2002グランプリ
今年のはじめ、友人から「泳ぐカバ」を見た話を聞いて、私はどうしても見てみたいと思いました。短い手足をうんと伸ばして、ポーンポーンと泳ぐカバの姿が毎晩のように浮かんで、そのうちカバの事しか考えられなくなって、他の何を差しおいても、見に行かずにはいられなくなりました。私の心中に沸々と沸き上がるものは、年を追う毎に、漠然としたものから、塊のようなものになっていくように感じています。
写真の基本は、驚きと発見と感動。このシリーズにはそんな歓びが溢れ出している。ゆうゆうと泳いでいるカバの映像は、どこか懐かしく「deja-vu」の感覚を引き出してくる。母親の胎内で羊水にぷかぷか浮いている気分というべきだろうか。1枚だけ相当に大きく引き伸ばしたのも成功だった。今回は応募点数が多すぎてかえって焦点がぼけてしまった作品が多かったので、かえって目立ったということもあるだろう。審査において、作品のインスタレーションがいかに大事かということがわかる。吉岡さんの作品は見る者の深層的な記憶を引き出してくれる力がある。スケールの大きなパワフルな写真作家として成長していってほしい。
1972年生まれ。豪華客船の写真師として乗船勤務。退職後、ジョルダンのワディラムに滞在し、撮影制作した『CONTACT ME』が2001年写真新世紀第23回公募優秀賞受賞。2001年10月マダガスカルに渡航、ポートレート集『BE FORGIVEN』を制作。2002年以降は、海の宝石と言われるnudibranchiaを撮影、コラージュ作品を制作発表する。
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