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AIを活用し、キヤノンが描こうとしている未来とは?

AIを活用し、キヤノンが
描こうとしている未来とは?

現在のAIの発展を支える技術であるDeep Learningを取り巻く世界的な潮流と日本の現状に関する解説、そして「AIを活用し、キヤノンが描こうとしている未来」に迫るミートアップイベント『Canon AI・Engineer Forum』が2018年3月20日、東京・渋谷のTECH PLAY SHIBUYAで開催されました。当日は、東京大学大学院工学系研究科 特任准教授で人工知能研究の第一人者でもある松尾 豊氏をお迎えするとともに、キヤノンのAI技術開発をリードするエンジニアが登壇。当日はAI技術に関心を持つ多くのエンジニアや関係者が集まり、会場は熱気に包まれました。

ディープラーニングの
技術概要と今後の進展

松尾 豊 氏 東京大学大学院工学系研究科 特任准教授

松尾 豊 氏
東京大学大学院工学系研究科 特任准教授

松尾氏は、現在はAIと呼ばれている技術を軸に世界中で「数十年に一度」というレベルでの大きなイノベーションが起こっていると語ります。その中で最も重要なものがDeep Learningであり、深層学習を用いた画像認識や画像解析によって、機械やコンピュータ自らが物体を認識できる「眼」を獲得し、ロボティクスの技術と組み合わせることで 農業、建設、食品加工、製造、物流、介護といったさまざまな分野で、これまで人間の眼による認識に頼らざるを得なかった多くのタスクをロボットが代替できるようになってきました。このことは、産業革命の時代に人間の筋肉が蒸気機関や内燃機関に置き換わったように、俗人的だった眼による認識能力が、社会のあらゆる場所に再配置されるだろうと予測しました。

続けて、Deep Learningの技術概要について最小二乗法を軸に説明。計算機の能力向上で膨大なデータ量と大規模なパラメータを有するアルゴリズムを迅速に処理できるようになり、ReLU関数など活性化関数の進化と合わせてDeep Learningが発展したと解説しました。

最後に、Deep Learningを取り巻く世界の概況を紹介すると同時に、世界に比べて出遅れている日本の現状に対する危機感を表明。日本企業が世界と勝負するためには、コア技術であるDeep Learningへの投資、人材育成、大企業によるスピーディーな意思決定、ユーザー企業側のITリテラシー向上が必要であると警鐘を鳴らしました。一方で日本企業の勝ち筋は、自動車や産業用ロボット、家電など、「日本の強みであるものづくりとDeep Learningを組み合わせることにある」と持論を展開。「日本のものづくりとDeep Learningの組み合わせは大きなポテンシャルを秘めている。そうした意味でキヤノンの役割は非常に大きく、今後の展開にも期待したい」と語り、登壇を締め括りました。

松尾 豊 氏
東京大学大学院工学系研究科 特任准教授

東京大学工学部電子情報工学科卒業後、同大学院博士課程修了。博士(工学)。2002年より産業技術総合研究所研究員、2005年スタンフォード大学客員研究員を経て、2007年東京大学大学院工学系研究科総合研究機構/知の構造化センター/技術経営戦略学専攻准教授。2014年より東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 特任准教授を務める。専門分野は、人工知能、ウェブマイニング、ビッグデータ分析。

キヤノン株式会社
デジタルシステム開発本部
室長 御手洗 裕輔

キヤノン株式会社
NVS事業推進本部
主任研究員 沼田 真仁

2001年のキヤノン入社時から先端技術開発部門でConvolutional NN(CNN)を活用した、カメラやプリンタへの搭載を目的とした顔検出、表情認識、個人識別などのアルゴリズム開発に携っていた御手洗は、キヤノンのAI開発戦略は「プロダクト・ソリューション差別化のためのAI」であり、あくまでも顧客のための技術開発を指向していると前置きした上で、キヤノンにおけるさまざまなAI開発事例を紹介しました。2005年頃に開発し、現在に至るまで同社の生産ラインを支えている「部品の外観検査自動化システム」の事例では、経営に効果的なポイントを見つけてAIを活用することの重要性について説明。さらに2008年頃に手がけたカメラやプロジェクタ、Visual Geometryといった自社技術と画像認識AIを組み合わせた「部品供給用の3Dマシンビジョンシステム」の開発例を挙げ、自社の技術的な強みとAI技術を掛け合わせることで、「今後もキヤノンの強みが発揮できる領域で勝負し、先行者としての優位性を確保していきたい」と、今後の開発に対する意気込みを語りました。

一方、沼田は「ネットワークカメラとAIのリアル」と題して、アルゴリズムをソリューションとして顧客に提供するまでの過程で発生する、開発現場のリアルな課題や改善事例について紹介しました。群衆人数推定技術を導入したネットワークカメラによるソリューションは、イベント会場や公共施設での安全・安心を担保する広域監視や商業施設におけるマーケティング活動での活用が期待されており、さまざまな実証実験を実施しているとのこと。現場ではアルゴリズムの前提条件が顧客の環境に合わないといった問題だけでなく、ハード性能や導入コストに関する問題が発生する場合もあり、アルゴリズムの変更、再学習による強化、パラメータ調整などに加え、周辺のソフトウエアやカメラ、サーバー、GPU、設置環境まで、「あらゆる要素を組み合わせて地道に課題を解決している」とソリューション開発の難しさを語りながらも、「カメラや光学に関する技術、グループ会社の存在など、充実した経営資源を生かした課題解決選択肢の多さがキヤノンで働く面白さ」であると、エンジニアとしての仕事のやりがいについても言及しました。

キヤノンとともに、未来を描きませんか?

キヤノンとともに、
未来を描きませんか?

キヤノンのAIにおける強みは、長年にわたり蓄積してきた光学技術研究やセンサー開発といったリアルな世界から得られる画像や情報の処理技術と、AIによる学習・推論の技術の掛け合わせで、新たな価値を生み出せることにあります。

また、AI技術の共通化や標準化により、研究開発の相乗効果・効率化を実現する体制が整いつつある現在のキヤノンには、さまざまな技術者がAIをテーマに活躍できるフィールドが広がっています。既存の事業や製品に捉われない柔軟な発想力、先端テクノロジーとビジネスを結びつける力を発揮して、キヤノンで新しい未来を描いてみませんか。