1998優秀賞
ARTIST STATEMENT
私は眠る
「眠いから眠る」ただ、それだけなんです。難しい理由なんて何もありません。いつでも、どこでも、どんな時でも、眠たくて、眠たくてしかたがないんです。ついウトウトしてしまいます。寝ている時が一番幸せなんです。私は、自分の「眠り」を撮り続けてきました。眠っている時は悩まなくてもいいし、焦らされることもないし、余計なことを考えなくていい、とても心地良い一時です。世の中は、めまぐるしく動いています。街ゆく人たちも立ち止まることもせず、疲労を溜めながら、ストレスを感じながら、急ぎ足で通り過ぎてゆきます。そして、そのうち、自分自身を見失ってしまいそうにもなるのです。でも、私は私自身でありたい。私のペースで進みたい。周囲の流れに流されることなく、のんびりと好きな時間を過ごしたい。「眠いから眠る」—世の中がどんなに忙しくても、私はゆっくり行きたいから、それでいいんです。だから、私は眠り続けます。
写真を撮る時には、いつも「私らしさ」ということを考えて撮影しています。今回の作品では、絵柄、構図をとくに考えました。いかに「私らしく」表現するかが重要でした。「眠る」という行為をわかりやすく表現するには、どうしたらいいのか。ただ、パジャマに枕だけではつまらないし、ワンパターンになってしまうので、服を変え、背景を変え、人物設定を考え、見てくれる人が、もっと楽しめるためにはどうしたらいいか試行錯誤する。一目見た時に、その作者の考えや作品の意図などをさぐる必要なんてないと思う。それは興味を持ってからの第2段階のことでいいのです。私の作品の第1段階は、ただ見るということ。そして、そこで「私らしさ」というのが少しでも伝わって、感じてもらえればいいと思います。
審査評 選:飯沢 耕太郎
前回の佳作作品がもうひとつレベルアップして、見事に優秀賞に届いた。この種の作品はどこで、どんなふうに撮影するかというコンセプトが決め手になるのだが、そのあたりが前回より徹底して、楽しめるものになっている。地元の大阪だけではなく、東京まで出張撮影した努力が実ったということだろう。だが、なんといっても、佐藤さんのキャラクターの良さが、写真に勢いを与えている。思わず笑ってしまうような表情とポーズは天性のもので、このキャラクターを生かして、もっといろいろなシチュエーションに挑戦してほしい。全体にユーモアのある作品が少ない中で、異色の面白さだった。
PROFILE