2002優秀賞
ARTIST STATEMENT
向かうところ
ガンという病に父の姿が弱くなっていく中、母の存在がとても大きく見え始めました。
彼女にはムラがなくて、妻としても、母親としても、常に優しく、力強く、そして何より冷静でした。そんな母を、私は写真に残してゆきたいと思うようになりました。
写真を撮るという作業が、その状況を受け止めるための方法だったのかもしれません。父が亡くなって一年以上が経ちましたが、私達の間に流れているものは何も変わらず、ゆっくりと前へ進んでいるような気がします。
「撮らなきゃいけない」という危機感でいっぱいだったあの頃に比べて、今はとても気持ち良く母の写真を撮り続ける事が出来ています。そして、この先も母の姿を写真に残してゆきたいと強く感じています。
審査評 選:マーク・リブー
病院の一室を通しての静かな時間と撮影者の控えめな意志が最後まで貫かれていて心に強く響いた。特に、一日の終わりを告げるイメージとして線路が登場するあたりは感動的だ。何よりも、決して映像としては現れなかった父親の“生きたい”という願望が彼女の眼差しで撮られているところが素晴らしいと思う。
PROFILE