1997特別賞
ARTIST STATEMENT
愛の部屋~第2章
解放された密室での、一つの行為をめぐる物語。ここを舞台に、訪れた者達が物語を演じていく。一組の演技が密やかに始まり、やがて終われば、また次のカップルが訪れては繰り返していく。舞台の中心にあるのは、物語であって、演じる者ではない。ここに観客はいない。ワタシは物語を再演する。私は、観客席でそれを見つめる。一人芝居に始まりと終わりはない。それでも物語の向かうところ、愛という不可思議なものを探ることと、自分自身がそれに向かい合うことはできると思う。
審査評 選:飯沢 耕太郎
山本香さんの「愛の部屋」のシリーズは、前回に続いて2度目の応募。今回は部屋の外にモデルが出て行ったり、映画を思わせる時間的経過を加えた工夫が見られる。同じ場所で撮影された写真が何枚も繰り返し出てきて、視覚的なリズム感を生み出しているのもおもしろい。ただ、部屋のインテリアとコスチューム・プレイにこだわった前回のシリーズと比較すると、作品全体の密度(完成度)は、やや落ちている。「愛の部屋」というシリーズ自体がまだ発展途上であり、さらに撮りつづけて、もう一回りスケールの大きな形で再構成していって欲しい。とにかく一つのテーマを粘り強く追いかけていく彼女の姿勢は貴重なものだし、生と性に関わる根源的な要素が作品の中により強く打ち出されてくるようになれば、ユニークな作風の女性写真家が誕生するのではないか。
PROFILE