1992優秀賞
ARTIST STATEMENT
産み捨てられし者へ
今、私にとって、写真とは、自分自身であり、決して嘘をつけない物、忘れてはならない物や伝えていくべき大切なことを表現する鏡となりました。
失った物や傷つけた人達への責任の為にも諦めず、自分らしく生きることが大切だと感じています。
いつも言いたいこと、やりたいこと、知りたいことが多すぎて、その半分もできずにいます。撮りたいテーマも次々と溢れ出しています。感じる心がある限り、写真を通じて、真実を探しつづけていきます。
私の生き様を見続けていてくれている友人と、次の世代を作り出そうとする同志達へ“頑張ろうぜ”の一言を送り締め括ります。
審査評 選:南條 史生
自分の私的生活の中に題材を求めている応募作品は多いが、この作者は中絶という重く、切実なテーマに絞り込んでいる。そのテーマの深刻さが、単なるスナップによる記録でなく、極めて美的な表現に結晶している。一点一点の作品の色調、テクスチュアー、表現が一貫していて、全体として統一された質の高さを感じさせる。ある距離を作者から保ち、正確なコントロールのもとで、個人的な苦悩や感情が明確に表現されているところが良い。なお、最初の抽象的なイメージは、イヴ・クラインの人体測定を思い出させる。人間の個人的な体験が普遍的な心理として伝わってくる時、それがアートになると思う。
PROFILE