1992優秀賞
ARTIST STATEMENT
君が走っているのだ。僕はダンボの耳で待つ
「大きなテーブルの上にたくさんの食べ物が載っている。置き方や食べ方でおいしさが変わってくるかもしれない。あまりにもたくさんの種類があって全部は食べきれない。しかも部屋は暖か過ぎる。さて、どうすべきか。私はといえば訳がわからぬままに分けたり飾ったりしている。どうやら私は食事をしようとしているのではなく、ちぐはぐなパズルをしているらしいのだ。」このようなまったく手に負えない様子が私にはとっても写真的に思え、そして今かなり興味ある事柄といえます。
「写真新世紀」は発表の場=メディアをまだ持つことの出来ない作家たちにそれを提供できる企画であってほしい。今後とも作家たちにその機会を与え続けることを期待し、今回はまた第一回の受賞ということに大きな喜びを感じております。
審査評 選:南條 史生
それぞれ違うイメージを撮っていながら、一貫した空気と、ある内的世界の存在を感じさせる。熱過ぎず、冷た過ぎず、対象との距離が明確につかめている。技術的にも十分に高い。それぞれの写真とのつながりが感覚的には感じられるが、そのストーリーは曖昧で謎めいた部分もはらんでいる。謎めいているということは貴重である。
PROFILE
オノデラユキYuki Onodera
1992年 写真新世紀[第1回公募]優秀賞(南條 史生 選)
東京生まれ。1993年よりパリにアトリエを構え世界各地で活動を続ける。
カメラの中にビー玉を入れて写真を撮影したり、事件や伝説からストーリーを組上げ、それに従って地球の裏側にまで撮影に行ったり、あらゆる手法で「写真とは何か」「写真で何ができるのか」という実験的な作品を数多く制作し、写真という枠組みに収まらないユニークなシリーズを発表。さらに自分自身で2m大の銀塩写真をプリントし、油絵の具を使ってモノクロ写真に着彩するなど、数々の独特な手仕事の技法でも知られる。
その作品はポンピドゥ・センターを始め、サンフランシスコ近代美術館、ポール・ゲッティ美術館、上海美術館、東京都写真美術館など世界各地の美術館にコレクションされている。
主な個展に国立国際美術館(2005)、国立上海美術館(2006)、東京都写真美術館(2010)、ソウル写真美術館(2010)、フランス国立ニエプス美術館(2011)、ヨーロッパ写真美術館、パリ(2015)などがある。