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2023年12月27日
美術館では味わえない、体験。
スミソニアン国立アジア美術館の名宝を
京都・建仁寺で一挙公開
2023年秋、京都・建仁寺の紅葉がまもなく色づこうとしている頃、真っ赤な紅葉が一足早く季節の訪れを告げました。潮音庭の緑の紅葉の先に見えるのは、池田孤邨筆「紅葉に流水・山景図屏風」。金雲のすき間から見える群青の川には朱色の紅葉が映りこみ、鮮やかな世界がそこに広がります。
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2023年10月13日から11月3日、京都・建仁寺にて「スミソニアン国立アジア美術館の名宝~高精細複製品による里帰り~」が開催され、京都最古の禅寺である建仁寺を舞台に、同美術館が所蔵する作品の高精細複製品19点を一挙に公開。作品が描かれた当時を彷彿とさせる自然光の中で、ガラスケースに遮られることなく、美術館での鑑賞とは異なる展示を国内外の多くの方にお楽しみいただきました。
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「紅葉に流水・山景図屏風」を所蔵するのは、日本美術の宝庫として知られるスミソニアン国立アジア美術館。創設者フリーア氏の遺言により、所蔵品の多くは門外不出とされ、現地を訪れなくては鑑賞することができません。「綴プロジェクト」では、これまでに数多くの所蔵品の高精細複製品を制作し、日本への里帰りを実現させてきました。
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琳派の祖とされる俵屋宗達が描いた「雲龍図屏風」は、宗達筆作品と認められる数少ない真筆のひとつで、大画面水墨画としては唯一の作品です。雲や海の波間に描かれた二双の龍が柔らかな光に照らされて刻々と表情をかえています。
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江戸時代にタイムスリップしたかのように、きしむ廊下を歩いた先には、障子戸越しに優美な表情を見せる「群鶴図屏風」がたたずんでいます。描いたのは、日本だけでなく世界にも、さらには現代美術にも大きな影響を与えたとされる尾形光琳。金地に白黒のモノトーンの鶴を左右に大胆に構成し、屏風の中心に向かって遊歩するデザイン化された鶴、画面両端の様式化された渦巻く波が独特な存在感を醸し出しています。
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船に乗ったかわいらしい童子たちが描かれた床の間に飾られたのは葛飾北斎筆「波濤図」。北斎の代表作「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を彷彿とさせる本作では、線に太さや勢いの変化をもたらせた筆遣いや胡粉を飛ばして表現した波しぶきなど、肉筆画ならではの北斎の波を感じることができます。
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夕暮れどきの温かな木漏れ日のなかたたずむのは狩野元信 筆「四季花木草花下絵山水図押絵貼屏風」。元信は狩野派で初めて唐絵と大和絵を融合させた絵師として知られ、本作は華美な屏風に掛け軸を掛ける当時の風習を再現したものとされます。
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会期中には、同美術館主任学芸員のフランク・フェルテンズ氏によるギャラリートークや雑誌『和楽』とのコラボ企画※による夜の特別拝観などのイベントも実施され、参加者の皆様は作品が描かれた背景や見どころなどの解説を熱心に聞きながら、細部まで作品をじっくりと鑑賞されていました。
※『和楽』コラボ企画のイベントレポートはこちらをご覧ください。
会場を訪れた方からは、「門外不出の素晴らしい作品をたくさん見られてよかった」、「複製品とはいえ、本物と見紛うほどの技術に感嘆した」、「建仁寺の趣きのある建物の中で、太陽の光や風を感じながら絵を眺めるのは、とても贅沢な体験だった」、「まるで時間が巻き戻ったような感覚を覚えた」なとという声がきかれ、美術館では味わえない特別な体験を堪能された様子がうかがえました。
開催概要
スミソニアン国立アジア美術館の名宝~高精細複製品による里帰り~
- 会期
- 2023年10月13日(金)~11月3日(金・祝)
- 会場
- 大本山建仁寺 本坊
- 主催
- 特定非営利活動法人京都文化協会、キヤノン株式会社
- 共催
- スミソニアン国立アジア美術館
- 特別協力
- 大本山建仁寺