2002特別賞
ARTIST STATEMENT
ひさしぶりに恋をした
私は歌い手さんがラブソングを作るように、彼のためにラブブックを作った。でも、作った事は彼に言わないでいた。賞を頂いて13日後、久しぶりに彼から電話がかかってきた。
用件は、私にとってはとてもくだらなく理解しがたいものだった。だから私も彼にとって理解しがたい返答をたくさんした。「口ごたえしないで俺の言うとおりにしてればいいんだよ。こんなにしゃべるお前は、はじめてだ。」と彼は言った。私は「はじめて」という言葉が大スキだ。そして、彼からたくさんの「はじめて」を貰った事を思い出した。彼の用件を聞いているのが苦痛になったので、私は「まったく別の話しをしてもいいですか?」と<ひさしぶりに恋をした>について話した。「あなたのために作った作品が賞をとって、、、。だからってわけじゃないけど、みてほしい。」と言うと「みない。」と言われた。チョット前の私ならショックで大変な事になっていただろう。なぜなら私の中心が彼だったからだ。でも今は「あっそう。ならいいや」という感じだった。彼の「みない。」という答えは悲しくなかったけれど「悲しくない」自分が淋しかった。そして苦くて楽しい記憶が思い出となった。
審査評 選:荒木 経惟
恋する乙女のその笑顔に負けました。すばらしく愛くるしくて。
他の作品は何故だか鬱な状態や深刻な気持ちが多いし、感情を抑えて一つのシーンとして写真を撮っている感じがしますね。それにざわめきがあればいいけれど、ほとんどがないわけです。しかしそんなコトをすっぽかして、ストレートに自分の感情をさらけだしてる写真と文章。とにかくこの笑顔に決まりです。
PROFILE