2000優秀賞
ARTIST STATEMENT
インド畸譚
インドへの旅は、本当はマレーシアのサラワクに住んでいる僕の愛するチンルイに会いにいくための口実でした。彼女に会うのはこれで4回目。潮州の血筋のお父さんと客家のお母さんをもつ彼女は、以前はスチュワーデスでした。インドに乗り込む前に、マレーシアで彼女と街を散策したり、熱帯林の中の川で泳いだり、ビーチリゾートでくつろいだりして、それはそれは楽しい時を過ごして鋭気を養い、インドでは3ヶ月の滞在もずーっとテンションを保って、とっても充実した旅でした。
今後は、まず、またどこか旅に出たいと思っています。僕はなんだか厭世的なところがあるようで、対人恐怖で、鬱のひどいときもあります。かといって、人恋しい寂しがり屋なんです。そういう部分が旅先でどこか人をひきつけて、面白い経験ができたり、面白い写真が撮れたりするのかなあ、と思っています。でも、そういう僕は、なにも特別な人間じゃありません。どこにでもいる普通の兄ちゃんです。あなたも旅に出て、街に出て、写真やりませんか。おもしろいですよ。
審査評 選:荒木 経惟
これは、単なるドキュメンタリーではない。強制しているわけではないのに気を許して被写体も勝負している。相当愛されてるよなぁこいつ。信用がないと撮れない写真です。人間を撮ったらポートレートにならなくちゃいけない。相手の存在感がちゃんと写ったときには、ドキュメンタリーじゃなくなる。撮っている視点が非常に好意的というか肯定しているんですよ。否定でなく批評もなく味方なんですよ。だから入り込んだところを撮っても、「こんなところを撮って」というように否定させない、思わせないところが逞しいですね。これは、本当に渾身の作品です。体張って中に入っていく感じ。だからいいんだよ。他の奴にはない気持ちの立体感みたいなものがあるだろう。う~ん、うまいぜ。
PROFILE