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金博洋選手
インタビュー

世界を驚愕させた4回転寵児デビュー
300点超えを視野に、五輪表彰台目指す

文・野口美恵(スポーツライター)

2015年世界ジュニア選手権で2位となり、今季からシニアデビューを果たした金博洋選手。世界初の「4回転ルッツ+3回転トウループ」を2戦連続で成功させ、男子フィギュア界に激震を走らせた。驚異の18歳に話を聞いた。

4回転ルッツは17歳から成功 3種類の4回転を跳び分ける

4回転ルッツ、素晴らしいですね。今季あまりにも衝撃的なデビューで色々と聞きたいことがありますが、まずは代名詞の4回転ルッツについて教えてください。

そうですね、4回転ルッツは一番好きなジャンプです。練習で初めて成功させたのは、2013年、17歳の時です。でもこの時は、試合で跳ぼうとか、プログラムに入れようとは全く思っていなくて、単に「4回転ルッツ」というジャンプを跳んでみたくて練習していました。

試合での初成功はいつですか?

昨季の国内大会で初めて成功させました。でもその時はちょっとステップアウト気味だったので「成功した!」というような興奮はなかったです。

今年の試合では全部成功しているのでしょうか?

はい、今のところ成功しています。国内大会(中華人民共和国全国冬季運動会予選)で成功し、そのあと中国杯とNHK杯でも成功しました。ショートとフリー、それぞれ1本ずつです。4回転ルッツはそんなに難しく感じていません。

驚異的ですね。4回転ジャンプは何種類跳べますか?

ルッツも含めて3種類です。4回転トウループ、4回転サルコウ、4回転ルッツ。フリーは、トウループ2本とサルコウとルッツ、合計4本入れています。

4回転ループと4回転フリップの計画は?

まだです。まずは今季プログラムに入れている3種類の4回転を、試合で安定させるほうが先なので。安定したら他の2種類にも取り組むと思います。

そもそもいつからジャンプが得意になり、どのようにレベルアップしてきたのでしょうか?

スケートを始めたばかりの頃はジャンプは得意ではありませんでした。普通に趣味として遊びで滑っていただけで、アスリートを目指したのは3年くらい経ってからです。11歳の時に急にジャンプが跳べるようになって、12?13歳の時(2009?2010シーズン)に5種類の3回転を、13?14歳(2010?2011シーズン)でトリプルアクセルを成功させました。あとは4回転トウループが14歳、4回転サルコウが15歳です。

レベルが高すぎて言葉もありません。4回転ジャンプで参考にしている選手や、参考になるフォームはありますか?

特に参考にしている選手はいないです。ジャンプは自分の感覚で跳んでいます。ジャンプに関しては、誰かのようになりたい、という気持ちはないです。とにかく自分が出来るジャンプ全てを成功させたい、ということを考えて練習してきました。

ジャンプの高さが素晴らしいですが、コツはありますか?

もちろん身体的な才能もある程度は必要なのですが、僕にとってジャンプで一番大切なのはマインドセットです。怖いと思わずに、ただ「跳ぼう」という挑戦の気持ちが大事ですね。僕自身はジャンプを怖いと思ったことはほとんどありませんし、そうやって挑み続けることで成功するし、高さも出てきました。

シニア初GPシリーズは地元中国 4回転ルッツの成功率は9割に

シニア初GPシリーズは中国杯でしたね。シニア初参戦で4回転ルッツ成功。しかも世界初の「4回転ルッツ+3回転トウループ」という連続ジャンプでの成功でした。

今年シニアに上がり、4回転ルッツを入れるジャンプ構成でずっとやっていますが、ここ3か月くらいで確率が一気に上がってきました。今の練習での成功率は9割くらいです。「4回転+3回転」の連続ジャンプにするのは、僕にとっては特別なことではないです。

見事にショートで2本の4回転を成功させました。

最初のシニアGPシリーズで、とても良い演技ができたのは嬉しかったです。4回転ルッツには自信がありましたから。でも演技構成点があまり高くなかったので、シニアの選手としてもっと伸ばしていかないといけないな、と思わせられました。表現力をすぐに磨くのは難しいですが、スピンやステップにもしっかり集中して、「ジャンプだけの選手」と思われないことが大事かなと思っています。

中国杯のフリーは4本の4回転に挑戦。1本成功でしたね。

4つの4回転を全て成功させるのは簡単なことではないので、とても緊張しました。4つのうち1つしか成功しなかったので満足できていませんし、もっと滑り込んでいこうと思いました。

憧れの羽生選手と対戦、NHK杯 「平常心」が成功のカギに

NHK杯のショートも4回転ルッツを再び成功させました。95点超えという素晴らしい得点でしたね。

NHK杯のショートはかなり良くできました。4回転ルッツはすごく手応えがありましたし、3つのジャンプとも質の良いものを跳べたことが得点に繋がりました。練習と同じように、質の高いクリーンなジャンプを本番でも成功させることができたので、それが良かったです。

記者会見では、羽生結弦選手が「ボーヤンの4回転ルッツを見て研究したい」と言っていましたね。

羽生選手が僕のことを褒めてくれて光栄です。また頑張ろうと思いました。

NHK杯のフリーは、中国杯よりもジャンプの成功率が一気に高まりましたが、どんな差がありましたか?

「平常心」ですね。NHK杯ショートの時は「平常心」を心がけて滑った結果、95点を得ることができました。これからも「平常心」を大事にして一生懸命滑ることができれば良いと思います。でもフリーは小さなミスが多かったです。もちろんほとんどの技をまとめることができましたが、課題もあります。もっと練習して、もっと良いフリーを演じたいです。

成功のためには「平常心」なんですね。「闘志」とか「勝ちたい」ということはモチベーションにならないタイプなのでしょうか?

「勝ってやる」という気持ちは全くないです。今年は初めてのGPシリーズなので、ただ自分ができることをやりたかっただけです。95点超えという点数が出た事はびっくりでした。今後も「平常心」という心の持ち方を忘れずにやっていきたいです。やはり技術面についてはマインドセットが非常に重要なんだと思います。

NHK杯で、シニアのトップ選手の練習を見てどうでしたか?羽生選手の練習も見たのでしょうか?

ショートの時は滑走グループが違ったので、自分の練習の後に、羽生選手ら第2グループの練習を見学しました。初めてのシニアGPシリーズなので、第2グループの選手は皆トップ選手で、学ぶことが色々とありました。羽生選手に限らず全員がベテランで安定感もあって、とにかく上手。僕もジャンプ以外でもっと色々とやらないと、と思わせられました。羽生選手はやはり以前と変わらず、憧れです。

「2度の五輪で表彰台を目指したい」 300点超えも視野に成長を

他のスポーツはやったことがありますか?

やったことはないです。垂直跳びとかも、陸上での身体能力はそんなに高くないです。でも氷上に行くと跳べる。これは完全にタイミングとか感覚で跳んでいるからだと思います。あとはマインドセットが大切ですから。

普段の生活や学校生活などは、どうしていますか?

毎日練習ばかりです。日曜日だけがお休みですが、あまり遊びには行かないで、普通に身体を休めています。ハルビンにあるスポーツ大学のスポーツ専門学科に通っているので、練習することが学業のメインになります。

趣味は何でしょう?練習以外でもやることはありますか?

色々な遊びをします。ラジコンが好きで、自動操縦で飛行機とか船とかを動かしたりします。専門レベルを目指して操作技術を磨いています。
あとイヤホン集めが趣味です。2009年から集めるようになりました。羽生選手もイヤホン集めが趣味なんですよね? 僕も集めたものは数え切れないほどありますが、よく使うのは8~9個です。ハウスミュージックとかテクノが好きなので、ノリノリの曲をいつも聴いています。

羽生選手が320点を超えました。自分では到達できそうですか?

羽生選手のプログラムを見て、自分ももっと努力して、表現もジャンプの質も、全てを改善していけば300点は狙えるなと思いました。でも320点の可能性は、今のところ見えないです。確実に狙えそうなのは300点ですね。

今後の練習での目標は?

長い時間かかるとは思いますが、将来的にはもっと演技構成点(PCS)を伸ばそうと思っています。でもまずはシニア初参戦のシーズンなので、今季は4回転ルッツをしっかり決めて、ジャンプで自信を得ていくことが自分の成長に繋がると思っています。

表現面はどうやって磨いていく予定ですか?

今はバレエとジャズダンスを、週1~2回習っています。芸術面においては表現すること、感性で滑ることが大事ですよね。

シニアデビューで好スタートを切り、将来の目標は変わりましたか?

まずは12月、GPファイナルの表彰台を狙っています。そしていずれは五輪の表彰台に立ちたいです。平昌五輪も、北京五輪も、両方の表彰台に立ちたいです。

ありがとうございました。素晴らしいジャンプに期待しています。

2015年11月29日、長野ビッグハットにて取材

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