2002優秀賞
ARTIST STATEMENT
SP
僕のスタジオは今住んでいる京都、仕事場のある大阪、そしてその近隣の街々、そのものです。そこに定期的に通い、僕が感じたことや、出会ったもので何かできないかという思いで撮り始めました。カメラはデジタルカメラを使っています。従来のフィルムカメラと違って、すぐに画像が見られるし、一枚あたりの気楽さみたいなものに最初は惹かれました。実際、使ってみると、フィルムカメラに匹敵する画質も充分にあるし、設定によっては、ある種独特な、“デジタル”らしい画像もでてきて、これはおもしろい、と思いました。おもしろければそれは正解、なのです。初めの頃は、どう風景と向かい合えば良いのか、自分の写真とは何か、という具合にいろいろと考えてしまいました。考えて考えて、ついに見つけたのが、「考える前にまずシャッターを押す。撮りたいものを撮る」ということ。今から思えば何のことはない答えなのですが、一筋の光明というか、実に大きな出口が目の前にポッカリと開いたような、そんな気がしたのです。そうして見えてきた風景のパーツ・断片は、何の意味も持たないかもしれませんが、僕の心の振幅をゆさぶるにはとても刺激的なものなのです。それらは、そのときに撮りたい、おもしろい、と感じた、気持ちの結果なのだと思います。そして、さらにグッとくる風景を探して、どんどんとスタジオを拡張してみようと思っています。もっと撮って撮って撮りまくりたいと思います。それがどのような結果となるのか?むむ、とても楽しみになってきました。
審査評 選:森山 大道
なんか、うすっぺらなオープン・セットを見ている感じがしていいですね。グラフィカルな世界と虚構の世界の中間にあり、文字なんかもビジュアライズされていて虚構と現実の境目をほとんどなくしている。こうしたイメージは言葉では安易に言えるけど実際に作るというのはそう簡単なことではない。鍛治谷さんはそれを簡単にやってのけている。つまりチープでポップでどうしようもないペラペラなものの中からカラー写真の魅力や時代の色を見つけだして、そこにこの人の体質が入っているような気がします。好きな作品です。
PROFILE