知財部門の仕事

特許翻訳業務

業務概要

特許翻訳業務とは、日本語で書かれた特許明細書や特許庁への回答書を、英語に翻訳する仕事です。
キヤノンは日本国内のみならず、世界各国においても事業を守り、事業を拡大するため、特許の権利化に注力してきました。各国で特許を権利化するにあたっては、特許庁へ提出する書類が、特許権利化の意図通りの内容で表現されていることが必須となります。そのため、キヤノンでは「特許翻訳」の工程を重要視しており、「特許翻訳」の工程を専門に扱う「特許翻訳部隊」がいます。

キヤノンの特許翻訳業務

発明への理解

特許翻訳では、特許の内容を、発明に即した英語に翻訳することが求められます。発明に即した英語に翻訳していくには、技術的なバックグラウンドや特許権利化の目的を理解することが必要となります。そのため、特許翻訳の担当は、技術部門の報告会へ同席したり、研修などで特許技術者の仕事を実際に体験することを通じて、特許技術者の視点を知るとともに、発明への理解を深めています。このように発明や特許技術者の考え方への理解をベースに、日英言語の特徴を意識しながら、特許技術者が日本語で作成した特許庁への提出書類を、発明に即した英語に特許翻訳していきます。

適切な英文の選択

特許の権利範囲は、英語の表現次第で特許技術者が意図していたものと変わってしまうことがあるため、特許翻訳では英語の表現に細心の注意を払っています。たとえば、「AユニットはBとCにより構成される。」と日本語で表現した際に、そのほかの要件DやEも含んでいても良いことを意図していたとします。「AユニットはBとCにより構成される。」という日本語を直訳した場合、「An A unit is composed of B and C.」と表現されますが、この英語表現は「AユニットはBとC“のみ”によって構成される。」と解釈される可能性があります。したがって、このような解釈がされてしまうことがないように、特許翻訳をしなければなりません。このため、キヤノンの特許翻訳の担当は、発明がどのようなものでどのような権利化を意図しているか理解するとともに、選択する英文の文法的解釈をきちんと理解した上で、慎重にその発明に適切な英文を選択することで、強い特許権利の取得に貢献しています。

特許技術者との連携

特許翻訳の担当は、発明の内容や、特許出願にいたった背景を理解するため、特許技術者と密にコミュニケーションを取るよう常に心がけています。発明の不明な箇所については、内容が理解できるまで特許技術者と打ち合わせを行うことも多々あります。また、特許技術者から受け取った和文原稿に関して、「英語に翻訳した際このような解釈になる」など、特許翻訳の観点から特許技術者にアドバイスを行うこともあります。このようなコミュニケーションを重ねているため、特許技術者から特許翻訳の担当への信頼は厚く、経験を積んだ特許技術者から、他社特許の英文特許明細書の内容について聞かれることもあります。
特許技術者の方から伝えられる「ありがとうございます」の言葉は、特許翻訳の担当にとって日々の力となっています。特に「一緒に案件を検討していただいたことで、とても良いクレーム(請求項)を作成することができました」と言われた際には、「一緒に権利化に携わることができた」のだと達成感を感じます。
キヤノンにおける特許翻訳の担当と特許技術者との間の信頼関係は、両者が密にコミュニケーションをしながら発明一つひとつに向き合うことで着実に築かれてきたものです。

飽くなき好奇心・豊かな想像力

特許翻訳業務に従事するにあたっては、新しい技術のキャッチアップが重要であり、英語への理解だけでなく、技術的な知識も常にアップデートしていくことが求められます。大変な面もありますが、常に新しい技術に触れられるという点は、特許翻訳の面白さです。特許翻訳の担当は、日本語をそのまま英語に置き換えるのではなく、特許にしたい発明がどういうものかを理解した上で、適切な英語で表現することが求められるため、通常イメージされる「翻訳」業務以上に、想像力が必要とされます。特許翻訳の担当がもち合わせている、特許翻訳への探求心、変わりゆく技術への飽くなき好奇心、そして豊かな想像力が世界中で特許の権利化を行っているキヤノン知財の大きな強みとなっています。