インタビュー - Interviews -

樋口 新葉選手
インタビュー

トリプルアクセル「初挑戦して良かった」
来季は4回転もアクセルも成功を

文・野口美恵(スポーツライター)

今季は全日本選手権では銀メダル、四大陸選手権ではトリプルアクセルにも初挑戦し話題を集めた樋口新葉。
今季そして来季への思いを聞いた。

全日本選手権で120%と決めたシーズン
「自分を励ましながら頑張り抜いた」
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今季は全日本選手権で3年ぶりの表彰台。存在感を示したシーズンでした。

今季は、全日本選手権での表彰台というのを一番のモチベーションに頑張ってきました。特に、フリーの通し練習は本当に辛いのですが、気持ちを振り絞って岡島(巧治)先生に音楽のスイッチを押してもらって、キツい練習に耐えて、自分で自分を励ましながら頑張り抜いたシーズンだったと感じています。

ショートの『Bird Set Free』は、「鳥のように飛び立つ」という歌詞と樋口選手の演技が本当にマッチしていました。

ショートは、昨季から候補曲の中にはあって、すごく気に入っていたんです。曲の雰囲気も良くて踊りやすいですし、自分自身を重ね合わせて、感情が出しやすかったです。今季は本当に頑張らないと、という自分の気合いも、曲に乗せて滑っていました。

フリーのフラメンコも素敵でした。

『Poeta』を使おうと言ったのは私で、ステップの部分にフラメンコの音楽を入れるのは振付師のマッシモ・スカリの提案でした。フラメンコの部分がアクセントになって良かったという声がたくさん聞けたのですが、実際にはすごく難しかったです。フラメンコは12拍子で、とにかく音を取るタイミングがわからなかったんです。フラメンコの先生に陸で踊りも習いましたが、「ここで本当に12拍子目?」という感じでした。

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今季は、後半戦に向けて徐々に調子が上がっていくシーズンでした。

はい。シーズンに入る前から、「全日本選手権に照準を合わせて、グランプリからだんだん仕上げていく」というピーキングを、岡島先生と話し合っていました。それには五輪シーズンの反省があります。あの時はシーズン初めから本当に頑張って全力を出して、GPファイナルで力尽きたなというのを自分でもわかっていました。温存というのはできないタイプなのですが、シーズンが始まる前に、どこに一番のピークを合わせるのかを決めて、自分をコントロールしていかないといけないと思いました。今季は、60%から始めて、全日本選手権で120%という計画を立てて、本当にその通りにできたと思います。

世界選手権よりも、全日本選手権が120%というイメージなのですか?

私にとっては、やっぱり全日本選手権で表彰台に乗りたい、というのが一番のやる気になります。2018年の世界選手権の銀メダルは、たまたま運があってのメダルでした。自分もショートはミスがあったし、他の選手もミスがありましたから。でも全日本選手権は、まず誰もミスしないですし、本当に実力がある人が上にいける大会です。そういう意味ではやはり私の目標で、ミスのない演技をしたいという気持ちが強くあります。

昨年夏からトリプルアクセルを練習
「良いアクセルを跳べている感覚掴んだ」
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全日本選手権で力を発揮し、四大陸選手権と世界選手権への派遣が決定。年明けからはどんな練習をしましたか?

まず1月1日から練習を始めて、四大陸選手権でトリプルアクセルを決めようと決意できたので、1月10日から本格的なアクセルの練習を再開しました。

もともとトリプルアクセルを初めて降りたのはいつでしたか?

練習で始めて降りたのは、2017年4月の国別対抗戦の直前です。その半年くらい前にも練習で1本だけ降りましたが、感覚がわからないままの成功でした。そのあと五輪シーズンを迎えて練習できていなかったので、本当に練習を始めたのは2019年夏です。そのあと左足の怪我もあったので練習は止めて、12月に再開をしました。今季は、週末に休んでも、週明けの練習で跳べたりするので、だいぶ感覚が安定してきてると思います。

どのような怪我だったのでしょう?

アクセルを踏み切る時に、私はつま先に引っかけて高さや幅を出す跳び方をするので、足首に負担がかかるんです。それで怪我をしました。

かなり練習での成功率が高くなっていましたが、コツを掴めたきっかけは?

初めのうちは他の選手の動画も見ていましたが、最後は自分の感覚を大切に、いつも同じ感覚で跳べるように、という練習を繰り返してきました。初めの頃はエリザベート・トゥクタミシェワ選手の軽い跳び方なども見ていたのですが、結局は男子の「ボンッ」と跳ぶパワフルな跳び方のほうが綺麗だし、高さもあるので、感覚としては男子を真似しています。12月には、自分の動画を見ても、「すごく良いアクセルを跳べてるな」という感覚だったので、このまま試合で入れるということだけを考えました。

四大陸選手権の6分間練習で
トリプルアクセル成功し「跳びすぎた!」
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四大陸選手権の前は、どれくらいの成功率にまで仕上がっていましたか?

全体の通しでのパーフェクトはなかったのですが、トリプルアクセルを跳べたあとに、「3回転ルッツ+3回転トウループ」、3回転サルコウ、という感じで3つの冒頭のジャンプをノーミスすることはできていたので「試合でもいける」という感覚がありました。試合の時は身体がよく動いていますし集中しています。普段の練習でも色々考えずにパッと跳ぶと成功するので、試合もその気持ちでいけると思っていました。

四大陸選手権の6分間練習で見事に降りました。

自分でびっくりしました。びっくりして何本も跳んじゃったから、試合に体力を残していなかったくらいです。「跳べた!もう一回やろう!」って思って、6分間練習なのに4本も跳んで、そのうち2本は成功しました。あの日は、「絶対に試合で跳ぶ」という気持ちで、6分間練習の前のウォーミングアップでもテンションが上がるように、逆立ちや側転、スキップとかをして「行けるぞ」と自分に言い聞かせたのが良かったと思います。

本当に綺麗なトリプルアクセルでしたし、見ている方も興奮しました。

あの日は、トリプルアクセルの練習をするために、他のジャンプの練習を普段は2本ずつ跳ぶのを1本ずつにして早めに終わらせてたんです。そしたらアクセルを始めた段階でまだ2分も残っていて、ついついたくさん跳んでしまいました。先生も嬉しかったのか、降りる度にコクンコクンとうなずいていて、もう止めるどころじゃなかったです。今度は「成功したら1本だけで終わり」などのルールを決めておかないと、跳びすぎてしまいますね(笑)。

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本番も、転倒はしましたが、回転も勢いも十分なトリプルアクセルでした。

本当にあとちょっとでした。動画を見返す度に、結果はわかってるのに「ああ!」と言いながら見ています。勢いがあまって左に振られちゃったので。でも本当に挑戦して良かったと思います。

四大陸選手権で納得の演技ができたあと、3月の世界選手権へ向けてもかなり調子を上げている様子でした。

世界選手権に出発する前、最後の神宮外苑アイスアリーナでの練習は本当にキツくて、泣きながらやっていました。世界選手権では、とにかくミスなく良い演技をしたいという気持ちが強く、ステップもジャンプも、細かく質を上げていく練習をしていました。でもそれくらい気合いを入れて頑張っていたので、中止になったのはちょっと残念でした。来年に向けて頑張りたいと思います。

世界選手権では、トリプルアクセルを降りるのも目標だったのでは?

世界選手権に向けては、トリプルアクセルは納得いく練習はできていませんでした。プログラム全体を仕上げる練習に時間を割いていたので。トリプルアクセルは、朝は身体が動かないのでやらず、夜にちょっと練習するだけにしていました。身体が動いていて、すごく集中している時じゃないと降りる感覚が掴めないので、毎日練習するのはすごく難しいことだなと思っていました。

オフは4回転ループかルッツに挑戦
トリプルアクセルも安定感を

世界選手権が中止になり、予定もかなり変わったことと思います。

本当は世界選手権後すぐに米国でプログラムを作る予定でしたが、今は渡航規制もかかっているので振付に行けません。ショートはジェフリー・バトル、フリーはシェイリーン・ボーンにお願いしているので、タイミングを見て振付に行ければと思います。まずはジャンプを固める練習をしておこうと思います。

ジャンプというと、トリプルアクセル、そして4回転も?

そうですね。まずはトリプルアクセルを完成させて、その後4回転を本格的に始めます。今のところ4回転ルッツが一番良いかなと思っています。または4回転ループかもしれません。

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サルコウやトウループよりも高難度の4回転に挑戦したいのですね?

もともと3回転サルコウは苦手なので、難しいと思います。4回転の準備として、片足での跳び方を両足からの踏み切りに変えたのですが、それがかえってなじんでいないんです。トウループは左足の靭帯が伸びてしまっていて、強くトウを突く練習をすると捻挫すると思うので、避けたいと思っています。

確かにロシアの女子を見ても、なぜか高得点の4回転ルッツを先に習得する選手が出てきています。

ルッツの場合は他のジャンプと違って、一回、右後ろに両手を振る動作があるので、そこで反動を付けやすいんです。それにチェンジエッジを直前に挟むことでも勢いが出せるので、そのタイミングを掴めればいけるかなと思っています。でもハーネス(補助具)を付けて何度か4回転ルッツに挑戦したことがありますが、結局3回転したところで開いてしまうんです。ロシアの子たちは、本当に最後まで締め続けられるのが凄いと思います。ネイサン・チェン選手のようなコンパクトなルッツも参考になるかもと思っていますが、最終的に成功するには、自分の感覚を見つけるしかないと思っています。

4回転1本とトリプルアクセルが本当に揃ったら、大きな武器になります。

もし4回転を跳べれば、トリプルアクセルももっと簡単に感じると思うので、両方とも同時に頑張りたいです。来季は、少なくともトリプルアクセルは毎試合入れていって、そうすればきっとどこかで降りられるという望みを持っています。来季が楽しみです。

本当に来季が楽しみです。期待しています!

2020年3月、都内にて取材

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