キヤノンは、世界で初めて、ナノインプリント技術を用いた半導体製造装置用のマスクを低コストで複製する、量産用マスクレプリカ製造装置“FPA-1100NR2”を製品化し、ナノインプリント用マスクのリーディングサプライヤーであるDNP(大日本印刷)グループに納入します。
FPA-1100NR2
半導体デバイスの進化の鍵となる回路パターンの微細化が難しくなる中、光露光装置※1に比べ、より微細な10nm※2台の回路パターンを、より低コストで実現する新しい技術として、ナノインプリント技術に注目が集まっています。キヤノンは2004年より、ナノインプリント技術を用いた半導体製造装置の研究開発を続けています。
ナノインプリント技術による半導体デバイスの量産においては、マスクの製造コストやリードタイムが課題とされてきました。この要因としては、一般的に半導体デバイス製造用のマスクは、電子ビームを用いた微細パターンの直接描画により作成され、この描画工程にコストと時間を要することなどが挙げられます。そこでキヤノンは、半導体デバイス量産時の回路パターン形成において、高価なマスターマスクに比べ安価なレプリカマスクを使用することで、この課題を克服しようとしています。
キヤノンは、世界初のナノインプリント向け量産用マスクレプリカ製造装置“FPA-1100NR2”を製品化し、ナノインプリント用マスクのリーディングサプライヤーであるDNP(大日本印刷)グループに納入します。
“FPA-1100NR2”は、ナノインプリント技術を応用することにより、高価なマスターマスクのパターンを忠実かつ短時間にマスク部材に転写することができ、高い生産性でレプリカマスクを製作することが可能です。これにより、ナノインプリント用マスクサプライヤーの生産現場において、マスクの生産性を飛躍的に向上させ、ナノインプリント技術を用いた半導体デバイスの製造コストを大幅に削減することで、先端リソグラフィプロセスにおけるCoO※3低減を実現します。
なお、2017年2月26日から3月2日まで、米国カリフォルニア州サンノゼで開催される半導体リソグラフィ国際会議(SPIE Advanced Lithography 2017)において、キヤノンはナノインプリント技術ならびにナノインプリント装置の開発進捗について講演を行う予定です。
ナノインプリント技術を用いた半導体製造装置は、マスクをウエハーのレジスト(樹脂)に直接押しつけることで、マスクに彫り込まれた回路パターンを忠実に転写できるため、光露光装置に比べ、高解像度で均一性のある回路パターンが描けます。また、光露光装置に使用されている光源や大口径レンズ群が不要であるため、装置自体をシンプルな構造かつコンパクトにすることができ、複数台の装置をクラスター化して設置することにより、生産性を高めることが可能です。