仕事と人

特許リエゾン業務

業務概要

[発明ブラッシュアップ会議]
発明者と権利化担当者およびリエゾン担当者が集まる会議です。 この会議では、先行技術を共有した上で、発明の本質や技術思想化の議論、すなわち上位概念化をして特許請求の範囲を定める議論だけでなく、製品実施の可能性や事業への貢献についても議論します。

「リエゾン」はフランス語の“Liaison”が語源で、連絡や調整を意味する言葉です。特許リエゾン業務とは、研究開発部門や事業部門と権利化部門とを「つなぐ」仕事であり、権利化業務と両輪をなす重要な仕事です。
キヤノン知財では技術ごとに担当知財部門があります。各知財部門によってはリエゾン業務を専門とする担当者を置くケースもあれば、一人の担当者がリエゾン業務と権利化業務の両方を行うケースもあります。
リエゾン業務は多岐にわたりますが、代表的なものが「発明発掘活動」です。発明発掘活動では、発明者から発明の元となる「アイデア」や「発明」の説明を受け、これらをブラッシュアップする会議を行います。発明ブラッシュアップ会議では、アイデア・発明の内容、新規性、進歩性、効果の確認、特許出願、権利化方針の議論などを行います。この会議を経た後、発明の特許出願、権利化がなされ、最終的に「特許(権)」が成立します。

[発明ブラッシュアップ会議]
発明者と権利化担当者およびリエゾン担当者が集まる会議です。 この会議では、先行技術を共有した上で、発明の本質や技術思想化の議論、すなわち上位概念化をして特許請求の範囲を定める議論だけでなく、製品実施の可能性や事業への貢献についても議論します。

リエゾン業務のポイント

能動的な発明発掘活動

前述の通りリエゾン担当者の重要な活動の一つが発明ブラッシュアップ会議であり、権利化担当者と一緒に出席して発明者と一体となってアイデアや発明をブラッシュアップしていきます。アイデアが固まっておらず発明にまでいたっていない段階でリエゾン担当者と権利化担当者が一緒に発明者からの相談に乗ることもあります。
リエゾン業務で重要な点は、開発者が意識していなかったアイデアや発明を能動的に発掘することであり、決して発明者からの発明を待つ受動的な業務だけではありません。
たとえば、新しいウェブアプリを開発することになり、その目玉となる新機能に関する発明について開発者から知財部門に相談があった場合、リエゾン担当者は、その新機能に関する発明だけで本当に良いのか探っていきます。たとえば、開発者が新しく設計したものの、当たり前すぎて特許にならないと思っているグラフィカルユーザーインターフェースに、実は素晴らしい発明が隠れているかもしれません。そういったアイデアや発明を知財部門から能動的にヒアリングを行って漏れなく発掘し、開発者と一緒になって発明を創出することがリエゾン業務の重要な仕事です。

知財相談窓口としての対応

リエゾン担当者は、発明ブラッシュアップ会議だけではなく、開発部門や事業部門からの質問や依頼への対応も行っており、両部門にとっては「知財部門の顔・窓口」です。その一例として競合となる他社の特許出願を分析してその会社の今後の方向性や注力しているテーマの考察を行い、自社事業テーマとの共通点や差異を整理することもあります。競合企業の分析だけではなく、その事業テーマに必要となる技術をもっている企業、すなわちオープンイノベーションのパートナー候補となる企業を特許出願の観点からピックアップすることもあります。

リエゾン業務のやりがい

リエゾン担当者は何かあれば真っ先に他部門から相談されるので、特許法だけではなく、事業、製品、技術についても十分な知識を身につけておくことが求められます。また、コミュニケーション能力も必要です。他部門から「知財のことは○○さんに相談しよう。」と思ってもらえるよう、日々心掛けて業務に当たっています。
こうして他部門から信頼を得ることで開発部門や事業部門との関係が深まっていき、彼らと一緒に事業を成功させられた時に感じる喜びは非常に大きいものです。

一日の業務

リエゾン担当者は、発明ブラッシュアップ会議と開発部門や事業部門からの相談対応に多くの時間を割いており、1日に複数の発明ブラッシュアップ会議に参加することもあります。そのほか、特許出願の分析も行います。担当者によっては、外部委員会に参加して他社知財部門の方々と親睦を深めながら情報交換を行う日もあります。

* キヤノン知財は外部委員会活動を推奨しており、自ら参加を希望することができます。
外部委員会などで他社知財部門の方々と話すことで、自分のレベルに気づけたり、新たな視点の意見に触れて刺激を受けたりすることができます。

新しいリエゾン業務の形を切り拓く

キヤノン知財では、従来の知財の枠を超えてさまざまな業務に挑戦することもできます。
たとえば、リエゾン担当者が、事業部門や開発部門、デザイン部門の担当者と一緒にチームを組んで新しい事業テーマについて議論することもありますし、その流れで顧客へのヒアリングに参加することもあります。新しい事業を構想していくこと、その中で「知財」という言葉にとらわれすぎないようにしつつも知財部門の人間としての強みを生かしてチームに貢献していくことは大変ではありますが、やりがいがあり、自分の成長につなげることもできます。
また、リエゾン担当者が、「知財部門では自分がこのテーマを一番深く理解している」という自信のもと、設計担当メンバーと議論を重ねて自身も発明者の一人として、通常は権利化担当者が行う明細書作成を行い、早期の特許出願につなげたケースもあります。
リエゾン業務は多岐にわたるため、リエゾン担当者は、定型化された業務を効率良く処理しながら、新しい業務の形を切り拓いていくというマインドをもって新しい業務に挑戦しています。