1996優秀賞
ARTIST STATEMENT
渡りきれない橋
東京という巨大な街に抵抗したかったのです。大切な物を失っているのではないか?と。自然のざわめき、土、真っ白な笑顔、夕日、心休まる風景、そこにある物は全てが懐かしく感じられた。この写真は、ぼくの日々の暮らしと、小さな農村で暮らしている人々との間に掛る橋の上から見た風景です。けっして向う側に渡りきることのできなかった自分の姿と、そこから見た心のすきまを埋めてくれるような風景です。これからもカメラを持って旅をしたいと思っています。そして心の中の旅を。
審査評 選:南條 史生
暗く、渋く抑えたアジアというのは前例がないわけではないが、正面から、かなりの量を、同じ視線で撮り積ねている。その総体が、大作という印象を与えている。作品の中に見られる同じトーン、同じ方法、同じ表現、同じ場所、同じ人々の持つ感性が、大きな意味を持ってくる。またプレゼンテーションもあっさりとして作品と矛盾する部分がない。結局のところ、主題は被写体となった人や物や景色でなく、彼が独自に作り上げた光と陰なのだ。それが写真を作品へと押し進める。
PROFILE