インタビュー - Interviews -

島田 高志郎選手
インタビュー

スイスに拠点移し開花した17歳
ジュニアのGPファイナル3位を自信に

文・野口美恵(スポーツライター)

ジュニアGPファイナルで見事3位となり表彰台に上がった島田高志郎選手。昨年スイスに拠点を移して4回転を習得すると、いよいよジュニアのトップ争いに加わってきた。スケートへの情熱を聞いた。

初の4回転トウループ成功
「大技を入れて結果を残したい」
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ジュニアのGPファイナルで、初めて4回転トウループ成功、そして表彰台ですね。おめでとうございます。

朝の練習が良かったので、4回転もこのまま練習どおりいけば跳べるだろうと、自信を持っていきました。最初の4回転トウループを降りたあとは自信がみなぎってきて、最後まで滑ったと思います。緊張感の中決めることができたのは嬉しいですが、今後は試合で何本も降りていかないといけないという気持ちが出てきています。

ショートは4位となり、表彰台が見えてのフリーでした。

4位という位置で、点差からすると、自分の演技をすれば1位にも届く距離でした。そこで欲を出さずにあまり気持ちを押し殺してしまっても、逆に緊張感が出てしまうものなので、「どうせなら絶対に表彰台に上がってやる」という強い気持ちで氷に乗りました。でも、ちょっと欲が出過ぎたところがいくつかのミスの原因でもあります。

ステファン・ランビエールコーチが「高志郎は今季、戦う男の顔になった」と話していましたが、ご自身では?

毎試合、目標が少しずつ高くなっているのは感じています。去年まではトリプルアクセルがなかったので「自分の納得のいく演技ができればいいな」で終わっていました。今はトリプルアクセルも4回転も大技も入れているので、自分が納得しつつ、さらに「結果を残したい」という気持ちが強くなりました。今のところ、今シーズン出た試合はすべて表彰台に乗っているので、コーチにも家族にも、少しずつ成長している姿は実感してもらっているかなと思います。

ジュニアのGPファイナルで表彰台となると、世界ジュニアでの活躍も期待されますね。

この表彰台に上がれたことは、自分には大きな自信になります。でも世界ジュニアで戦うとなったら、他の選手も調子を合わせてくると思うので、自分も成長していきたいです。今回はあくまでも調子が良かったので、今後は練習を積んで、どんな状況でも力を出せるようにしていきたいです。

愛媛で男子1人のスケート教室
「スケートが楽しい」ノービス時代
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スケートを始めた頃のことから教えてください。愛媛出身のスケート選手はまだ少ないですね。

スケートを始めたのは6歳の時で、何度転んでも楽しくて無性にはまってしまい、それはずっと忘れられない思い出です。母にせがんで何度も連れていってもらう内に、スケート教室に入りました。当時は、男の子は僕しかいなくて、半回転ジャンプだけでも「すご〜い」って言われていました。スケートを楽しむ心をもらったと思います。

その後、岡山のリンクで本格的に選手としてスケートを習うことになりましたね。

もっとスケートが上手になりたい、1回転でも多く回りたい、という気持ちで岡山に行きました。それがちょうど髙橋大輔選手のホームリンクでした。小学3年生の時にバンクーバー五輪を見て、すごい人がいるんだなと尊敬していましたが、まだスケートのことは深くわかっていなかったと思います。とにかく岡山に行ったら世界が広がって、選手がたくさんいて「やっぱりすごいな」と実感する毎日でした。

ノービス時代(小学生)の島田選手は、とても可愛らしくて演技の上手な子というイメージでした。

その頃は、ただスケートが楽しくて、無邪気に自分の心の中にある「スケートが楽しい」という気持ちを表現していました。表現派というつもりではなくて、闘争心はありましたし、負けず嫌いです。もともと習い事はテニス、水泳、体操、ヒップホップもバレエもやっていて運動神経は良かったので、何でも1番になりたいというタイプでした。

男子選手にとってトリプルアクセルは一つの壁ですが、習得するまでは大変でしたか?

まだトリプルアクセルや4回転を跳べない頃は不安で、自分は上達できていないんじゃないかと思った時期もありました。ジュニア1年目に練習を始めて、習得したと言えるまでに4、5年かかっています。初めて降りた時は、「こんなに簡単なのか」という感触でした。普通にダブルアクセルみたいに降りるし、跳んだ後に力が沸いてくる感じでした。自分の身体のエネルギーで温まるのか、身体の周りで生暖かい風が吹く感覚がありました。

16歳で単身スイスへ、自炊の生活
「細かく身体を使う練習に効果」
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トリプルアクセルを武器に活躍が期待されましたが、昨季は左内転筋の肉離れということで休養しましたね。

トリプルアクセルを安定させるために、練習量を増やそうとしたら怪我をしてしまったんです。ちょうどスイスに移動するタイミングだったのですが、まずは身体を整えようということで、ステファンコーチからの薦めでトロントの病院でしっかり治療に専念しました。

スイスに渡った経緯は?

小学生の頃から習っていた長沢琴枝先生が滋賀のリンクに移動されることになり、ついていくか悩んだ時期にステファン先生から「面倒をみるよ」とお誘いいただいて、スイスに行けばスケートに集中できると思い切って決めました。

母から離れ、16歳にして単身スイスへ。どんな生活ですか?

やはり大変なのは食事ですね。チーズとか乳製品はおいしいですが、そればっかり摂るわけにもいきません。住んでいるエリアが田舎で、コープ1軒しかなく、そこでも分厚い肉くらいしか売ってない。まずは力が沸くように、量を食べることを頑張っています。お肉の塊だけだと質素なので野菜も、とは思うけど自炊は大変です。スイスに行く前は45㎏だった体重が55㎏になり、少しは力がついたかと思います。

かなり体重を増やしたのですね。

背は中1から伸び続けていたのが、そろそろ止まってきたところです。今はトレーニングで身体を強化して、使える筋肉を増やそうとしています。ステファン先生がオフアイスの計画も作ってくれるので、それをこなすのに精一杯です。

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ランビエール先生のレッスンはどんな特徴がありますか?

日本と違うのは、ジャンプもスケーティングもスピンもすべて「身体のどこを使え」というのを重点的に言われることです。日本だと、がむしゃらにジャンプして、見た目のフォームの悪い所を直そう、という注意の仕方です。ステファン先生の指導は内面的で、この筋肉を使って、ここに体重を乗せて、ここを伸ばして、と細かく言われます。お陰で身体の使い方が変わってきて、その成果が成績に現れてきたところです。

ランビエール先生はかなり細かい指導のようですね。

めちゃめちゃ細かい性格です。細かい体重の位置とか、身体を使う場所とかがちょっと違うだけで、「何度も言うけど、ここができていない」と言って、次に進めないという感じ。僕もきっちりしてる方ですが、ステファン先生の方が10倍くらい細かいです。でもそれが、氷上の練習では最適なことなので、先生についていこうとしています。

その練習法が4回転の成功に繋がったのでしょうか。

そうですね。今季が始まる前はトリプルアクセルを重点的にやっていて、4回転はお遊び程度だったのですが、本格的にやり出してから1週間で、降りる感覚がわかってきた感じでした。かなり良いペースでできたのは、氷上練習で身体の使い方を徹底してきたことが、効果的だったと思います。

4回転トウループのコツはつかめましたか?

ステファン先生も試行錯誤しながら、自分でもやって見せてくれて色々なアドバイスをくれます。未だに、ウォーミングアップなしで4回転トウループを降りてしまうので、僕もデニス・バシリエフス君も「僕たちが苦しんでるのに」って思いますね。質の良い4回転なので、見本になります。

4回転サルコウ、ルッツも視野に
ライバル選手と切磋琢磨の日々
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バシリエフス選手とは良いライバル関係ですね。

はい、いつも練習でどっちが先に跳べるかなとか、何本多く飛べるかなと、遊び心もありつつ真剣に練習しています。オフアイスのトレーニングはデニス君の方がずっと身体が強く、すごい量をこなしています。氷上では、体重が軽い分僕の方が瞬発性があって、ステファン先生には「タイミングや感覚的には高志郎の方が先にいってる」と言っていただいています。お互いの良い所を刺激し合いながらやっています。

4回転サルコウも練習しているそうですね。

普段の練習から、4回転サルコウとトウループは同じくらいの比率でやっています。いずれは試合で2種類を入れようと思いますし、今後は4回転ルッツも練習しようと思っています。今はまだ4回転を難しいジャンプとして捉えているので、それが3回転のように当たり前の感覚までいければ、試合で何種類も入れ戦っていけます。これからの課題です。

2018年の年末は、世界ジュニアの選考会ともなる全日本選手権が控えています。憧れの髙橋大輔と、32歳と17歳という年齢差で戦うことになります。

日本を代表するトップ選手と戦える機会はそうないので、楽しみです。最終的には自分の試合に集中しますが、髙橋選手の演技を見られる機会があれば、しっかり見て学びたいです。ショートもフリーも、ジュニアGPファイナルよりも良い演技を目指します。

改めて今後の抱負は?

スイスに行って、自分のやりたいことを存分にやらせてもらってるなと感じています。今季の試合はすべて楽しめていますし、気持ちの部分が成長してきたかなと思います。もっと英語力も磨いて、スイスのコーチ達との信頼関係を深めながら、より成長していきたいと思います。

2018年12月、GPファイナルにて取材

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