仕事と人

契約業務

業務概要

契約業務とは、事業支援、開発支援のためにさまざまな取引先と締結する契約の作成を行う仕事です。“契約”は、会社と会社の間で取り交わされるいわば“約束ごと”であり、あらゆるビジネスのスタートラインや節目において、なくてはならない存在です。キヤノン知財の契約部門では、知的財産が関係する契約を取り扱っており、他社とやり取りする機密情報の取り扱いを定める機密保持契約、開発業務を他社に委託する開発委託契約、大学や研究機関とともに研究を行う共同研究契約、自社のソフトウェアを他社に使用させるためのソフトウェアライセンス契約などについて、契約書案を作成したり、相手方と契約条件を交渉したりします。知財の契約部門には、キヤノンのあらゆる事業部門や開発部門から、年間で3,000件近くの契約作成依頼が申請されます。契約担当者はそれらを1件1件検討し、個々のケースに最適な条件の契約書を作成し、締結することで、キヤノンが事業活動をより円滑に、そして安全に進めるためのサポートをしています。

キヤノンの契約業務

常にビジネスを意識して契約を考える

契約担当者の主な仕事は、契約書の作成や相手方との契約交渉ですが、時には知財的な観点からリスクを考え、事業部門や開発部門に対してビジネスの枠組みや進め方自体に関するアドバイスをすることもあり、事業部門や開発部門と同じ目線に立って仕事をしています。依頼された契約を依頼通りに作成するのではなく、ビジネスのあり方を含めて依頼元部門とともに検討を行うことが契約担当者にとって重要です。

全社視点で俯瞰的に契約を考える

キヤノンの契約業務にはさまざまな特徴があります。まず一つは、キヤノンの事業全体を俯瞰して契約書を作成するということです。キヤノン知財は、社長直轄の本部として事業本部から独立して存在しており、依頼元部門の事業だけでなく、キヤノンの事業全体の動きを意識して契約条件を考えています。たとえば、ある事業部門の契約を検討する際は、その契約内容が、ほかの事業部門が進めようとしているビジネスに影響を及ぼさないか、また、その契約を締結した結果、ほかの事業部門の活動にリスクが生じないかなど、全体最適な視点から契約を考えることが必要です。

契約担当者

将来のリスクを見越して契約を考える

また、将来のリスクを十分考慮して最適な契約条件を提案することを心掛けています。たとえば、ある契約において相手方から機密情報を受領する場合、その機密保持の条件自体に焦点を当てるだけではなく、その情報にアクセスした開発者やその部門が今後どのようなことをやりたいのか、その情報と似たような情報を扱っているほかの部門がある場合に相手方から機密情報の不正利用を疑われるリスクはないかなどを検討します。
会社によっては定型的な契約書の雛形をそのまま利用しているところもあるようですが、キヤノン知財では、一件ごとに、個々のケースに最適な契約書を作成しています。時には、通常の契約書でよく使われる一般的な条件であっても、将来リスクになり得ると判断されるような場合は、安易にそのような条件を受け入れないよう依頼元にアドバイスすることもあります。もちろん、契約の遅延は即ビジネスチャンスの喪失につながりますので、スピード感をもってタイムリーに対応することも強く意識しています。

一日の業務

知財の契約業務は、一日中机に座ってパソコンの画面と向き合いながらひたすらWordに文字を打ち込むイメージがあるかもしれませんが、決してそのようなことはありません。Wordと向き合わなければ契約書は作成できないためそのような時間も多くありますが、日々事業部門や開発部門と会議・交渉・報告を行っています。また、説得力のある契約書の作成や交渉を行ったりするために、開発部門から直接技術や製品の話を訊き、技術説明会にも出席して技術の勉強を行ったりと、さまざまな人との交流があります。

契約業務のやりがい

契約は数年後に世の中に出ていく製品の開発やビジネスのスタートラインに必要な存在です。したがって契約担当者は、数年後の技術や現在開発中の技術に触れながら仕事をしています。技術契約の作成にあたって最初に開発者と打ち合わせをする際には、このような技術があと数年後には世の中に公開されるのか、このビジネスが成功したら、と思うととてもワクワクします。また、開発者の開発・ビジネスを成功させたいという強い意思が伝わってくると、契約担当者としてその気持ちになんとか応えようと契約書の草案や相手との交渉の際に熱が入ります。契約が成立した際に、「知財のおかげで早期に良い条件で合意に達することができました!」と感謝されると、協力できて良かったな、またビジネスの手助けをしたいなと思います。このように将来のビジネスや製品に触れることができること、そして開発の方や事業の方とともに良いビジネスをめざして契約を作り上げることが契約の面白さであり、大きなやりがいとなっています。