1999優秀賞
ARTIST STATEMENT
LOVE SERENADE
私は、写真も表現の一部なのですが、主にふだん立体やインスタレーションやビデオ作品やパフォーマンスというように、あらゆるジャンルでものづくりをします。ほとんどジャンルにはこだわりませんが、そのジャンルのもつ特異性を利用することで思想に膨らみをもたせることができると思います。そしてそれを実践していくことでどんな事柄も変え得ること、それは、思想へと続くエクリチュールのように思います。今回の作品は、それがうまくいったように思います。
審査評 選:飯沢 耕太郎
木箱の中におさめられたイメージの流れが快い。ガラス越しに見る写真の雰囲気が、作者と世界との間にある薄膜のようなものの存在を暗示しているようだ。木箱の中には複数の写真が入っていて、蓋を開けて入れ替えることも可能である。固定されたイメージではなく、流動的に変化していくイメージによって、少しずつ世界が構造づけられていくということなのだろう。このようなインスタレーション的な作品の場合、当然ながら設置する場所や周囲の状況が問題になってくる。雑然とした審査会場ではかなり不利だったはずだが、それでもちゃんとした会場で見てみたいと思わせる力がある。長尾さんには、まだいろいろな潜在的な可能性がありそうなので、写真という表現手段にこだわりつづけていってほしい。
PROFILE