1999特別賞
ARTIST STATEMENT
生きてるように
「撮りたい」という思いばかりが先走って体が追いついていけない。あまりに夢中になっていてシャッターを押す1000分の1秒ももどかしい。それは、“今”という限定した時間があっという間に消滅してしまうのを知っているから、私は、自分がその“今”を生きている事を証明し記憶していくつもりで写真を撮っているのだろう。私は上手な写真なんてどうでもいいので、その時の匂いや時間や温かさや優しさと悲しみが現れていれば満足する。そして表現方法としてたまたま写真を選んだ。写真が一番、現実を写す可能性を秘めている機械であり芸術だからだ。生きているのが少し面倒臭かったり、不安だったり、幸せだったり、そういう私の人生を写真にしていきたい。生きているという事は、リアルだから、そのリアルさこそおもしろいから。
審査評 選:荒木 経惟
そんなに強いメッセージじゃないけれども、明るい未来がある。生きるということは、優しさだってちゃんと言ってますよ。生きるという事は、静かな事、静かに生きていくという事がでているね。また、死ぬときも静かに死んでいくというのが出ていて素晴らしい。生きてるように死んでいる。窓からの眺めがたまらなくいいんだよなぁ。なぜか、お父さんのシルエットがいいんだよな、これは。
PROFILE