審査員(敬称略)

アレック・ソス

写真家

私が期待するもの
ある写真作品を他の作品から際立たせているものは何なのでしょうか? 私自身も写真家ですが、数千枚もの写真の中から私の選んだ1枚が他のものと異なっていると思うのはなぜなのか、その理由はいまだに全く謎のままです。ですから審査員として私が求めるものを定量化して説明しようとするのは、誠実とは言えないでしょう。それでは私ができる最善のことはというと、それは私が求めていないことを明確にお伝えすることです。私が求めていない人とは、強い印象を与えようとして、むきになりすぎている人。さらに私が求めていない人とは、自分のテクニックや知性を見せびらかす人です。私が求めていない作品とは、何らかの型にはまっていたりムーブメントにのっていたりする作品です。また、自分自身のスタイルを必死に創り出そうとしている作品も、私が求めるものではありません。
求めていないことをこのように強調すると、ネガティブに見えることでしょう。ですが私の気持ちはまるで反対です。私は写真を愛していますし、写真という媒体が持っている魔法のような性質を守りたいのです。蔭でどんなに努力を重ねようとも、最高の作品とは、ほとんど根拠もなしに現れるものです。私が求めているのは、トリックを仕掛けるのにどれほど時間をかけたかをひけらかすマジシャンではありません。端的に言えば、私が見たいのは魔法そのものなのです。

プロフィール

アレック・ソスは1969年にミネソタ州ミネアポリスで生まれ、現在も同市を拠点にしている。「Sleeping by the Mississippi」(2004)、「NIAGARA」(2006)、「Broken Manual」(2010)、「Songbook」(2015)を始め、25冊以上の写真集を出版している。パリのジュ・ド・ポーム/印象派美術館 (2008)、ミネソタ州のウォーカー・アート・センター (2010)、ロンドンのメディア・スペース (2015)などで、50回を超える個展を開催。グッゲンハイム奨励金(2013)などの奨励金や賞を多数獲得。2008年、ビジュアル・ストーリーテリングに注力するマルチメディア企業、Little Brown Mushroom社を設立。ニューヨークのSean Kelly、ミネアポリスのWeinstein Gallery、サンフランシスコのFraenkel Galleryが代理人を務めており、マグナム・フォトの正会員である。

サンドラ・フィリップス

サンフランシスコMOMAキュレーター

キヤノンのコンテストの審査員を務めることになり、とても嬉しく思っています。皆さまには、是非、世界に目を向けて、私たち作品を見る者に挑戦する写真を撮影していただきたいです。最近は、写真を撮影するときに内面に目を向け、写真家の本質とは何か、またどんな気持ちか、自身をどのように見ているかを反映させる一つの潮流があります。けれども、このコンテストは、再び世界に目を向け、世界について考えられるよい機会ではないかと考えます。写真家ご自身のアイデア、ファンタジーの外側で何が起こっているのかを見る良い機会であると確信します。

プロフィール

サンフランシスコ近代美術館、写真部門名誉キュレーター。ニューヨーク市立大学で博士号、ブリンマー大学で文学修士号、バード大学で文学士号を取得。1987年よりサンフランシスコ近代美術館に勤務し、1999年にシニアキュレーター、2017年に名誉キュレーターに就任。近代・現代写真の展覧会を多数開催し、高く評価されている。展覧会:「露出-窃視・監視と1870年以降のカメラ(Exposed: Voyeurism, Surveillance and the Camera Since 1870)」、「Diane Arbus-リベレーションズ(Revelations)」、「Helen Levitt」、「Dorothea Lange-アメリカン・フォトグラフス(American Photographs)」、「Daido Moriyama-ストレイ・ドッグ(Stray Dog)」、「クロッシング・ザ・フロンティア-アメリカ西部風景の変容(Crossing the Frontier: Photographs of the Developing West)」、「警察写真-証拠としての写真(Police Pictures: The Photograph as Evidence)」、「Sebastião Salgado-不確かな恩寵(An Uncertain Grace: Sebastião Salgado)」。また、ニューヨーク州立大学ニューパルツ校、パーソンズ・スクール・オブ・デザイン、サンフランシスコ州立大学、サンフランシスコ・アート・インスティチュートなどの教育機関で教鞭を執っている。アメリカン・アカデミー・イン・ローマのレジデントを務めた経験があり、2000年に国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の助成金を獲得している。

ダヤニータ・シン

アーティスト

写真家を志すみなさん、私たちが写真をさまざまな表現形態の「素材」として捉え始めると、どうなるでしょうか。その形態にはまだ知らないものさえ含まれています。
写真を表現する第一の形態である書籍もまた、エキシビションなのか?エキシビションが書籍でありえるのか?イメージとは静止画でなければならないのか、動く静止画はあるのか。作品の制作後に動画になった静止画はどうだろうか。もちろん素材は力強く、そして、あなた自身の声でなければならない。それ自体時間を必要とするが、この素材を手にしたとき、どのような形を与えるだろうか?どのような方法であれ、あなたの写真が見て欲しいと望む形態で投稿して欲しい。あなたのチャレンジを楽しみにしています。

プロフィール

1961年、ニューデリー生まれ。1980年から86年までアーメダバードの国立デザイン大学に学び、1987年から88年までニューヨークの 国際写真センター(ICP)でドキュメンタリー写真を学んだ。その後8年間にわたり、ボンベイのセックスワーカーや児童労働、貧困など のインドの社会問題を追いかけ、欧米の雑誌に掲載された。『ロンドン・タイムズ』で13年にわたりオールド・デリーを撮り続け、 『マイセルフ・モナ・アハメド』(2001年) として出版。1990年代後半にフォトジャーナリストとしての仕事を完全に辞め、インドの 富裕層やミドル・クラスへとテーマを転じた。ヴェネチア・ビエンナーレ(2011年、2013年)やシドニー・ビエンナーレ(2016年)など の数々の国際展に招聘されている。京都国立近代美術館と東京国立近代美術館の「映画をめぐる美術-マルセル・ブロータースから 始まる」展(2013年~14年)に出品した。

上田 義彦

写真家

写真を写す行為は、そのまま自分自身をも写す行為に思える。
そういう意味で私は、写真は自身を写す鏡だと思っています。
どんな写真にも、その奥に撮影者の思いや、感情が写っている。
ワクワク、ドキドキ、切なく、悲しく、やるせない、そして嬉しい写真をたくさん見せていただきたいと思います。
そんな眩い写真に出会えることを、心より期待しています。

プロフィール

1957年生まれ。写真家、多摩美術大学 教授。東京ADC賞最高賞、ニューヨークADC賞、カンヌグラフィック銀賞、朝日広告賞、日本写真協会 作家賞など国内外の様々な賞を受賞。代表作として、ネイティブアメリカンの神聖な森を撮影した『QUINAULT』、「山海塾」を主宰する前衛舞踏家・天児牛大のポートレイト集『AMAGATSU』、自身の家族に寄り添うようにカメラを向けた『at Home』。命の源をテーマにした森の写真『Materia』。自身の30有余年の活動を集大成した写真集『A Life with Camera』を2015年に出版。2011年よりGallery916を主宰。

さわ ひらき

美術家

いまのデジタル一眼レフカメラ(むしろデジタルカメラと呼ばれるほとんどのモノ)には当然のようについている機能《動画》を、「写真新世紀」では、昨年2015年から応募作品の対象として受け付けるようになりました。
私自身も2009年に発売されたキヤノンのEOS 7Dが、自分の作品制作の展開に一役買いました。手元のスイッチ一つで「写真⇔動画」手軽さを提供する技術は、表現の消失と出現を同時に起こします。
《動画》の出現により、シャッターを押す、瞬間を捉える能力というのは、必ずしも必要とされなくなり、カメラを通した表現の本質は、作家として映像をどう取り扱うかということにつきるのかもしれません。
スティル、ムービー、紙焼き、フォトブック、物体的な形のない映像…さまざまな表現手法の境界が朧げなこの写真の新世紀に、わたしたちは新たな可能性を模索し続けています。
メディアや手法に捉われない、技術では比較できない、言葉では現しえない作品に出会えるのを楽しみにしています。

プロフィール

1977年石川県生まれ。2003年ロンドン大学スレード校美術学部彫刻家修士課程修了。2002年『dwelling』で若手作家の登竜門East International Award受賞。リヨン・ビエンナーレ(2003年、2013年)、横浜トリエンナーレ(2005年)、アジア・パシフィック・トリエンナーレ(2009年)、シドニー・ビエンナーレ(2010年)など国際的なグループ展に多数参加。主な個展に、「Lineament」(2012年、資生堂ギャラリー)、「Whril」(2012年、神奈川県民ホールギャラリー)、国内初となった大規模な個展「Under the Box, Beyond the Bounds」(2014年、東京オペラシティアートギャラリー)などがある。2017年、Reborn-Art Festival(宮城県石巻市)、札幌国際芸術祭(北海道札幌市)、奥能登国際芸術祭(石川県珠洲市)に参加。生み出される映像作品と動画インスタレーションは、創造的空間を表し、鑑賞者を魅了する。ロンドン在住。

澤田 知子

アーティスト

写真をはじめてから写真新世紀で賞を頂くことは私の憧れでした。でも最初は落選、二度目の応募で賞を頂きました。賞を頂いたことはもちろんその後の制作への自信と勇気に繋がりましたが、作品をまとめて仕上げて応募するまでの全ての過程が良い経験にも勉強にもなりました。既視感のない作品、独創的な価値観や独自の世界を見る目線をシェアしてもらえることを期待しています。はりきって応募して下さい!

プロフィール

1977年神戸市生まれ。成安造形大学写真クラス研究生を修了。学生の頃よりセルフポートレートの手法を使い作品を通して内面と外見の関係性をテーマに作品を展開している。デビュー作『ID400』が2000年度キヤノン写真新世紀特別賞、2004年に木村伊兵衛写真賞、NY国際写真センターThe Twentieth Annual ICP Infinity Award for Young Photographerなど受賞多数。世界中で展覧会を開催。出版物は、写真集の他に絵本などもある。

清水 穣

写真評論家

「リアル」「天然」「野蛮」といった、写真を見ない者が無責任に垂れ流す 抽象的なキャッチコピーは通用しません。写真についての写真を撮り、写真を見る力が求められているとしても、たんに写真史を参照するだけでは意味がありません。

文脈(親族の死、恋人の死、大震災、等々・・)に頼った作品は、ほぼ自動的に画一的になってしまう事を自覚してください。
「身近な友人」ではなく、あなたの理想の被写体を選び抜いてください。
「なにげない写真」ではなく、考えつくし見つくし選び抜いたうえで見せてください。
デジタル技術は、もはや「アナログ写真ではないもの」ではない、未知の領域を開きつつあります。
その未知の領域が未来へも過去へもつながっていて「写真」を再発見させてくれる、そんな表現を待っています。

プロフィール

1995年頃より現代美術・写真、現代音楽を中心に批評活動を展開し、国内外で展覧会カタログや写真集に寄稿している。『不可視性としての写真:ジェイムズ・ウェリング』(1995年 Wako Works of Art)で第1回重森弘淹写真評論賞受賞。主な著書に『写真と日々』(2006年 現代思潮新社)、『日々是写真』(2009年 現代思潮新社)『プルラモン』(2011年 現代思潮新社)などがある。現在、同志社大学グローバル地域文化学部教授。

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