インタビュー - Interviews -

鍵山 優真選手
インタビュー

「自分は世界でも戦える、ここがスタート」
来季は4回転の種類を増やし、五輪へ

文・野口美恵(スポーツライター)

シニアデビューとなった今季、初出場の世界選手権で銀メダルという快挙を成し遂げた鍵山優真(17)。世界のトップと戦った手応え、そして来季の北京五輪への抱負を聞いた。

父・正和コーチと初めての国際試合
「嬉しくて、ありがたかった」
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五輪前年の世界選手権で2位という活躍、おめでとうございます。振り返っていかがでしょう。

今回の世界選手権は五輪に向けて、自分の立ち位置を確かめるためにすごく大事だと思って臨みました。自分は世界でも戦えるんだ、ということをこの試合で感じたのと同時に、もし皆が完璧な演技をしていたら、自分はまだ4回転の種類も少ないですし、この順位ではなかったと思います。だから今回良い結果を出せたからといって五輪で上位を狙えるかどうかは分からないですし、他の選手ももっと練習して上手くなってくるので、それに負けないよう練習して成長していきたいです。まずは五輪の出場を決めて、そのうえで上位を狙っていきたいと思います。ここで満足しちゃいけない、ここがスタートだ、と思いました。

それでは早速、試合を振り返っていきましょう。まず今回は、父の正和コーチと一緒に国際大会へ行くのは初めてでした。

父は、世界選手権は一緒に行くと決めていました。(リハビリ中のため)国際空港での移動がすごく大変になるので車椅子を使ったのですが、空港の方たちがすごく親切で、車椅子を押してくださってゲートまで案内してくれたりしました。皆さんに助けられました。コロナ対策もあって色々な制限はありましたが、初めて一緒に海外の試合に行けるのはすごく楽しみでしたし、本当にありがたいなと思いました。着いてから父とは「ここにきたからには、しっかり後悔のない演技をして帰ろう」と話し合いました。

今回はバブル方式と呼ばれる、コロナ対策を徹底した試合でした。いつもの試合とは違う生活だったと思います。

到着後は、PCR検査の結果が出るまではホテルの部屋で待機でした。その時に夕飯を渡されたのですが、見たことのないような料理で食べられず、持っていっていた日本食を食べました。今回は外出できないので、白いごはんや缶詰、カップ麺などを色々持っていっていました。部屋ではマットを敷いて1人で体幹トレーニングなど、限られたスペースでできることを毎日1時間半くらいはしていました。

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ストックホルムでの初練習はどんな気持ちでしたか?

一歩滑った時点で「これは日本とかなり違う」というのは感じました。うまく力を吸収してくれて、一歩蹴るたびにすごく滑ってくれる。自分の滑りと氷の感触とがうまくマッチして、すごく良い氷だなと思いました。大きな会場なのでテンションが上がって、お客さんを想像しながら練習しました。それに海外のトップ選手と挨拶するたびに「本当に世界選手権なんだな」という実感が湧いてきて、楽しみになっていきました。

ショートはパーフェクトで100点超え
「17歳らしく全力で、はっちゃけた」

では演技を振り返っていきましょう。ショートは、2本の4回転とトリプルアクセルと、パーフェクトでした。

ストックホルムのリンクは、僕がいつも練習している日本のリンクに比べると、すごくツルツルしていてスピードが出るんです。それに反発もあって、力を入れるといつもより浮きすぎてしまうので、着いてから2日目くらいまでは、4回転まわってから開くタイミングが分からなくなっちゃったんです。ほんの少し早めに開かないといけなくて、その調整が難しかったです。現地で練習するうちにタイミングをつかめていたので、本番ではその感覚を信じてやったらできました。本番は何も考えずに思い切りやることができて、良かったです。

全日本とはかなり印象を変え、髪も切って、衣装も新しくなりました。

シルクロードがテーマなので、白をベースにした、アジアの民族衣装のイメージです。色や飾り付けを自分で衣装さんと相談して、大切な世界選手権のために作りました。すごく気に入っています。髪も切りました(笑)

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この『Vocussion』はローリー・ニコルさんに最初に作っていただいたプログラムですが、どんな印象でしたか。

やはりステップやつなぎに、今までやったことのない動きが多く、特にステップシークエンスでもジャンプや跳ねる動作がすごく多くて、足に負担がかかり、すごく太ももがきついプログラムです。シニアらしくというよりも、17歳らしく全力で、元気はつらつにやろうと思っていました。はっちゃけるっていう言い方はちょっと大げさかもしれませんが、良い意味で楽しくやることができました。

全日本選手権では「心臓が口から飛び出るかと思った」と話していましたが、落ち着いた様子でしたね。むしろ正和コーチのほうが緊張して見えました。

たしかに後で映像を見ると父のほうが緊張していましたね。僕はそんなに緊張していませんでした。本番の会場にきたら緊張してガクガクになるんだろうと思っていたのですが、案外そうならず、早く演技したいという楽しみのほうが大きかったです。ある程度の緊張はするけれど、悪い緊張をしなくなったというのが自分の一つの成長ポイントだと思います。自分が滑りたいように自由にのびのびと滑れたと思います。

ショートで100.96点と、100点超えを果たしました。素晴らしい評価でしたね。

得点を待っている時は「ちょっと動きが固かったかな」とか「ステップは全日本選手権のほうが動けたかな」とか色々な課題を探していたんですが、点数が出た瞬間に全部忘れました(笑)。「100」っていう数字を見た瞬間に、自分の中の評価として「自分に満点をあげてもいいな」って思ってしまいました。課題だらけなのに「もう100点超えたし、やることないでしょ」って。それぐらい嬉しかったです。

休憩なく、体力も精神力も「キツい」フリー
「最後のアクセルは全力で跳んで回りすぎた」

フリーは最終グループで、ネイサン・チェン選手のあとの5番滑走となりました。

最終グループで練習したり試合をしたりすると、最初は「本当にここに自分がいていいんだろうか」と思いました。周りの選手のスピードもすごくて、驚いてしまいました。でも「ここに来たからには日本代表としてやらなきゃいけない」と思い直して、しっかり集中していきました。

フリーは『アバター』。こちらもニコルさんの振り付けですね。コレオシークエンスが中盤にありスピードを出すという構成なので、最初から最後まで休憩がないプログラムですね。

コレオシークエンスが中盤に入りますが、ここは本当に盛り上がっていくところなので、スピードを出して勢いを殺さないことを一番大切にしています。休憩がないので、体力も精神力も、全部がこれまでで一番キツいプログラムです。逆に乗っていかないと、次の動きに間に合わないくらい詰め込んであるので、休みたいなんて思わずにとにかく動き続けるのが一番、という感じでした。この間、宮原知子選手とちょっとお話したんですけど、19−20シーズンの『シンドラーのリスト』もローリーさんの振り付けだったんですが、「休憩ないからめっちゃキツいよね」という話をしていて、とっても共感し合いました(笑)。

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前半の3つの4回転、そしてトリプルアクセルも成功。最後2つのジャンプでバランスを崩しましたが、素晴らしい内容でした。

終わった直後から、父とフリーの反省点を話し合いましたが、「後半2つは回りすぎちゃったね」という話をしました。すごくジャンプが浮く氷だったこともあって、回りすぎたんだと思います。最後まであまり疲れていなかったのに、最後だから全力を出して跳ばないと回り切れないだろうと思って、全力でやったら、逆に回りすぎてしまうという謎の現象でした(笑)。

演技を終えた時点でメダルが確定。最終順位は2位となりました。

メダルが確定した時は、僕も父もお互い全力で喜びすぎて、気が付いたら勝手に飛び上がっていました(笑)。すごくびっくりして動揺が隠せない状態でした。もちろんここまで来たからには表彰台を狙おうと決めて練習してきたのですが、本当に叶うと思っていなかったので、びっくりのほうが強かったです。点数としては、あの内容で妥当な点だとは思います。完璧な演技ではありませんでしたが、あの時の自分が出せる実力は全部出せたのかなと思います。

初出場の世界選手権でしたが、試合の他にも思い出はありますか?

宇野選手が僕に話しかけてくれて、何度かお話しして少し仲良くなれたというのが良い思い出ですね。ゲームの話とかをしました(笑)。また、表彰式が終わったあと、エッジケースをはめるときにつかまる壁がなくて、座ってはめようと思っていたら、羽生選手が肩を貸してくれたんです。それがすごく印象深い思い出です。

世界選手権では、女子の演技も見ましたか? 女子の4回転から学ぶこともあるのでしょうか。

女子の4回転を見ましたが、本当にその人にしか跳べないような4回転を跳んでいるので、真似はできないなと思いました。参考にしようって感じではなくて、ひたすら「すごい」という言葉しか出てきませんでした。女子は昨季に4回転時代が始まったときはジャンプばかり注目されていましたが、実際に見てみると、表現力や滑りも上手くなっていて、なおさら誰にもこの勢いを止められないな、と思いました。紀平梨花選手も4回転サルコウを練習していましたし、時代が変わったなと思ってしまいました。

4回転ループは練習で成功、次はルッツ
「すべてをレベルアップさせた先に五輪」
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来季は北京五輪シーズンです。4回転の種類を増やしていく計画は。

世界のトップ選手と一緒に練習したり、試合してみて、やはりまず4回転の種類をもう1、2種類増やさないと勝てないんだな、というのを目の前で実感しました。僕は今まで成功率があまり良くないジャンプを何本も入れるということはせず、完璧に跳べるジャンプで安定性を重視した演技をする、ということを目標にしてきました。来季の最初にまずは1種類増やして、あとは僕の計画ですがシーズン中にうまくいけば、もう1種類組み込んで、五輪のために練習したいと思っています。

すでに4回転ループは練習で降りているのでしたね。

正月明けから練習していましたが、世界選手権に向けて怪我をするのは怖かったので、2月以降は練習していませんでした。日本に帰国後、隔離期間が終わってからまた練習を始めたのですが、4回転ループを再開してから2日目に跳べました(笑)。しかも今まで正月から練習してきた中で一番良い、まるでこれまで普通に跳べていたかのような4回転ループでした。

4回転ループのコツがつかめた、という感触は?

感触はまあまあつかめてきたかもしれません。でも多分、全種類の4回転の中でループが一番難しいと思っています。そもそも難しいためやっている人が少なくて羽生選手くらいしかいない。だからこそ、僕は4回転ループをやってみたいと思っています。安定したら本当に武器として強いんじゃないかな、あまりやってる人もいないので盛り上がるんじゃないかな、と期待しています。4回転ループは、跳べてもたまたまの一発だったりするので、エッジ系のジャンプは安定させるのに1年か、それ以上かかるなと痛感しています。これから本当に数をこなしていかないと、と思っています。

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4回転ルッツはこれからですね。

まだ練習はしていませんが、やれば一番できそうだなと思うのは4回転ルッツです。父も言っていますが、締め方をちょっと変えれば4回転もすぐに回れると思うので、早く練習してみたいなと思います。

無観客の試合が多いシーズンでしたが、心がけていたことはありますか。

今季は無観客の試合が続き、演技中はカメラでどこを切り取られているかがわからない状態だったので、だからこそどこから映し出されても伝わるようにやらなきゃいけない、というのを意識して過ごしました。試合が終わってから動画を見返してみると、どこの表現が足りなかったとか、もっと他の方向にアピールすれば良かった、といった箇所がたくさん見つかりました。カメラで切り取られるからこそ、かえってすべての方面にアピールすることが大事なんだと感じられて、勉強になりました。今までは自分がどう演技を感じたか、で判断していたのが、自分を客観視することって大切だなと思いました。

来季のプログラムの予定は?踊ってみたいジャンルなどはありますか。

ショートは今のところ来季に残したいなと思っています。最初に見た時の爆発的な印象があって、たぶんお客さんもそう感じてもらえるプログラムだと思います。なので、お客さんが入る海外の試合でやってみたら、どんな反応があって、どう感じてもらえるのかな、というのが楽しみなんです。フリーは変更する予定で、ショートとは系統を変えて、なおかつ五輪でしっかりと評価されるようなプログラムを作りたいなと思っています。好きなジャンルとしては、今回のショートみたいな曲は自分でやってもすごく楽しいですし、あとは昨季の『タッカー』や2季前の『マスク』などは楽しく滑っていた記憶があります。

いよいよ来季は北京五輪シーズンです。世界で2位になったことで、トップと渡り合ったという実感、来季への目標はいかがでしょう?

まだちょっと追いつけたとは思いません。もちろん、ネイサン選手も意識していますし、羽生選手、宇野選手も、これから一緒に戦っていくことになるとは思います。でも自分は本当にまだまだ。この試合を見ていた佐藤駿選手や、三浦佳生選手たちがすごく燃えて練習して、本当に化け物になってくるんじゃないかと思いますし、自分も含めて全員がライバルです。まずは自分が本当にトップに立ったと言えるためにも、もっと努力して、4回転も、表現力も、スピンも、ステップも、全部をレベルアップさせていきたいです。その先に北京五輪があると思います。

ありがとうございました。成長を期待しています。

2021年4月、帰国後の隔離期間にリモートにて取材

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