2001優秀賞
ARTIST STATEMENT
on the earth
キリストの姿が浮かび出たといわれているトリノの聖骸布はやはり写真なのかもしれない。聖骸布は白い布で白黒反転した人の全身像が写っている。モノクロのネガフィルムの像とそっくりだ。ひょっとしたらニエプスやタゲール以前にも写真術は一種の魔法として秘かに存在していたのかもしれない。写真術の発明(公開)を境に少しずつこの魔法は解体され?安く大量に世界中に拡散していった。この拡散する写真の歴史の中で、サービスプリントは一つの頂点だった。拡散する力は写真を更に解体して、デジタルの世界に移った。写真はついに拡散する力から解放された。サービスプリントもかつて写真が持っていた魔法っぽさや、いかがわしさを取り戻していくだろう。サービスプリントを何百枚も使ったコラージュを作りながら僕は不意に身体の芯からわくわくしてくる時がある。
審査評 選:都築 響一
写真を絵具代わりに使う。やり方としては、別に新しいとは思わないんだけれど、作りたいという情熱が素直な形で発展している。手間やいろんなことを考えればコンピュータやフォトショップなどでやってしまった方がいいかもしれない。しかし小細工しないでプリントを貼っていく、写真を徹底的に使うことを突き詰めてこだわっていく、そこがすごくいいですね。サイズが広がっていくところ、出来上がるテカテカの質感。光ってよく見えない、扱いにくい感じ。そういうところがおもしろい。僕の彼女がかわいいから撮ってみましたというような恣意的な作品が多い中、写真のプリントを絵筆代わり、むしろ山下清における色紙のように用いる。どうやっておもしろく興味深くみせられるかというのは、一つは技術であったり、企画・コンセプトだと思うのですが、そういう意味でこの人はこれ以上ないというくらい意図が明確ですね。
PROFILE