1992優秀賞
ARTIST STATEMENT
命
「批判する側より、批判される側の方がおもろいんやで」と父がボソッと語ったことがあります。スポーツは観客でいるより、プレイヤーであることの方が断然面白いのと同じで、どの世界にも当てはまる言葉です。紛争地域でシャッターを切る道は後者に属します。金ない、技術ない、実績ない若者にとって世間の風あたりはやさしいものではありません。しかし、何も無い所から自分のあらんかぎりの力を出し、形を創りあげていく快感を覚えたものには、周りからの批判は行く手をはばむ力にはなりえません。
審査評 選:荒木 経惟
今回の中で、一番写真を撮っている人。写真をやってるヤツは、こもって、ごちゃごちゃやってるオタッキーが多い。現場に行って撮るっていうところの勢いがいい。自分が感じるもの、悲しいもの、心に響いたもの、それをポンポンって、提出していて、見る人の解釈が入る余地がある。もっとうまくなっちゃうと、セバスチャン・サルガドみたいに、撮る方の思想とか文法で読ませるようになる。そういうのを作家って言うんだけど、これは、ただ撮ってるだけって感じで、作家になっていないところがいいと思うよ。カラーがいい。モノクロだと、時間が経過したような、考えが入ったような感じになっちゃうんだよ。ルポルタージュをカラーでやると、即って感じで、現場の実況中継みたいだろ。でも、この写真は原色が一杯あるから、悲壮感が出ないね。写真は嘘つきですね。
PROFILE