1993優秀賞
ARTIST STATEMENT
記憶の絵
写真というものは、そこに写っているものや写っていないものをも含めて、撮った人間の感性がもろにバレてしまうという、なかなかこわいシロモノであると思っています。
今回出品したものは、普段から撮りためておいたスナップ写真からセレクトしたものですが、スナップ写真というものは、何か物事に出会った時の自分の反応が写し出されていて、改めて自分自身を見つめ直すきっかけを与えてくれます。突然、目の前に現れたものに対峙して、私はどのような感情を抱いてシャッターを切るのか、あるいは切れなかったのかをプリントを焼きながら追体験していくのです。そうしているうちに、自分の物の見方が分かってくるような気がします。それが見る人にどのように伝わるかという評価が今回このような形で賞を受けるようになったという事は、私自身の大きな喜びと共に、これからの励みになります。
審査評 選:飯沢 耕太郎
二冊組のぶ厚いアルバムにぎっしりと「記憶」が詰まっている。まさに、断片の集積としか言いようのない構成で、見るものがあらかじめ予想している物語を裏切っていく面白さがある。しかもその「記憶」は完全なものではなく、ぽろぽろと崩れ落ちていくような痛みを伴っている。一部、森山大道の写真を思わせるようなイメージも含まれているが、自分の世界を作り上げようとしている手応えを感じさせる力作である。断片が形をとっていく過程をもっと長く見届けてみたい。
PROFILE