2023年12月27日
「高精細複製品で綴る日本の美」
綴プロジェクト作品展 開催
和紙に墨の濃淡で描かれる繊細な表現、
岩絵の具で描かれた鮮やかな色彩、
金箔や銀箔を使用した日本美術ならではの技法。
日本古来の文化財は、日本の美を今に伝えます。
2023年10月11日~11月16日まで、品川のキヤノンギャラリー Sで開催した企画展では、誰もが知っている日本美術の傑作を中心に、墨絵や金箔・銀箔を使用した屏風、岩絵の具で鮮やかに描かれた屏風など、まさに“日本の美”を体感いただける作品を8点展示しました。
まず、会場の入り口で来場者を迎えるのは、奇想の絵師・曽我蕭白の「雲龍図」。ダイナミックな構図、力強い筆さばきは見る者を圧倒する、蕭白の最高傑作です。
雲龍図の裏には、狩野山楽、山雪による「竹に虎図襖」を展示。金箔に虎と竹をモチーフに描かれた絢爛豪華な作品です。
会場の中央あたりでは、俵屋宗達が描いた「風神雷神図屏風」と尾形光琳が描いた「風神雷神図屏風」を向かい合わせで展示。光琳は、宗達の絵にほれ込み、宗達の「風神雷神図屏風」を模写したといわれています。また、光琳の「風神雷神図屏風」の裏側には、酒井抱一が「夏秋草図屏風」を描きました。
宗達・光琳・抱一は、生きた時代は違いますが、ひそかにその人を師と考え尊敬し、模範として学ぶ私淑という時代を超えた関係で結ばれていました。この展覧会で展示した3つの作品から、この琳派の系譜もご覧いただくことができました。
※「風神雷神図屏風」(尾形光琳筆)と「夏秋草図屏風」(酒井抱一筆)は、現在は保存のために別々の屏風に仕立てられていますが、複製品ではかつての姿のように表裏一体となっています。
「風神雷神図・夏秋草図屏風」の横では、菱川師宣の「見返り美人図」と「江戸風俗図屏風」を展示しました。どちらの作品も、赤や緑など岩絵の具の色鮮やかな色が特徴の作品です。
「見返り美人図」は、着物の模様や髪型などが細かく描かれていて、当時の文化や流行を紐解くことができます。「江戸風俗図屏風」も、江戸時代の庶民の季節の楽しみ方や、色彩豊かな衣装や結髪の様子から当時の生活がうかがえる作品です。
そして、菱川師宣の作品の手前では、奇想の絵師・伊藤若冲の「樹花鳥図屏風」を展示しました。この作品は、画面を1センチ四方の升目で塗分ける「升目描き」という手法で描かれており、若冲の独創性が如何なく発揮されている作品です。複製品では、この升目ひとつひとつをじっくりご覧いただけました。
会場奥では、近世水墨画の最高傑作のひとつにあげられる長谷川等伯の国宝「松林図屏風」 を展示しました。「松林図屏風」には、作品に描かれた世界を音と映像で楽しめるプロジェクションマッピングを実施し、複製品ならではの鑑賞体験を提供しました。
会期中には、綴プロジェクトを共催する特定非営利活動法人 京都文化協会の田辺代表理事のトークショーも実施しました。参加された方は、高精細複製品の制作に関するエピソードや展示作品に描かれているストーリーなどを熱心に聞きながら、作品鑑賞を楽しまれていました。
会場を訪れた来場者からは、「なかなか近くで見ることができない作品なので感動した」「宗達と光琳の風神雷神を一緒に間近に観られるという楽しさは格別でした」「プロジェクションマッピングは静謐な空気を感じて、素晴らしかった」などの感想をいただきました。
開催概要
高精細複製品で綴る日本の美
- 会期
- 2023年10月11日(水)~11月16日(木)
- 会場
- キヤノンギャラリー S(品川)
- 共催
- キヤノン株式会社、キヤノンマーケティングジャパン株式会社
- 協力
- 特定非営利活動法人 京都文化協会