PROFILE

長岡洋幸(ながおか・ひろゆき)

長岡洋幸

1965年三重県鈴鹿市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、フリーランスの写真家として活動。2002年より日本ラグビーフットボール協会オフィシャルフォトグラファー。現在はスーパーラグビー・サンウルブズ及び日野自動車レッドドルフィンズのオフィシャルも兼ねて、ラグビーW杯など、国内外の様々な大会を撮影。一方で、チベットの人、文化、風景を1987年より30年間にわたり撮影。その方面でも写真集、単行本、写真展等幅広く活躍。

日本ラグビー協会のオフィシャルフォトグラファーを務める長岡洋幸氏は、通算3大会のラグビーワールドカップの撮影を経験。2015年イングランド大会では、日本代表が過去2回優勝の南アフリカ代表を下した歴史的一戦も撮影した。この試合では直前に行った交渉が、決定的シーンの撮影を後押しした。

長岡さんは、4年に1度のワールドカップを過去3大会、現地撮影しておられます。

「ラグビージャーナリストの村上晃一さんの紹介で日本ラグビー協会のオフィシャルの仕事を任せてもらうようになったのが2002年。その後、ワールドカップの日本招致への機運が高まったことで、2007年フランス大会から撮影することになり、2011年ニュージーランド大会、2015年イングランド大会と通算3大会、これまでに撮影しています」

「2015年イングランド大会時は、日本ラグビー協会と同時にワールドカップ日本大会組織委員会のオフィシャルフォトグラファーも務めていました。特に2019年の日本大会開催が決まった後のニュージーランド大会以降は、日本代表以外の試合も数多く撮影しました。今後の大会のプロモーションのためには、ワールドカップ全体の写真も必要になったためです。いまはラグビーワールドカップ2019TM日本大会の各試合会場も決まったので、それぞれの自治体は迎え入れるチームの試合写真をポスターなどに使用することになると思います」

ワールドカップが始まると、多くの機材を抱えて開催国を周っていくことになります。

「イングランド大会の開幕戦の時は大変でした。キックオフは現地時間の20時頃で、試合後に日本へ写真を送ったら23時を過ぎている。その時間でも帰りの移動手段くらいはあるだろうと思って外へ出たら、電車が止まっていたのです」

「その後、重い荷物を抱えながらロンドンの中心部へのナイトバスを1時間以上かけて探している道中、大会のボランティアであろう現地の方と出会うことができ、道案内をしてもらえました。周りには他に人がいなかったので、その方がいなかったらどうすればいいかわかりませんでした(笑)」

「ちなみに会場のトゥイッケナムスタジアムはロンドンの少し外れにあって、僕が借りていたアパートもロンドンからスタジアムとは別方向へ離れた場所。結局、バスを2回乗り継いで帰れたのは明け方の3時半。翌日も試合があったため、4時間くらいしか寝られませんでした」

その翌日は、ブライトン・コミュニティスタジアムでの日本代表対南アフリカ代表戦です。この試合に勝利したことで、日本中に“ラグビーブーム”が巻き起こることになりました。

「試合が終わった後、タッチライン際で選手がみんなで喜ぶ写真を撮ったのですが、実はこれには伏線がありました」

長岡洋幸

「ピッチで写真を撮るには大会側が発行するビブスが必要ですが、ビブスには通常とロービングの2種類があります。通常ビブスはゴール裏にしか入れない撮影場所の決まっているもの。ロービングビブスはタッチライン際も動けるものですが、大手のフォトエージェンシーや通信社などに所属する一部のフォトグラファーにしか渡されません。日本ラグビー協会のクレジットで入っている僕も、ロービングビブスは試合によってもらえないこともありました」

「2015年イングランド大会の次はラグビーワールドカップ2019TM日本大会。日本代表の写真はこの先たくさん使うことになると思っていました。そのため、事前に2019組織委員会を通じてワールドラグビーと交渉して、日本代表戦はロービングビブスをもらえる手はずを整えていました。ところが、現地へ行ってみるとそれがうまく伝わっていませんでした」

「この手の問題は海外ではよくあることですし、コミュニティスタジアムのサイドラインは手狭で動きにくそうだったため、ロービングビブスは次戦からもらえるようにしておけばいいかな…とも思ったのですが…」

「僕は当時のエディー・ジョーンズ体制の日本代表が始動した、2012年4月の初日練習も豪雨のなかで撮影し、大会直前の宮崎合宿へも4~5回ほど出向いていました。そんな経緯もあったので、エディージャパンのワールドカップ初戦の国歌斉唱を正面から撮影できないのは、やはり納得ができなかった。そこで、もともともらえるはずだったロービングビブスを入手するために、かなりの時間をかけて交渉を続けた結果、『1枚あまっているけど、欲しいか?』と、もらえることになったのです」

「そして試合の結果はご存知の通りです。ロービングビブスがあったおかげで、歴史的勝利の直後の集合写真をサイドラインから撮れました。この写真はその後、いろいろな媒体で使われることになります」

ワールドカップがこの一戦のような名勝負を生み出す一方、その瞬間を写す機材もどんどん進歩しています。もっと試合の撮影がうまくなりたいというファンの方も多いですが、アドバイスなどはありますか。

「現在使用している『EOS-1D X Mark II』では、ファインダー内の測距点が赤く光る。ナイターや黒いジャージーのチームの試合では、ピントが合っているかわかりやすく助かっています」

「写真の上達方法としては、写真をたくさん見ることがおすすめです。自分がいいと思った写真の真似をしてみてください。その写真のアングル、シャッタースピード、絞り、レンズは何mmを使っているかなど技術面を研究して、さらに雰囲気、テイストを真似できるようになってから自分の撮りたいように撮る、これが一番うまくなる近道だと思います。それとスポーツ写真は、なるべくピッチに近い場所で撮るのがベターです。

ラグビーワールドカップ2019TM日本大会は、あと2年に迫っています。

「ワールドカップは各国代表にとっては集大成の場、フォトグラファーにとっては勝負の場、観る人にとっては滅多に経験できないお祭りの場です。どの会場でも、試合の数十分前まで観客席が埋まらない。お客さんが何をしているのかと言うと、直前まで外でお酒を飲んで楽しんでいるのです。皆さんにはそのお祭りを楽しんでいただきたいですし、盛り上げてもいただきたいです」