2001優秀賞
ARTIST STATEMENT
恐るべき熟女パワー
急に騒がしくなってきた。そこにはオークションらしきものが始まって、人々が揉み合っていた。初めてこのような場面に遭遇し、気付いた時は私もこの中に紛れ込んでいた。凄まじいシーンが眼に飛び込んできて、思わずシャッターを押していた。
おしくらまんじゅう状態で、とても危険でした。その中で、熟女達から男性が押し退けられ、弾き出され、しっぽを巻いて離れていく様が今でも鮮明に脳裏に焼きついています。恐ろしささえ感じつつ、「現代の世相を反映している状況」をここに見ているようでした。この後どしゃぶりの中、夜の街へと繰り出した人達もいて。もう脱帽!
いつも気まぐれで、好きな時に好きな物を撮っていますが、最近「カメラマンはちょっと惜しい(損)」ってつくづく思います。なぜなら一番最高の時にシャッターを押す、その時はカメラのミラーが上がっているため、カメラマンは生のその瞬間が見れないって事でしょ!?だから時々写真を撮るのをやめて、最高の瞬間にくぎづけになっている時があります。でも私が写真を撮ることを続けているのは、その瞬間を伝えたい人がいる事や「こんなに素晴らしい瞬間もあるんだよっ!!」って世界中の人に私の写真を通じて伝えたいと思っているからだと思います。
審査評 選:都築 響一
ドキュメンタリーの一瞬にかけるということが写真本来の姿だと思うのですが、この作品がそうですね。一点というのが潔いし、大変素晴らしい。とにかく「撮る」という姿勢で集中する中谷さん、写真をアートの素材として用いた今井さん、この両極端みたいなものがこれらの写真にはあるといえるので、この二人を優秀賞に選びました。写真新世紀に応募してくる人のほとんどが自分の世界観を表現するのに写真を使う人ばかりですが、やっぱり本質はドキュメンタリーなわけですよ。どんなかっこいいものを作ってもたとえば貿易センタービルに、ジェット機がつっこむ写真のリアリティにはかなわない。そういう意味でこじゃれた表現方式というのを一切関係なく、どう撮るかではなく何を撮るかというものだけにずっとこだわっていくことも必要だと思います。
PROFILE