インタビュー - Interviews -

ケビン・レイノルズ選手
インタビュー

文・野口美恵(スポーツライター)

大阪で開催された四大陸選手権では、フリーで4回転ジャンプ3本を成功させ大逆転の優勝を飾ったケビン・レイノルズ(カナダ)。22歳で開花した天才ジャンパーは、自国開催の世界選手権に向けて意欲を燃やしている。

カナダ国内選手権では4回転5本成功
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四大陸選手権のフリーは素晴らしい演技でした。4回転3本を成功させての逆転優勝の気持ちは?

信じられない結果です。ショートが6位で、頑張ればメダルに手が届くかなと思った程度だったので、ノーミスだとしてもまさか優勝とは思いませんでした。ショートでは4回転ジャンプが2本とも回転不足に判定されていたので、朝の練習で徹底的に4回転を修正したのが良かったです。元々は、髙橋大輔選手、羽生結弦選手が優勝争いで、僕は銅メダル争いをする気持ちの大会だったので、本当に驚きの結果です。

カナダの国内選手権では、ショート、フリーで合計5本の4回転を成功させましたね。

そうなんです。あの日は本当に幸せでした。カナダ選手権からずっと調子を維持していたので、四大陸選手権も4回転を5本とも成功させる自信はあったんですが、結果的には3本成功。でも十分な内容です。

日本での試合はもう4度目でしたね?日本好きだと伺ってますが。

そうです。2008年のNHK杯で1回来て、今シーズンは2度も日本に来ることができました。日本人は本当に心から選手を歓迎して拍手してくれるので、素晴らしい国ですよ。日本語のレッスンも取っていて、まだエントリーレベルですが簡単な会話も出来るので、日本に来るのは毎回楽しみです。日本語の発音の雰囲気がすごく好きなんです。日本食も好きですよ。テリヤキ、スキヤキ、タコヤキが好きです。

4回転はタイミング、スタミナも十分
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遅咲きと言われる事もあると思います。4回転の初成功は何歳でしょう?

9歳のときに3回転サルコウを初めて降りて、4回転サルコウは15歳の時です。トウループよりサルコウが先でした。それから8年間、4回転を跳び続けています。

9歳で3回転というのもすごいですね。スケートは何歳で始めましたか?

最初は4歳でアイスホッケーを始めました。カナダでは男の子はみんなホッケー選手に憧れるんです。でも6歳の時にキャンスケート(趣味のコース)でフィギュアスケートを習って、ジャンプにハマったんです。ホッケーはシュートは楽しいけど、コンタクト(体当たり)が苦手でしたね・・・。まぁ昔から細かったし。それで10歳の時に完全にフィギュアスケートに転向しました。

初めて4回転を跳んだときはどんな感じでしたか?

4回転を練習したのは、トリプルアクセルがなかなか跳べなくて無理に練習していた頃に、左脚をケガしたことがきっかけでした。アクセルは前向きにグッと踏み込むのですが、痛くて体重をかけられず、3カ月のドクターストップでした。それなら痛くないジャンプを練習しようと考えて4回転サルコウを練習したんです。サルコウは助走の回転の勢いを使って跳び上がるので痛くなかったので。そしたら跳べてしまった!という感じでした。

それはすごいです。4回転の一番の秘訣は?

やっぱりタイミングですね。僕のコーチが、ジャンプ技術の基礎の部分をしっかり叩き込んでくれたからです。彼女は「ジャンプはタイミングが命」と言います。いかにタイミングよく空中で軸に入るか。そのコツを教わったので、3回転も4回転も同じように素早く軸に入る、というだけで跳べるんです。

4回転を3本も入れるにはスタミナが必要だと思いますが、どんなトレーニングをしていますか?

確かにスタミナが必要ですが、毎日、曲をかけて通す練習をしているうちにジャンプ全てを入れてもだんだん滑り切れるようになってきました。

そんなに細い身体のどこにパワーがあるのでしょう?

スタミナは、筋力とはまた別のものだと思うんです。身体が細くて筋力は少なくても、スタミナは付けられます。例えば疲れてきた時にどうやって筋肉に酸素を取り込むのか、それを意識した呼吸法が大事だと思います。大きなパワーを使う前後、それぞれの最適な呼吸というのがあって、それを意識することです。

よく研究しているのですね。では4回転の種類を増やすことに関心はありますか?

練習では4回転ループをやっています。でもまだまだ難しいですね。夏のカナダの地方大会で挑戦した時は片脚で降りましたが、回転不足と判定されました。でもフリップやルッツに比べるとループが一番手ごたえがあります。

4回転のループとフリップは、成功したら世界初ですね。

そうですね。アメリカのブランドン・ムロズ選手が昨シーズンに4回転ルッツを成功したので、残るはループかフリップ。たぶん髙橋大輔選手が4回転フリップを世界初で成功させると思うので、僕は狙うとしたら4回転ループの世界初です。

来季は挑戦しますか?

五輪で挑戦するのは危険すぎるので、やるなら国内での夏の地方大会です!

「4回転だけの選手になりたくない」
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ジャンプは得意だと思いますが、ここ数年で演技力も磨かれましたね。

ジャンプ以外の重要性に気づいたのは2008年でした。4回転を2種類降りて自分として最高の内容なのに、演技構成点が伸びなくて、どうしてなんだろうと。観客の反応も、せっかく4回転を降りたのにあまり盛り上がらなくて、何かが違うんだなと。これじゃ4回転が跳べるだけの選手になっちゃう、と急に危機感を覚えました。それまではジャンプにしか興味がなかったのですが、演技力も磨こうと心に決めたんです。

表現力を磨くためにどんな練習を?

非常にオーソドックスなものです。バレエもダンスも、フロアでの踊りを色々と習っています。ショートがスイングなので、ジャズダンスやモダンバレエのレッスンが役立ってます。自分としてはモダンバレエが一番好きなんですが、フィギュアスケートではクラシック曲を使うことも多いので、挑戦だと思ってクラシックバレエも習っています。

フリーの振付は宮本賢二さんに依頼されましたね!

宮本さんがバンクーバーに来てくれました。曲は、僕とコーチで考えて決めていたものを渡したのですが、素晴らしいプログラムになったと思います。アンドレ・マテューという遅咲きのピアニストの曲で、自分の個性を持って頑張っていれば最後には認められる、というイメージを重ねようと思って選んだんです。気持ちを乗せて踊りやすいプログラムです。

以前よりも踊りに柔らかさが出てきたと思います。

今は柔軟性を高めるためのレッスンを受けているんです。イナバウアーも以前は難しかったのが、股関節の可動域が広がってやりやすくなりました。

スピンも回転が速いですね。

スピンは、スピン専門のコーチに習っています。その先生が、男子のレイバックポジションがトレードマークの方なので、それを見ながら練習して、今では僕も上を向いて回るスピンが得意になりました。

ツイズルも上を向いて回るポジションが得意ですよね。

シェイ=リーン・ボーンさんに振付けをお願いした時に彼女が教えてくれたんです。難しいけれど出来るようになれば将来的に幅が広がるって言われて、練習して出来るようになりました。

家族にスケーターは?家族の方もスタイル抜群なんでしょうか?

父はアイスホッケーをやっていた事があるけれど、フィギュアスケーターはうちの家族では初です。僕が家族で一番細いかな。僕は身体が細いから背が高く見えるけど本当はそんなに高くないので、もっと背が高い男性になりたいなと思ってます。

バンクーバー五輪を逃した悔しさが原動力

今年の目標は?

まず3月の世界選手権でパーソナルベストを出して、トップ6に入ることです。大きなミスなく練習どおりの演技ができれば達成できるはずです。カナダで行われる世界選手権なのでとても楽しみです。今年は、「自分はトップスケーターになれる」という自信を得たことが大きな経験です。来季に向けてのモチベーションになります。

来年の五輪出場も現実的になってきましたね。

来年の五輪は絶対に出たいです。バンクーバー五輪は、せっかくの自国開催だったのに次点で出ることが出来ず、本当に辛い思いをしました。トップスケーターにはなれないのかも、という不安と戦いながら、やっと今の立場まで来れた原動力は、カナダの五輪に出られなかった悔しさです。だから今度のソチ五輪は、自分が何をすべきか、どんな演技ができるか想像しながら、楽しみに準備していきたいです。

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